無名世界観におけるシオネアラダ神話のデータ(ネタバ レ注意)







テ ンダイスブログ 春の嵐の中のゴロネコ藩国−深夜−
 http://blog.tendice.jp/200702/article_28.html

 むかし、ひとはあわれなただのねこといぬでした。
 かみがみのひかりにあてられ、ものがもててしゃべれるようになっても、むげんのちからもえいえんのいのちもなく、
 くうきがなければうちゅうをたびすることも、たくさんのせかいをわたることもできませんでした。

 ひとはしらのかみさまがひとをあわれみました。
 それはかまどのめがみさまでした。

 かまどのめがみさまは、ちにおりてひとにまじわると、ひとつのわざをおしえました。
 それをちえ、セマ・オーマの技といいます。

 全ての絶技体系の中で絶技を使わぬ唯一つのオーマは、唯一の力をひとに与えると姿を消し、
 そうしてひとは、今もいきています。

 ひとがうけついだそのちえは、そのむかしのやさしさです。
 もしもちえをつかうのならば、そのことをわすれてはいけません。

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●リターントゥガンパレード 第5話
 父の横顔は、自分の知らない人のようであった。お話に出てくる伝説や神話の一つのように見える。
 そう、 夜の闇を言葉で照らす術を人類に教えた伝説の巨人だ。
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/05-2.htm

●2007年10月19日 テンダイスブログ 広島迷宮事件について星見司処からの 説明
 Q17:セマ・オーマが人に知恵を与えたという伝承があったと思いますが、これは セマ・オーマが創生機械を動かしたことがあるということですか?
 A17:セマは機械好きだからね

 http://blog.tendice.jp/200710/article_12.html

●2011年5月23日 NWCログ 芝村さんの発言より
 芝村 > まあ。黄色は人間には人気あるな。 父祖プロメテウスは黄色なりだ。 (5/23-21:53:34)
 http://cwtg.jp/nwclog/2011/5/23.html


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 ギリシャ神話の話より
(注意:この項目は個人で調べたものであり、何かから直接引用したものではありません。注意)

 昔、ティタン族の
プロメテウスは、聡 明で先を見通すことに優れた神でした。
 ティタン族と
オリンポスとの戦争 で、彼は自分達の敗北を悟ると、オリン ポス側に裏切ってゼウスの信頼を得ます。
 オリンポスに君臨する主神ゼウスは、プロメテウスのことを親友のように気に入ったそうです。

 ティタン戦争後。青銅の時代の人間達は武器を作って激しく争い、地上は荒廃していました。
 ちなみに当時、人間には男しかいなかったとされています。
 ゼウスは荒廃の原因を、神々への敬いが足りていないからと考えて、神々と人間の線引きを明確にしようと考えました。
 この神々と人間の線引きを明確にする仕事に名乗りを上げたのが、
プロメテウスです。

 プロメテウスは一頭の牛を連れてくると、それを2つに切り分け、
 それらを「美味しそうな袋」と「不味そうな袋」に入れて神々と人間のそれぞれに与えることで、神々と人間の線引きをしようとしました。

 そしてプロメテウスは、先にゼウスに、どちらの袋を取るかを選ばせました。
 ゼウスは美味しそうな袋のほうを選びます。しかし実は、それはプロメテウスが仕掛けた罠でした。
 美味しそうな袋には牛の骨しか入っておらず、不味そうな袋には美味しい肉ばかり。人間達は喜びます。

 プロメテウスは、
虎視眈々とオリンポスの神々への復讐を企んでいたのでした。
 これで人間が神々よりも偉い存在になり、復讐が果たされるというわけです。ところがゼウスはこの裏切りを見抜いており、
骨は腐らず永遠なので神々は不死、肉はやがて腐り落ちて消え去るので人間達は不死ではなくなると、勝ち誇ります。

 そうして不老不死の神々よりも劣った、腐っていく肉である人間達を、傲慢な神々は見下しました。
「お前達に文明などいらぬ! 獣のように地べたを這うのがお似合いだ!」と、文明の源である火を奪います。
 人間達の文明は一気に退行して、獣のように生きることになってしまいました。

 この事態に、プロメテウスはオリンポスの神殿に忍び込んで、火を盗み出します。
 そして大ウイキョウの枝に火を隠すと、それを人間達に届けました。プロメテウスは人間達に火を返したのです。
 人間達は、再び火を、すなわち文明を取り戻すことが出来ました。

 そして裏切りが発覚したプロメテウスは、コーカサスの山に鎖で繋がれて、禿鷹に永遠に啄まれるという刑に処されます。
 不死の神であるプロメテウスは死ぬことも出来ず、ずっと苦しみ続けたそうです。
英雄ヘラクレス が 禿鷹を殺すまで……

 プロメテウスによって文明を取り戻した人間達を許すことなく、ゼウスはさらなる災厄を用意します。
 名工ヘパイストスに、泥で女神のように美しい女の体を作らせて。
 美の女神アフロディテに、男を惑わす妖艶な魅力を与えて。
 戦の女神アテネに、機織りの技術を与えて美しく着飾ることを覚えさせて。
 嘘と盗人の神ヘルメスに、嘘と卑怯と不誠実と盗みの心を、生まれつきの性質として植え込まれます。

 ……こうして人間最初の女性である、パンドラが誕生しました。

 ゼウスは、このパンドラの子孫が人間の世界に広まるよう企んでいたと言われています。

 パンドラは、アトラスとプロメテウスの弟である、ティタン族の生き残りであるエピメテウスに贈られました。
 ゼウスからの怪しい贈り物であるパンドラを、愚かなエピメテウスは、その美しさに心奪われて花嫁にします。
 そうしてある日、エピメテウスが兄達から「必ず守るように」と言われていた壺(または箱)のことを聞かされていたのに、
パンドラは好奇心を抑えられず、その壺(箱)を開けてしまい―――


 実はその壺(箱)の中には、ありとあらゆる災厄が入っていたのです。
 病苦、災害、憎悪、猜疑心…
 あり とあらゆる災厄が、人間の世界に広がってしまいました。

 しかし、パンドラが慌てて蓋をしめたことで、最後の災厄だけは閉じこめることは出来ました。
 それは未来を知ってしまうという災厄です。こうして人間達はさまざまな災厄に怯えて生きなければなりましたが、
どんな時でも未来、
すなわち希望が残っているので、苦しい時も諦めず、前へ進んでいけると言われ ています。

 そして時代は進み、やがてパンドラの娘は娘を生み、その娘が娘を生んで、パンドラの子孫は人間の女として、
人間の世界へと広がっていきました。男女の区別が生まれたことで、ゼウスの狙い通り人間達のトラブルは増えました。
 そしてゼウスは、そんな人間達に呆れ果てて、もう人間達は全て滅ぼそうと考えます。

 とはいえゼウスも、人間達が神を敬って真面目に生きるなら、全て殺したくはありません。
 ゼウスはヘルメスを通じて、
とある神々の血を引く夫 婦に対して、箱船を造るよう命令します。
 その夫婦とは、プロメテウスの息子であるデウカリオンと、パンドラの直接の子供であるピュラでした。

 ゼウスの命令を聞いた夫婦が箱船に乗ると、ゼウスは海王ポセイドンに頼んで、地震と大津波で人間達を皆殺しにします。
 夫婦以外の人間達が死んだのを確認したゼウスは、ポセイドンの息子であるトリトンに法螺貝を吹かせました。
 すると、みるみるうちに水は引いていって、箱船はとある山の上に漂着します。

 しかし夫婦は、こんな世界で二人だけで生きていくのは無理だと考えてヘルメスを通してゼウスに訴えてみたところ、
なんと「母親の骨を地上にばらまくがよい」という返事が帰ってきました。そんなの親不孝だと妻ピュラは動揺しましたが、
夫デウカリオンは父プロメテウス譲りの聡明さで、「母とは母なる大地ガイアであり、母の骨とは石である」と見抜きます。

 二人の夫婦は山の斜面を歩きながら、肩越しに
後ろへ次 々と石を投げていくと――
 すると地面に落ちた石達が、なんとたちまち人間の姿に変わっていくではありませんか。
 夫デウカリオンが投げた石は、人間の男に、妻ピュラの投げた石は、人間の女に変わっていったそうです。

 ガイアの母から人間達は、神々を敬い、そして神々もこの人間達を気に入り、人間の女性と交わる男神もいたそうです。
 そうして神から生まれた人間は英雄と呼ばれるような活躍をして、青銅の時代は終わり、英雄の時代が到来します。

 英雄の時代には、英雄ヘラクレスや不死身のアキレウス、オデュッセウスなどの英雄達が生まれましたが………
 やがて増えすぎた人間達の数を減らすために、ゼウスがトロイア戦争という大戦争を仕組み、たくさんの死者が出ます。
 → 参考:トロイア 作者:ホメロス

 さらにトロイア戦争の遠征に参加した艦隊は、その帰路で海王ポセイドンによる暴風や嵐でほとんどの艦隊は沈み、
生き延びたオデュッセウスは故郷に帰るため、長い年月を旅することになります。 → 参考:オデュッセイア 作者:ホメロス

 また、トロイア戦争でトロイア王家の人間は惨殺されましたが、名将のアイネアスだけは生き残りました。
 アイネアスの父は人間ですが、母は美の女神アフロディテという英雄であり、その幸運で王家の中で一人だけ生き延び、
やがてイタリアに渡って、彼の子孫に
ローマ建国神話の双子、ロ ムルスとレムスが誕生します。
 → 参考:アエネーイス 作者:ウェルギリウス





●ゲーム絢爛舞踏祭 恵の台詞より 身の上話を尋ねる

 昔の話というよりは、
 昔の歌、ですけれど。
 ………。

 その輝きは豪華絢爛。
 災厄を喰う災厄の天敵、
 未来永劫を絶望と戦う一筋の光。

 その戦いは絢爛舞踏。
 時間を照らすほのかな温もり。
 胸を張れという小さなささやき。

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 …探すもの、生まれるもの、
 まだ見ぬ故郷、小さな鼓動 草の音
 かまどの光 丘の風。

 それは遠い日のほのかな憧れ。
 行く末 未来を思うとき
 人は輝きを思い出し 歌を歌う。

 風の妖精我が心の闇を照らせ
 風よきけ 長い長い刻を経て
 女と風が再び揃うこの時を。

 それは絶望の中で輝く一筋の光輝。
 暗黒に抗う(文中ではあがらうとなってました)小さな砦。
 引き継いだのは人間族。

 もっとも弱い光の種族。

 小さな砦を心に隠し一人の人の子、
 子をなした。子は子をなし
 子の子は子をなし久遠を待った。

 今、一人の女の裔として、
 地上に満ちる光を束ね、
 我は魔術を使役する。

 魔術の名は希望。

 …ほら、目を開ければあなたがいます。
 元気を出してください。


●式神の城3 ミュ ンヒハウゼン&未来(風歌の抜粋)

女、一人の女がいた。
砂埃のする町で。
一日中泣いても意味は無い。
だから私は悪魔の手を取り、世界を救う事にした。
すべての神々相手取り、私の思う美しい、世界を争奪してやるわ。

しびれるような赤いカー。
朝日さす汚いこの街で、ながめるだけはもう終わり。
観るのを止めてプレイヤー、一寸先は暗い闇、明日はいいかもしれないわ。

女、一人の女がいた。
涙の味のする山で。
一日中泣いても意味は無い。
だから私は悪魔の手を取り、男を殺す事にした。
すべての正義を相手取り、私の思う美しい、男を争奪してやるわ。
純粋な愛は横取りと強奪。
相手が誰でも恋すれば、自然とそうなるしかないわ。

うなぎ昇りの血のたぎり。
朝日さす汚いこの街で、ながめるだけはもう終わり。
観るのを止めて地獄に落ちる。
一寸先は暗い闇、癖になるかもしれないわ。

素敵なスリルを追い求め、スリルの中で踊る夜。朝を夢見て歌う夜。
あなたの夢を抱きしめて、世界を争奪してやるわ。

素敵なスリルを追い求め、スリルとともに眠る夜。
ラストギャンブルはあなたの夢を抱きしめて、死んだら地獄で待ってるわ。

一日中泣くよりも、反逆者として戦うの。

ララララ ララララ ララララ ララララ。
私は幸せ。 見なさい夜明けが綺麗だわ。
私を讃えるかのように。

風見るにつけすべてを思い出す。
太古の鼓動。 草の音。
兵馬のいななき。 槍の煌き。

昔、光を取り戻すため、寄り集まりし軍勢があった。
人は輝きを思い出し、歌を歌う。

それは遠い日のほのかな思い出。
行く末、未来を思う時、人は輝きを思い出し、歌を歌う。

風を見よ。
長い長い刻(とき)を経て、再び揃うこの時を。

それは絶望の中で瞬く一筋の光。
暗黒にあらがう小さな砦。
引き継いだのは、人間族。
最も弱い、光の種族。

一人の女、子をなした。
子は子をなし、子の子は子をなし、十万の時を待った。

一人の女の裔として、地上に満ちる光を束ね、我は魔術を使役する。
魔術の名は、希望。
また来たぞ、ほの暗いものよ。

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●式神の城3 ミュンヒハ ウゼン&零香

零香:風歌ってなに?
ミュンヒハウゼン:・・・古い思い出でございますよ。
 人が魔術を使うのは、牙も毛皮も翼もない為だという、そういう話でございます。
 アルガナの女神は、何も持たぬ最弱の種族ゆえに人に魔術を与えたとされております。

零香:えー? でもレイカちゃん、確かに頭悪いし寿命もそんなに長くないけど、何も持って無いわけじゃないよ。 ・・・ご飯は毎日美味しいし。
ミュンヒハウゼン:それが魔術でございますよ。別に寿命が短く頭が悪く、良く風邪を引き、人から馬鹿にされてもそれは不幸せではない。
ミュンヒハウゼン:不幸せ が不幸せではない不思議。不思議こそが魔術でございます。
零香:で、未来の私が風歌を教われって言うんだけどぉ、ミュンちゃん知ってる?
ミュンヒハウゼン:それはもちろんでございますが。
零香:どんなの?
ミュンヒハウゼン:ただの歌でございますよ。少々意味不明の。ただ、人によっては悪夢覚ましの魔術くらいにはなるかもしれません。
ミュンヒハウゼン:最古の 魔術の一つで、子守唄でございます。しかし、解せませんな。なぜそんな旧式で弱い魔術を・・・。

ミュンヒハウゼン:今です!
零香:えーとぉ、失くしたもの、滅びたもの、遠い故郷、太古の鼓動、草の音、かまどの光、丘の風・・・。
ミュンヒハウゼン:はぁ、・・・最初から間違っておりますぞ! ・・・いや、・・・なんだこの魔力は。

零香:
 それは遠い日のほのかな思い出。
 行く末、未来を思う時、人は輝きを思い出し、歌を歌う。

 風歌、我が心の闇を照らせ。
 風よ聞け、長い長い刻を経て、女と風が再び揃うこの時を。

 それは絶望の中で瞬く一筋の光輝。
 暗黒にあらがう小さな砦、引き継いだのは人間族。
 もっとも弱い、光の種族。

 小さな砦を心に隠し一人の人の子、子をなした。
 子は子をなし、子の子は子をなし久遠を待った。

 今、一人の女の裔として、地上に満ちる光を束ね、我は魔術を使役する。
 魔術の名は、「希望」。
 また来たわよ。ほの暗いものよ。

零香:勝ったぁ! レイカちゃん天才! ぶいぶい!
ミュンヒハウゼン:歌を間違えたから完全になったのか・・・。何て事だ。この方は本物の・・・。





頂 天のレムーリア 第1部 第6回 (ファミ通文庫 P127)

 ――太古に歌 あり。全ては歌より生まれ出で、歌の諸貌なり。――

 岩手は暗闇の中から現れてそう告げると、手を叩いて音を発した。
 再び口を開く、それは原初の音楽であり、力強い鼓動であった。

 一斉に風が凪いだ。

 岩手は高らかに天を仰いで声楽を紡いだ。
 天の神々の魂も安らぐような力強く、優しさに満ちた声だった。
 ゆるやかに流れ始める四方八方の風に吹かれ、雷蔵は顔をあげた。涙はぴたりと止まっていた。

「今、絵が見えた。四たりの御使いが飛んでいた。猫が大地を埋め尽くしている」
「それは風の精霊(エンプ)です。御使いでも、他の何者でもない」
「エンプ?」
「そう、エンプ。傲慢な神々の中で、大地の民をただ一つ助けた踊る伝説。黒より生まれし青い風の王は、いとかしこきメイデアの姫君の側について総ての神々 を敵にまわしました」
「恋をしたんだね。お姫様に」
「さあ、どうでしょう。ともあれそれから王の守りである四大の聖獣と光の六千、つまり四方八方の風は目に見えなくても大地の味方です。もちろん、貴方の味 方でもある」
「僕の味方なら、なんで僕がつらかったときに来てくれなかったのだろう」
「力が足りなかったのです。それはいつだって、ただの人間の身でありながら大地の民を守ろうとしている」
「風の精霊なのにただの人間なの?」
「エンプは人と交わって、人となったのです。だが心は風のまま、今も大気を駆け巡っている。万古の盟約は今もなお、総ての子らの守りとしてエンプを動かし ています。
 その王はレムーリアで今もいとかしこきメイデアの姫君の墓を守るとか。きっと、ロマンチストだったのでしょうね」

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●頂天のレムーリア 第2部 第9回 (ビーズログ2007年2月号)

「昇 くん。この人はここの司書でね」 説明する栄介。
「大賢者なるぞ」 胸を張って言う少女。笑う万博、口を開く。
「ま、見てくれはこうだがウチのばあちゃんよりはばあちゃんだ。年齢は」
「250」 自慢するように、言う少女。
「そうそう。250。妖精なんだよな」
 相槌をうつ万博。うなづく少女。二人で頷き合う。
 万博という人物は、相手が変であれば変であるほど、同じ変人のゆえか、すぐ親しくなるようだった。
「そうだ。ちなみに名前はモモカ様だ」
 少女はひっくりかえるほど胸をそらしてそう言った。

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「この絨毯こそがレムーリアの伝説を書いておる一級の書籍資料だ」
「かつて古、レムーリア大陸の南西には木が自生しなかった。紙、パルプの原料になる草もなかった。人々は代わりに羊鳥の毛で織物を描き、そこに情報を織り 込んだのだ」
「この文様が文字。絵文字だ。一つの文字で三文字の意味がある。レムーリア独特のものだ」
「解読? そんな必要はない」
「大賢者のわしがおる。好きなところを読んでやろうではないか」

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●頂天のレムーリア 第2部 第10回 (ビーズログ2007年3月号)

  最初に、山があった。山は高く、山は寒く、ゆえにそこには生き物はおらず、ただ雪だけがあった。
 その山に、猫が住み着いた。空から落ちてきた猫だった。
 猫は雪と戦いながら、ゆるやかにその数を増やしていくことになる。
 寒さや雪崩で死にながら、ひどくゆっくりと、だが確実に。

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 大地を猫が埋め尽くしていた。
 それぞれの猫が鼓杖を持ち、10列に10匹が並んでケントウリとなり、ケントウリが10列に10匹並んでレギオンになった。
 レギオンは段列を築いて太鼓の音と共に前進し、この世の悪しき企みのことごとく、ねたみにそねむ暗渠に住む者のごとく、あらゆる敵と戦って勝利した。

 レギオンは2個で共和国の護りとなり、レギオンの長には執政官がたって、長く共和国を安定と繁栄に導いた。

/*/

 共和国は善政を敷いた。
 そして民衆が集まり始めた。周辺各国は続々と参加し、共和国は猫だけの国ではなくなった。
 だが猫の心は共和国に残り、それが今日にいたるまで続いている。

 今をさること400年ほど前から、共和国は元の国々を藩国とし、それぞれがそれぞれを自治する形に移行した。
 これにより共和国はますます大きくなり、猫の勢いはました。 

/*/

「昇 でいい。あれは多分、歴史だろう。実際にあった、そういうものだ」
「え、猫が活躍する話がかい?」
「猫というのは符号だろう。氏族か、なにか。祖霊として動物を祀る世界はたくさんある。どうかな。万博」
「まあ。そんなところだろうな」 万博は珍しくかなり考え込む風だった。
「え。じゃああれみんな人間なの?」
「ああ。猫を名乗る人間だ」

/*/

「猫を名乗る人たちか、どんな人だったんだろうね」
「さあね」
「猫好きなのはたしかだろうけど」
 栄介の牧歌的発想はさておき、昇は知識を動員し始めている。
「物の名前や呼び方には相応の意味がある。共和国というなら共和国なんだろう。藩があるならそれは封建制だ。
 両方が並列するというなら、おそらく独立性の高い都市国家などが連立、あるいは連合した国という可能性が高い」

/*/

「栄介くん」
「なに?」
「あの猫の国の国章、写してなかったか?」
「ああ、うん。絨毯のやつだね。いちおう。あんまり絵の方は得意じゃないけど。色が落ちてなかったらもっと綺麗だったんだろうけどなあ。猫の身体が赤色く らいしかわからなかった」
「瞳の色を推測できるかい?」
「ええ? いや、僕は画家じゃないからな。えーとそうだ、配色辞典を見れば絞り込めるんじゃないかな。今も昔も色の組み合わせはそんなに変わってないと思 う」
「国旗や国章に限ってはそうとは限らない。まず意味が優先する。ふむ。他に色を推測する方法はないかな」
「もう一度戻ってサンプル貰ってきて顕微鏡で調べて見るのはどうだ」 万博。
「あの、そもそも聞いてみる、というのはどうですか。司書さま(モモカ)に」 明乃が言うと、昇は眼鏡をかけなおした。
「見た目よりは数百年は長生きしていそうだったが……」
「婆ちゃんが嘘ついているとでも思ったか?」
「生きた人間のことを信用するな。一つの情報源だけで満足するな、とは習った」
「嫌な生き方だな」
「まったくだ。サンプルのほうでいこう。それと、最初に高い山から国が始まったと言ったな。その場所の特定と、そこで取れる染料の洗い出しだ」

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「猫の瞳は青だな」
「青い花から作られた顔料か? それとも石か?」
「あるいは藍か、だな。……花だ。品種まではわからない」
「栄介くん、高い山で青い花が咲く場所を全部リストアップしてくれ」
「どっからどこまでが高い山かな」
「とりあえず4000m以上で」
「わかった」
「あ、私の故郷は高い山があって青い花が咲きます」
「じゃあそこを1番と、場所、どこ?」
「北オアファリアです」
「へえ。じゃあ、僕の領土のすぐ近くだね」
「すみません」
「いやいや。あやまるところじゃないよ。僕はターニ郷の近くなんだ。あんまり豊かじゃないけど、みんながんばってる」
「私はサラです」

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●頂天のレムーリア 第2部 第11回 (ビーズログ2007年4月号)

 伝説の土地、猫の山について
(注意:簡単なまとめであり抜粋ではありません)

・北山岳地帯アルフスは、またの名をアルプスといい、その意味はどちらも「妖精達」とのこと。
・アルフスは、元々は妖精族の土地だったが、そこを人間が間借りし、人間達が増えすぎると妖精達はどこかにいった。

・その4000mを超える雪山の山頂には猫の象の里程標がある。
猫の象の里程標には、「引き返せ、さもなくば命はない」という文字が書かれている。
・実は、遺跡(猫の里)へ向かう道そのものが、声や音の反響を利用して雪崩を起こす罠製造装置になっている。
・雪山には、青い花が咲いている。
・いくつもの雪崩を越えると、地熱? の影響で暖かい春の村がある。
・村には誰もおらず、数百年前に放棄されており、石造りの家の半分は崩れていた。猫 1匹だけいるのを確認。
・村の中心の広場に立っている石碑には、青い目で赤い猫の絵が描かれており、実はこれは良狼の家の紋章である。
・良狼の家では、子供が生まれると、子供の名前に空いている動物の名前をどんどん入れていく。猫は特別。
・実は
、王の試練のため、この村に魔 王に差し出す花嫁を連れてくることになっていた。


●セントラルで の芝村氏との質疑応答(2006/5/23)

+ 芝村 > うーん、正確に言うなら第2世界系エルフはどれでもないね。 (5/23-14:11:56)
+ 芝村 > 第2世界のエルフはエルフの原義どおりアルフだからね。 (5/23-14:14:03)
+ 芝村 > 昔雪に覆われた人外の山麓に、アルフと呼ばれる妖精があってね、好きに過ごしていたのさ。 (5/23-14:15:27)
+ 芝村 > この場合は種族だね。 ちなみにアーレフとは全然違うぞ。語族からして違う。 (5/23-14:16:35)
+ 芝村 > アルフのすむところだからアルプスだ。 今でも残っているだろう? アルプス山脈。 (5/23-14:17:06)
+ 芝村 > 言葉の魔術のルールから、日本アルプス山系にも今頃アルフたちが発生しているよ。リンゴを食べて毛長牛を飼っているはずだ。 (5/23-14:18:29)
+ 森村 > アルフの住むところだからアルプス。名付けた人たちはそこに何がいるか知ってたのですね。すごいなぁ。 (5/23-14:20:51)
+ 芝村 > まあ、人間と交流あったし、子もなしたからね。 (5/23-14:21:58)

 ■中略■
+ 芝村 > ということで、第2世界のエルフは残念なことに外では厚着だ。みんなの知っているような姿ではないね。保守的すぎてテレビ嫌いな偏屈人だよ。 (5/23-14:36:14)
+ 芝村 > アルプスは寒いんだよ。みんなの知っている密林ルックじゃ、凍死するよ。 (5/23-14:38:47)

 ■中略■

+ 海法 > A?DICファンタジーに出てくる空妖精、「幻のエコー」とかは「エルフ」なのですか? (5/23-14:45:52)
+ 芝村 > 空妖精はエルフではないね。 アルフはみんな海妖精だ。 (5/23-14:47:02)
+ 芝村 > で、アルフに追われた妖精は地下に隠れたことになっている。 (5/23-14:47:47)
+ 海法 > たぶん、ぽんすけさんが聞きたいのは、そこではないかと(笑)<空妖精石田は、どんなかっこうか? (5/23-14:48:54)
+ 芝村 > アララトの民は海の民を名乗る。そういうものさ (5/23-14:50:45)
+ 芝村 > 海から来たのが海妖精だ。ただし、日本では由来ではなく居留地で本籍登録するから大日本帝国臣民森林妖精族でもある。 (5/23-14:51:47)
+ ぽんすけ > 私も脳内イメージではミクシーで以前書いたような感じでしかないのですが。(エコーみたいなの)>空妖精石田 (5/23-14:52:05)
+ 芝村 > 世界移動してきてアルフに拾われたサラは、恐らくアルフの服の装束を着ているはずだよ。 (5/23-14:53:37)

補足:アララト山 → 旧約聖書でノアの箱船が大洪水の果てに流れ着いたとされる場所
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%A9%E3%83%88%E5%B1%B1


●テンダイスブログ 6月23日の試合の模様:大侵寇(1)
 http://blog.tendice.jp/200606/article_49.html
●テンダイスブログ 6月23日の試合の模様:大侵寇(2)
 http://blog.tendice.jp/200606/article_50.html

芝村@SD:ターニの魔法の剣、夜明けを呼ぶただの長い棒、最強の剣テンダイスは、淡く文字を浮かび上がらせています。

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エーラ・モンド:「あの大男はどこに・・・あの剣について色々聞いてみたかったのだが・・・。」
芝村@SD:エーラは鍛冶師ですよね。
エーラ・モンド:はい。
芝村@SD:じゃあ分かる。メッセージの絶技に使う古代語だよ。
エーラ・モンド:あの光るときに出る文字ですか?
芝村@SD:ええ。
エーラ・モンド:ちなみになんて書いてあったんでしょう?
芝村@SD:万物の調停者治世3年。夫を守るために最強の剣を建造す。公平、公正、愛あれと。

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●Return To ターニの帰還#7 旅の終わり。そして(1)
 http://stellar-night.at.webry.info/200810/article_2.html
●Return To ターニの帰還#7 旅の終わり。そして(エンディング)
 http://stellar-night.at.webry.info/200810/article_7.html

芝村:ソーラは女王が脱ぎ捨てた膜からわんわん帝國の文様をみつけた。
ターニ:「お前たちの知り合いか。こいつら作ったのは」>ばるばるばる
ラマ・カーン:ばるばるばるって聞こえていたのは、日本語だったのでしょうかもしかして?
芝村:ええ>ラマ
ターニ:「青森でこの模様は見たことある」

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ノーア:「お母様・・・」
女王:「イヒヒヒ。なぜお前は改質されない?」
ノーア:「・・・父方の血が・・・私を」
芝村:女王はそれが傑作のギャグのように笑い始めた。
女王:「はやく改質しなさい。そうすれば、全てのことがわかる」
女王:「私の単一生殖クローンが血を受け継ぐなどと・・・」

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芝村:女王は怒りだした。シーロウを切った。
ホーシ・ノーコ:かばいます
芝村:ホーシは切断された。耳をおおわんばかりの音がする。
シーカ・ルーカ:「ノーコ姫!」
芝村:糸が切れた。ホーシは生き残った。ターニが剣で邪魔をした。
ターニ:「俺の剣を切れるほどじゃないようだ」
ラマ・カーン:「すげえ剣だなあ…なんで折れねえんだ」(ノーアを抱えて女王から距離をとります)
ターニ:「切れもせんがな。ただの99cmの長い棒だ」

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芝村:ターニは二人きりだというと剣を地面に突き立てて、あずかっといてくれといった。
芝村:この剣は100年後そのまま突き立ったままで、誰にも抜けなかった。





海 ラヴ Episode04 いと賢き姫君の肖像
●テンダイスブログ ふるいふるいでんせつ
 http://blog.tendice.jp/200606/article_2.html

 荒れぶるう嵐の中より現れる、そを王と呼ぶ。
 その御柱、賭博と酒を愛する混沌の戦神。
 天海地に吹く風のことごとくを配下とし、
 ただ空を飛ぶ自由の者。
 気が向けば慈悲の雨を降らせ、
 気が向けば嵐を呼んで全てを押し流す踊る神。


 いとかしこきメイデアの姫君あり。
 そは最後の楽園の、最後の希望なり。
 泥だらけになり走りぬけ、よく本を読み良く笑う知恵の姫。
 宝石を身に着けず、子供たちより受け取りし木の実を胸に身につく。
 運命を拒む瞳持ちし姫君なり。

 いと賢きメイデアの姫君、捨てられし人々をはかなんで天の風に言う。
 お前はなぜ、涼しい顔をしているの?
 そんなことはどうでもいい。
 お前はなぜ、力を持っているのに何もしないの?
 そんなことはどうでもいい。
 戦え、嵐の神よ、人のために。
 捨てられた民のために? 笑わせるではないか。
 それでも人は生きているのだ。

 嵐の神は運命を拒む、いと賢き姫君の目を見て言った。
 金貨を投げよう。機会は一度だ。
 お前が勝てば、人の味方をしよう。

/*/

 そは人として生きることを選んだ嵐の神。
 いと賢きメイデアの姫君、かくて踊る嵐の神を夫とす。
 かくてかの神、人として。
 荘厳なる天の神々をことごとくが敵となり、悪鬼羅刹として戦えり。

 そは嵐。荒れぶるう嵐の中より現れる、
 地を見上げる捨てられし全ての人がために一人、踊る嵐の神が戦えば、
 かくて天は百日の間嵐となる。

 いとかしこきメイデアの姫君、何も持たず、ただ弱者のため涙を流したる無力な女なり。
 されど、いとかしこきメイデアの姫君は心に耳を傾ける器量あり。
 心に耳を傾けるを恥といい、いとかしこきメイデアの姫君は恥を知る。
 無力を恥じ、同情の涙を恥じ、裸足のまま山々を駆け、闘争をはじめたり。
 世の姫君が百万あれど、恥を知るものただ一人。民草に歌われし伝説の者。


 かの姫君、踊る者、黒き暴風の神を従え、敢然と戦いし。
 その後裔こそ英雄なり。

 万難を廃してただ一撃、ただそれだけをする存在なり。

/*/

「……もう泣くのはおわり。いつもの通り。正義の旗を打ち立てなさい。慈愛の戦士」

 石だけを積んだ粗末な墓を前に己にそうつぶやくと、地面に突き立てられた夜明けを呼ぶただの長い棒、
銀の剣鈴を引き抜き構え、剣の乙女はゆっくりとした足取りで丘を降り始めた。青に輝く可憐な鎧も凛々しく、
編んだ金の髪が、深い兜に隠れた。

 丘の後ろから、前脚に輝く鍵戈を握り、担いだ兎達が続々と現れた。またたくまに丘は輝く穂先で埋め尽くされる。
その数は1万2千であり、兎神族の全てであった。

 それはずっと、まっていたのだ。

 慈愛がついに人の形をとって剣鈴を取り、この空を覆うなにもかもと闘争を再開することを。

 兎たちの鍵戈は使い手の心を汲んで内より燦然と輝きだした。
兎の軍勢は乙女の横顔だけを頼りにその背に従って丘を降り始める。

 物を言う馬にまたがった兄弟の騎士が、手綱を引いて口を開いた。
「みつけたぞ兄者」
「おお!」

 長さ5mを越える重馬槍の先に小さくはあるが誇らしげに旗をつけ、兄弟騎士は剣の乙女の左右についた。
 その小さな旗こそが、ただ今からこの大地を席巻するであろう旅団の旗であった。

 稲穂をはむ猫を抱いた、剣を踏む女の旗である。
 およそ戦場にはにつかわしくもない、ひどく牧歌的なその旗は、ここより先、
ほの暗い闇の地、戦場を彩る黄金の炎の中、いたるところで散見されることになる。

「俺は、俺はぁ感動したぜ!兄者ぁ!」
「我らはエイジャ兄弟、貴方の意気に、心、震えました」

 兄弟は同時に馬を飛び降りて膝をつき、剣を抜くと差し出した。
「願わくば、我らを貴方の騎士に叙勲してくださいませ」
「俺たち、一生懸命はたらくぜ」

「愉快な奴等。私はお姫様でも、領主でもない。仕官するのなら、別になさい」

「誰だろうと」
 ファイは、セイは、晴れ晴れとした笑顔を向けた。
「我らが剣を捧げる者が我が主君。貴方が足を踏み入れたところが、我が戦場」
「それが、不思議の側の大河の向うでも?」シオネは堂々と言った。

 兄は淀みなく言った。
「幽霊騎士として名を馳せましょう」

 シオネははじめて笑顔を見せた。
「それは無理ね。貴方達はおひさまの光に似てるもの。どんなに嘘をついても、せいぜい、黒ね。黒騎士を名乗りなさい、エイジャ兄弟」
「御意」

 シオネは差し出された剣を輝く拳で叩き折ると、驚く兄弟に言った。
「音を出さないなまくらではあしきゆめは切れないわ。ソロンギル卿、武楽器を用意、火の剣鈴と、氷の剣鈴をこの者達に」

「そして闘争を再開する! ここより先、いつまでもいつまでも我らの後裔が、己が慈愛を誇れるように!」

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●リターントゥガンパレード 第16回(後編) SIDE−C−1
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/16-6.htm

 いとかしこきメイデアの姫君、何も持たず、ただ弱者のため涙を流したる無力な女なり。
 されど、いとかしこきメイデアの姫君は心に耳を傾ける器量あり。
 心に耳を傾けるを恥といい、いとかしこきメイデアの姫君は恥を知る。
 無力を恥じ、同情の涙を恥じ、裸足のまま山々を駆け、闘争をはじめたり。

 世の姫君が百万あれど、恥を知るものただ一人。民草に歌われし伝説の者。

 かの姫君、踊る者、黒き暴風の神を従え、敢然と戦いし。
 その後裔こそ英雄なり。

神々は前足と翼と手を叩いて華々しく歌った。
生きたものと生きているもの、幾千万もの歌声とともに、神々は歌う。

 その後裔こそ英雄なり。我は英雄のはらからなり。




●Aの魔法陣 A −DIC ターニの帰還 旅の理由表 信仰表
 http://blog.tendice.jp/200606/article_8.html

光の女神 シオーネアーラ
 海から来た古い神々の神話では、光の女神シオーネアーラは神話の存在ではなく、歴史上実在の人物とされています。
 一人のただの女で、詐欺師だったと言います。明日はきっとよくなると、ただそれだけを嘯く女だったと言います。
 船乗りに悪さをする海の上の暴風の神エンプ・アーラは海辺で嘯くこの女性に恋をして、
 光り輝く黒き戦士の姿をとって地上が3日も暗くなるほどの音を立てて降り立つと、
 地上のあしきもののことごとく、邪悪なる企みのことごくと闘争をはじめました。
 シオーネアーラはエンプを導き、光の軍勢を組織して戦い、最後の戦いを前に死にますが、
 その魂は太陽でも月でも星でもない光になって、英雄の手に宿って見事世の闇を払い、
 エンプと共に冥界に去っていきました。昔から、光の女神の光は、心の中の光なのだといいます。
 それさえあれば、船乗り最大の敵さえも、味方にすることが出来るのだと。


風の神 エンプアーラ
 暴風の神エンプアーラは元は悪神です。が、光の女神の心に打たれて善神になり、
 地上のあしきもののことごとく、邪悪なる企みのことごくと闘争をはじめました。
 光り輝く黒き戦士の姿をとって地上が3日も暗くなるほどの音を立てて降り立ったといいます。
 大きさは人の10倍。重さは山のよう、天に光の槍を投げると厚い雲が一撃でばらばらになったと言います。
 どんな傷を受けても立ち上がり、目を輝かせたといいます。
 風の神エンプは人々の祖先と言います。エンプとそれに従う風の妖精たちは人となって
 今も光の女神が現れて戦いを再開することをずっと待ち続けているのだと。
 血気盛んな下級貴族は戦う時に、我はエンプの子孫だと好んで嘯きます。
 それはなにもかも大嘘ですが、ですが最後まで嘘とは限りません。エンプは心の光に激しく反応し、
 子孫と認めて風が力を貸す時があるからです。SDはロールプレイボーナス1000点を使用して
 善の側の戦士として振舞う行動を取ったキャラクターに絶技修得の設定を与えるべきでしょう。
 なお、エンプは一箇所にとどまれないとされており、神殿はどこにもありません。
 もしも祈ることがあるのなら、風につぶやけばよいのだといわれています。

海の女神 ビアナアーラ
 海の女神ビアナアーラは大変気紛れな女性で、元々風の神エンプの前妻だったとも言われています。
 もっとも兄妹だったのだとか神々のことなので何万年も前に離婚していたという説もあり、
 この辺の関係よく分かっていません。ただ分かっているのは、光の女神に肩入れし、
 ついでにエンプに盛大な嫌がらせをしながら善の側に立って戦ったということです。
 この女神は最後の戦いでもちゃっかり生き残っており、あいも変わらず気紛れにすごしているといいます。
 漁師はこの女神におべっかを使うこと、尋常ではありませんが、それでも毎日豊漁になるとは限りません。
 神殿は(確認しようがないながら)海の底にあるとされ、時折男の手で花を流す習慣があります。
 そう、彼女は大変嫉妬深く、女が乗っていると船を転覆させたり、
 いい男が乗ってたりすると横恋慕して海の底に連れて行ったりするといいます。
(なんだ同じことじゃないかと言う人もいますが、神話なんてそんなものです)
 あんまり美人でない女性には比較的肩入れするとされ、漁師以外にも行き遅れ感のある女性が信仰している時があります。


星の神 アブタマル
 星の神アブタマルは海から来た古い神々の神話では旅人を導く善神として描かれています。
 また魔術の神アーノマーホに並ぶ学問の神でもあり、信者の多くは読み書きや計算を習います。
 行商の多くはアブタマルの信者ですし、良き魔法使いもこの神を信仰しているときがあります。
 魔術の神が胡散臭いのにたいしてこちらは健全ですが、それゆえに説教くさいという人もいます。
 実際神話の多くでも、アブタマルは長いひげをゆらして他の神々に説教しています。(そして、無視されています)
 星の神アブタマルは争いごとが嫌いでエンプが戦い始めた時もいやーな顔をしていましたが、
 地上の人々の悲しみを見て取ると長い杖を振るいながら援軍に言ったといいます。
 光の女神の神殿ほどではないにせよ、立派な神殿をもっています。

#ノーア:「ハゲよ。ひげのびてるけど」
#ノーア:「アブタマルは神々の長老。まあ、いい年こいて元気なのよね」
#九音・詩歌:「なるほど。確かに矍鑠としたイメージでした」
#ノーア:「昔はそうでもなかったんだけど」


猫の神  ブータニース
 猫の神ブータニースは法の神々の末席近くに座る存在です。
 わがままで法とかけ離れたこの神が法の側にいるのは多くの人が不思議に思っていますが、実際のところ大した理由はなく、
 ただこの神が善の心をもっていただけのことでした。
 神話では猫の神ブータニースは立派な立派な戦神であり、竜を相手に一歩も引かず光の女神を護って戦いました。
 今では猫の神ブータニースを信じるものはほとんどおらず、一部の猫好きだけが信仰しています。
 が、その加護は今も北オアファリア全土にあり、善の側の戦士に力を貸すことがあります。
 SDはロールプレイボーナス1000点を使用して善の側の戦士として振舞う行動を取ったキャラクターに絶技修得の設定を与えるべきでしょう。




海ラヴ Episode11  琴都&舞蔵&君島編

 大きな白い飛行機があった。
 昔、戦うために作られて、結局使われなかった飛行機だ。

  MEIDEA

 正式名称を、そう言う。

  いとかしこきメイデアの姫君。
  かくて嵐の王を味方にし、天の神々に反逆す。

 伝説の戦神を夫にした人間の女性の名である。

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海ラヴ  Episode04 いと賢き姫君の肖像

「なぜ、メイデアなの? かの嵐の王の名ではなく…」
 豊田瀬理香は、目を細めて、純白の戦闘爆撃機を見上げて言った。

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海ラヴ Episode11  琴都&舞蔵&君島編

 地球が丸いことが、肉眼で確認できた。
 計器を見るまの瞬間だったけれど、地球は確かに、丸かったのだ。

 そしてその瞬間。
琴都は、自分達が強くて偉大な大気に抱かれていたことを思い出した。
今自分が、そこから離れたことも。

「なぜMEIDEAか、わかったですの☆」
 主設計者は、人が、地球の引力圏を抜ければわかるといっていました。
お伝えします。主設計者が私に命じた言葉を。

 “ありがとう。兵器倉は空だ。地球を見て、頭冷やしたら、帰ってこい”以上です。

「はい☆」 いとかしこきメイデアの姫君とその子孫を、嵐の王は守ってきたのだ。
青い大気となり、地上に吹く風となり。何年も、何年も。

 MEIDEAの翼端が引く白い雲が消えた。ほんのり紅く染める機体の熱が引く。
替わって機首の姿勢制御ノズルが動き、二度三度火を噴いて機体を反転させる。
大気がなくなったのだ。

 わかりましたわ☆ わかりましたの☆

 地球光に、MEIDEAが照らされる。
琴都は頭上に輝く青い星を見て、微笑んだ。 最後のスロットレバーを握る。
最後のスロットレバーを引いた。
「すぐに戻ってきます☆ まっててくださいね☆」

主エンジンに点火。MEIDEAは速度をあげ、月に飛んでいった。

 迎えの船が、発光信号を出しながら近づいてきた。

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●テンダイスブログ ボーナストラック3 茜色の森と海0
 http://blog.tendice.jp/200512/article_28.html

 MEIDEA2空間邀撃機は指定時刻きっかりに全機が揃って姿を見せた。
 伝説に謡われる天空を舞うかまどの女神の娘の名を戴くその機体の全可動垂直尾翼には、青い色でヒロインの横顔が描かれている。




●高機動幻想ガンパレードマーチ 図書館

【東方三王国の 神話(上)】
 剣と運命の女神
 アガナの女神。あるいはシオネ・アラダとも言う。東方三王国で信仰された女神。
 片手、片目、片翼の女神にして、もとは、かまど、転じて家庭の守り神であった。慈愛の女神であり、人を守護する。
 人が主神と戦った時にその半身を犠牲にして剣を作り、半神半人の青い人々に託した。
 主神はこの世のもの全てに傷を負わされない魔法を持っていたが、人でも神でもない英雄と、
 その時まで存在しなかった剣によって打ち倒されたと言われる。

【東方三王国の神話(下)】
 踊る人形
 ダンシング・ドール。東方三王国の婦女子・子供の墓に描かれた守り神の図。邪神の一種。
 賭博と酒と嘘の神であったが、伝説ではいとかしこきメイデアの姫君との賭けに負けて女性と子供の守り神になった。
 そのエピソード故に子供たちには人気が高く、たくさんのおとぎ話の原形となる。
 全ての神々を敵に回し、人を守って奮戦したとされる。
 現在の人々が賭博と酒と嘘を手放せぬのは、かの神の血が広く混じっているせいだと言われる。

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●Aの魔法陣 A−DIC 神々の宴
 http://www.alfasystem.net/A/party05.html


アルガナの女神
 東方三王国のかまどの女神。
 まことに牧歌的ながら、光の軍勢の旗印は剣を踏み、稲穂をくわえた猫を抱くこの女神である。
 人神族を作り上げた神で、これを作り上げるために片目、片腕、翼を犠牲にして一振りの剣を作ったとされる。


踊る人形
 1:東方3王国の伝説上に存在する、架空の妖精。
   太って髭が生えており、トランプの王様のごときタイツをはき、透き通った羽根をつけている。
   元は子供の守り神として、また死んだ子供の霊を楽しい場所に案内するものとして、子供の墓に好んで描かれていた。
   この妖精が子供の守り神になったのは、いとかしこきメイデアの姫君が、10万年分ほど賭けに勝ったためという。
   この妖精は子供の夢があるところに決まって出現する。全部の距離と時間を無視して、
   無制限に分裂しながら出現する様は恐ろしくもある。踊る人形の軍勢を率いる子供がいたら、その子は人中の竜である。
 2:わんわん帝国MEIDEA2主力戦闘機のニックネーム
   全長32m。重量22t。爆装11tの性能を持ち、マッハ3を越える高速性能と、全天候戦闘能力を保有する。
   ステルス性能はなく、巨大なレーダードームと馬鹿馬鹿しいほどの巨大な双発エンジンを装備し、
   巡航ミサイルをサブエンジンとして使うことまでやる高度なコンピュータを装備する。

踊る人形
 ヒンドゥ神話では、嵐の王の別名。
 東方三王国では子女の墓に描かれる、すべての神々を敵に回して人のために戦った混沌の神の紋章。
 いと賢きメイデアの姫君を妻とし、神々の王を打ち破る者の父である。
 その名を冠する対セプテントリオン組織が存在する。


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●高機動幻想ガンパレードマーチ 図書館


【芝村一族 その系譜】
 かの一族は自分達を「青」と呼ぶ。
 英語での自称も常に「ブルー」である。
 かの一族の神話によれば、一族は元々東方三王国(どの歴史にも存在しない名である)の末裔であり、
 いとかしこきメイデアの姫君の子孫であるという。
 芝村の名は、明治時代に日本に流れ着いた彼らの祖先、それを庇護した村の土豪の名前からとったものである。
 彼らが目立って歴史の表舞台に出てきたのは20年前、一族の中で「A」と呼ばれる人物が出現してからである。
 (かの一族は成人するとともに名前を隠すことを美徳とし、本名とその意味は、もっとも親しい人間しか知らない。)
 非常に閉鎖的で秘密主義を貫き、その実体はほとんど分からない。
 数少ない情報によれば、彼らは血縁を無視し、実子であろうと一旦籍を外し、その後に養子とする形式を踏むという。
 彼らは血よりも記憶や「青らしさ」を重要視し、積極的に養子を迎えるようである。
 自らをこの惑星の記憶と名乗る、尊大で傲慢、非人間的な論理を持つ彼らは、
 それまで人類が保有していなかった奇跡の技術の数々を独占的に保持し、そして幻獣と戦う人類のために供与した。
 現在は財政界に隠然たる勢力を持ち、まるで幻獣との戦争が起きることを予測していたように軍備を備え、
 要職に一族の者を送り込んでいる。
 彼らの真の目的は不明である。
 しかし彼らが権力や金の収集を目的としていないことだけは彼らの政敵も認めざるを得ない点である。
 彼らは何か待っているという。
 それは人類に勝利をもたらす究極的な兵器というものもいるし、あるいは彼らの指導者ともいうものもいる。
 真相は不明である。この内容自身も、彼らが読めば笑い事で済まされるのかも知れない。

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2. [180]  Re[1]: 剣と運命の女神(ねたばれ?)
 □投稿者/ やがみ  -(2000/10/27(Fri) 10:54:22)

> 図書館にある剣と運命の女神の資料に
> 半身を犠牲にして、剣を作ったとありますが、
> もしかして、これが火の国の宝剣ですか?

 ガンパレード・マーチの歌詞にある、そは闇をはらう銀の剣 かも知れません。
 マジックソード・ムルブスベイヘルムは、第5世界の存在ですが、
 あのお話はそれとは別の世界(青の故郷の世界)っぽいですからね。

 これは公式の答えではなく、矢上の意見ですが、
 あのお話をよんでいると、あれはどうも、剣じゃないのではないかと思うのです。
 隠喩じゃないのかな…剣は、ある人間?のことかもしれません。
 女神は半身を失いながら、剣と呼ばれる子供を出産したのかも。

> あと、半神半人の青い人々とは、芝村一族の事でしょうか?

 残念ですが分かりません。が、神々や芝村一族の言葉を察するに
 この世界観で神は最初からいないし、神の子だから神というわけでもなさそうです。
 人は人であることを放棄して、人であって人でなきものに生まれかわる…人外の伝説、
 もっとも新しき伝説。絢爛舞踏。あれ、なんかつながったぞ…
 瀬戸口が半分神になってるって、書いた人だれでしたっけ、

/*/

【世界は電波に毒されている】
 …ウスタリ・ワールドゲートの消失事件以降、各世界の移動組織の動きが急になった。
 オリジナル・ヒューマンがらみの可能性がある。
 特にセプテントリオンは第5、第7世界に対する行動を激化させており、今後の動向に注意する必要がある。
 今日、富士のアポロニア・ワールドゲート、東京のバーミアン・ワールドゲートから続々と漂着物がたどり着いている。
 他世界で大規模な破壊が起きたのか?
 重要なのは、踊る人形はメイデアの姫を愛していたのか、どうかだ。

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2. [200]  Re[1]: 世界は電波に毒されている・他の質問(ネタバレ)
 □投稿者/ やがみ  -(2000/10/28(Sat) 11:53:42)

> って本の内容、今までやがみさんから教えてもらった情報&ゲーム内で得られる
> 情報でなんとなく理解できたんですが、最後の「問題は踊る人形はメイデアの
> 姫を愛していたかどうかだ」って一体なんなんでしょう?????
> 神話(下)に出てくる二人のことではないだろうし・・・・・。

 踊る人形がメイデアの姫君を愛していたのなら、そこに神でも人でもない、”英雄”が出現するはずだという意味だと思います。
 踊る人形の神と、メイデアの姫君の間に、英雄と呼ばれる青が出現するというのが神話の流れですから。

/*/

3. [242]  Re[2]: 第5世界について
 □投稿者/ やがみ  -(2000/10/30(Mon) 01:35:24)

> 俺でも答えられるので回答です
> 精霊機導の世界=第4世界
> ガンパレの世界=第5世界
> ほかには、
> 東方三王国は第2世界ですね
> 以上です。
> これで、あってると思います(たぶん)

 正解です。




●ガンパレード
マーチ外伝 第2回 第8幕
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/gpmos/gpm_gaiden_08-5.html

「あ なたには義務がある。我々の死に。
 せめて正義のために闘って死んだと、そう我々に信じさせる義務があるはずです」
「…僕が…正義の体現者だって…?」
「あなたが任官のために手をあげたときに、国家は貴方にその役目を与えたのです。
 望むと望まざるに関わらず。それが運命だと」
「…僕は、面倒くさい儀式だと、そう思っていた。」
「だから我々がこっぴどく体に叩き込むのです。苦しいとき、絶望するとき、それでもなお正義を守り、死を強要し、自分が死ねるように」

「我々こそは伝説が歌う、民を守りて闇を払う銀の剣。そうでなければならんのです」

/*/

●ガンパレード
マーチ外伝 第3回 第9幕
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/gpmos/gpm_gaiden_09-a.html

「……私の分析に来たのですか」
「いや、誉めたのだ。お前は、他人のために生きて、死ぬ。その一方で自分自身のために何もなせないし、何も出来ないだろう」
「それが、誉めているのですか」
「そうだ。誰でも出来ることではない」
 少女は、天を仰いだ。目を細め、歌うように口を開く。
「私はこのようなところでも、シオネの欠片を見ることが出来る。そのたびに思うのだ。戦わねばと」

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ガンパレードマーチ外伝 第4回 第11幕
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/gpmos/gpm_gaiden_10-2.html

「あの地べた這いに、ご執心のようですが」
「懐かしいからな」
「は?」
「あれは今、自らを包む運命を忘れ、全てをあの女に捧げている。ただ笑顔を見る為に。
 ……覚えているぞ。豊かな可能性を持つも、中にはなにもない。献身が生む力、覚えている」

 少女は、車に乗り込むと運転手に言った。

「それは赤。赤にして深紅だ。美しいアラダだった」
「ルラダンが他にも?」
「いや、おそらくはグライダーだろう。ゲノムの充足率が低い」

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ガンパレードマーチ外伝 第4回 第14幕
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/gpmos/gpm_gaiden_10-5.html

 なぜ絶望的な死を感じさせるのに生命を感じるのだろう。
善行は、ジャングルジムの上に座る少女を見上げて、口を開こうとした。
 少女は表情のない瞳で機先を制する。それは歌うようで、祈りの声のようでもあった。
「悲しみと絶望と混迷の海からそれは生まれるのだ。それはいつも、複数からなる。死を告げるものは、新しい生も告げるだろう」

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 口を真一文字に引き結ぶ。胸に手をあてる。
 胸に掲げる青い宝石に手が触れる。それは"それ"の生き様であった。

 それは誰かと再び逢うために、舞うように生きるしかない生き様であった。
 少女の背に、何千何万もの人の形をした運命が見える。ある者は老い、ある者は生まれ、
ある者は戦士で、ある者は農夫で、ある者は女で、ある者は剣鈴を持っていた。全員が手を繋いでいた。
 それは生命の大河であった。長い長い生命のつらなりが、その少女の左手に渡されていた。
 いずれに、胸に掲げられた宝石に触れた右手から、新しい生命に渡されるだろう。
 それは膨大な記憶と技が連綿と継承され続けた結果であった。

 足を踏み鳴らし、手を叩く。幾千万もの生命が手を叩く音。
 それは原初のリズム。鼓動と同じタイミングで叩かれる。

 少女は運命に挑むような目で善行を見ながら、口を開いた。
 それは意味のある音のつらなりであり、心動かす響きであった。

 善行は自分の心臓がつかまれたと思った。
 長い髪を振り、運命を見据え、少女は、ただびとでは聞けぬ声で歌を歌った。
 そこに剣を持つように、腕が振られる。善行の瞳に銀の剣が映る。

 足を踏み鳴らせば、地面に真円が描かれた。
 青く輝く。 にたび踏み鳴らせば青い燐光があがる。

 それは原初にして偉大なる魔術。
 今だ魔術と科学が同一であり、政事が祭事であり、戦うことが神聖であり、
 円が宴と同じであり、武器と楽器が分かれていなかった頃の力と技である。

 生命は時折、昔を思い出すときがある。
 生態系全体が昔を思い出すとき、この御技は、たびたび使われてきた。

 夜が暗くて凍えるとき、行く末、未来に迷うとき、悲しみそれでも生きる時。
 生命は、暖かな時を思い出して歌を歌う。

 善行は、猫達に並び、その様を見た。
 いつのまにか猫達が、現れていた。繁みから、屋根から、路地裏から、
 歌声を聞くために現れては行儀良く座り、ヒゲを並べて風に揺るがせていた。
 皆が皆、傷つき、疲れている様であった。 猫達は朝日を見るように"歌"を見ていた。

 それが何故だか神々しくて、善行はなぜだか胸が熱くなった。
 この地の夜を守るもの達は誰か。はじめてそれを知った。

 猫の背に小神族が乗っていた。
 ある者は弓を持ち、ある者は槍を持ち、ある者は男で、女で。
 全員が矛を収め、歌を見ていた。

 夢と同じように、歌は見るものであった。
 最高度に練り上げられた文や歌は、目に見える。

 善行は、泣いた。




●リターントゥガンパレード 第17話(前編)
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/17-4.htm

「何の色が好きか、か?」
 舞は、その途方もなく平凡な質問に少し考えた。笑ってみせる。
「皆好きだな。秋には秋の、春には春の、似合う色がある。
 だがそれでも一つだけ選べと言われれば、やはり私は青を選ぶだろう」
「芝村の色ですね」
 壬生屋が言う。芝村家の紋章は五木瓜だが、これを飾るのは青地である。
 芝村縁の部隊は、だから青地や青筋を使ったイグニシアを多く使う。
「いや、元はそうではない。青になったのは、一匹の婿を入れてからだ」
「我が一族は昔、カラスを婿にしたことがある。自らを青と名乗る黒いカラスだ」
「かわいそうな話だ。カラスの嫁にされるなんてな。芝村らしい悪趣味だ、俺はその人に同情するね」
「可哀相かどうか、そなたは本人に聞いたのか?」
「人やカラスの幸せなど、本人以外にはわかるまい。それともう一つ、我らの先祖も芝村だ。
 芝村は寛容だが、気に食わない相手を生かすほど鷹揚でもない。
 カラスをくびり殺したという記録がないことは、最低でも悪くはなかったということだ」
「私は、我が一族は信じる、我が伝承を。カラスを婿にせし媛、冥王の妻となりて夜に君臨する。めでたしめでたし」
「不条理ギャグのような話だ。めちゃくちゃだ。どこがめでたしめでたしだ」
「冥王が悪いと誰が決めた。死神に良心がないと、なぜ言いきる。
 漢字二文字で物の全部を分かったことが言えるのか」
「明日の世界を守るのは、魔王と呼ばれる者かも知れぬぞ」

/*/

 やりとりの一部始終を、ブータは隅の方で耳を立てて聞いていたが、ここで口を開いた。
 義を見て立たざるは猫なきなり。
「英雄は、英雄だから英雄なのだ。それでいい。他に必要なことは、なにもない。
 英雄は、英雄以外のなにかから、あがきながら生まれて来る。 それがルール。
 英雄は猫からも人からも生まれる。男からも女からも、魔王からも盗賊からも。
 世界が求めれば、それは誰からでもどこからでも、 絶望と悲しみの海より一代限りの存在として生まれ出る。
 ……その通りだ。人族の者よ。その通りだ。
 拳聖ジョニーは不良だった。 魔王シャスタは詐欺師だった。道真公は法螺吹きだった。
 だが、知る通り、運命を決める宝剣は彼らを選んだ」

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 瀬戸口は一人で教室を出た。顔は、まったく面白くない表情。
 自分でも訳の分からない怒り。

「くそ、なーにがカラスの婿だ。押し掛けたのは小梅の方だろうが」
 瀬戸口は一人悪態をついた。
「そもそも、婿になったのは鬼だ。ミッチーじゃない。ふざけるな。ああ、もう、なんでこんなに腹が立つんだ」




●来須くんのガンパレード
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/gp/kurusu.html

 ブータを抱いて目をつぶったその瞬間、漆黒の影が横切った。

 正拳一発でキメラの頭が、変な方向に捻じ曲がった。そのまま、頭をつかまれ、ねじ切られる。

 ののみタイプが長い睫毛を開いて顔をあげると、そこには、自分の盾となって戦うたった一人の戦士がいた。
 声もなく、音もなく、その脚と拳で敵を打ち倒す、炎に照らされた漆黒の戦士。
 それはどこかで見たような風景だった。
 それが父から聞かされた、おとぎばなしの風景であるのに気付くまで、しばらくかかる。






●式神の城 七夜月幻想曲 ど かんQ&A 241

Q:リタガンで、エイジャ兄弟が武楽器に 口づけしていますが、ヒト族は武楽器は持ってなかったのでは?
A:シオネに武楽器を与えられてますね。そのシーンを抜粋してみましょうか。

 「俺は、俺はぁ感動したぜ! 兄者ぁ!」
 「我らはエイジャ兄弟、貴方の意気に、心、震えました」

 兄弟は膝をつき、剣を抜くと差し出した。
 「願わくば、我らを貴方の騎士に叙勲してくださいませ」
 「俺たち、一生懸命はたらくぜ」
  シオネは青い瞳を向けた。

 「愉快な奴等。私はお姫様でも、領主でもない。仕官するのなら、別になさい」

 「誰だろうと」
  ファイは、セイは、晴れ晴れとした笑顔を向けた。
 「我らが剣を捧げる者が我が主君。貴方が足を踏み入れたところが、我が戦場」
 「それが、不思議の側の大河の向うでも?」

  兄は淀みなく言った。
 「幽霊騎士として名を馳せましょう」

  シオネははじめて笑顔を見せた。
 「それは無理ね。貴方達はおひさまの光に似てるもの。
 どんなに嘘をついても、せいぜい、黒ね。黒騎士を名乗りなさい、エイジャ兄弟」

 シオネは差し出された剣を輝く拳で叩き折ると、驚く兄弟に言った。
 「なまくらではあしきゆめは切れないわ。ストライダー、武楽器を。火の剣と、氷の剣をこの者達に」




●テンダイスブログ 最後のライト板? エンディング投票
 → 咲良の治療法をもとめて第2世界へ新婚旅行

 http://blog.tendice.jp/200603/article_45.html

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●テンダイスブログ 白いオーケストラ エンディング マジック
 http://blog.tendice.jp/200603/article_48.html

 竹内はそう言うと、大きな袋から2m近い巨大な剣を取り出した。
 剣の腹には文字が書いてある。どんな暗闇も照らす魔法の文字だ。
 苦労して持って谷口に持たせる。 もっとも谷口には、軽い武器だった。
 3本の短剣とふくらはぎまでのブーツ、ランタン。乾パン。チーズ、サラミ。
 そして見事な白馬。賢そうな目をしたその馬をエクウスと言う。山口が登校に使っていた馬だった。

「いや、だからこれはなんだ」
「向 こうに着いたら腰布に変えてください。ここに入れておきます。
 あ、あと、これポーションです。10本あります。一本で半月は元気で過ごせます。
 ポーション が切れる前に絶望の密林を抜けて死の砂漠を越えて神々の古戦場を抜けて銀の谷へ行ってください。
 そこには魔術師がいるはずです。どんな病も治す薬を持っ て。いいですね。貴方がありえないぐらい強いのは、このためなんですからね」

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●電網適応アイドレス 生活ゲームログ 銀の谷

 http://i-dress.at.webry.info/200801/article_3.html
●電網適応アイドレス 生活ゲームログ 白の幻
 http://i-dress.at.webry.info/200801/article_8.html
●電網適応アイドレス 生活ゲームログ 青の歌声
 http://i-dress.at.webry.info/200802/article_3.html
●電網適応アイドレス バロとの再会
 http://i-dress.at.webry.info/200807/article_2.html

まき:
 あ、ゲーム前に質問があります。
 24日のゲームで今日子さんにぶん殴られて以降の私たちの状況はどうなってるんでしょう?
 質疑のちにゲームしようと思ってましたが、予約が思ったより早く入りまして(汗

芝村:今は不定の結果だ。どこかの世界で再構成されている
まき:とすると、今日ゲームしたらそのどこかの世界でしょうか? それとも「小説アイドレス」の先の内容で決まるとかでしょうか??
芝村:ダイス降ってきめる
まき:わぁ。そ、それは今でしょうか??(汗
芝村:ええ
まき:ああ、ではお願いしてよろしいでしょうか。
芝村:はい。では1d6どうぞ
まき:1d6
芝村 の発言:[mihaDice] まき : 1d6 -> 2 = 2
まき:(どきどき)
芝村:銀の谷だね
まき:銀の…谷?えっと…それは何処の世界なんでしょう?(汗
芝村:さてね

/*/

石塚:「……えーと」
石塚:「とりあえずどうしよう。服がないということは、世界移動して、たぶん、若い番号の世界だ」
まき:目を石塚さんからそらしながら 「身につけられるもの…なにかないかしら(汗」 周りをきょろきょろしてみます。
芝村:ないねえ。あるのは銀色の花。
まき:花しか咲いてないんでしょうか?他に草木は…
芝村:見えない
まき:「若い番号の世界…ああ、第2世界とかそういう…」(ダイスは2だったから)
石塚:「だとしたらすごいんだけどね」
まき:「そうね、第4より若い世界は…よくわからないし…」
石塚:「……」
まき:「うーんと、どうしよう??」
石塚:「第二世界はないな。既に滅亡しているはずだ」

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芝村:煙が見えるよ
まき:「あれ、人家かしら?少なくとも火はある?!」 指差して。
石塚:「隠れていて」
まき:「あ、はい」
石塚:「まあ、なんというか、僕がいってくる」
石塚:「夜まで戻ってこなかったら、死んだと思って」

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芝村:石塚はあわてて走っていった
芝村:数名の男が石塚を見てびっくりしている
芝村:男は歌を歌った。石塚に服が現れた
芝村:石塚は何か説明している
まき:様子を見守っています。
芝村:まきの服が生成された。
まき:「あ…」
まき:「石塚さん…もう大丈夫かも…なんか凄いね」 驚いて服を見ながら。
芝村:石塚は戻ってきた。
石 塚:「親切な人でよかった。英語はできる?」
まき:「え、英語?ああっと…あんまりできないけど(汗)」
石塚:「そうだよね」
まき:「…って、英語喋る人たちなんですか?」
石塚:「いや、アングリックだけどね」
石塚:「リンオーマだよ。知っているかどうかしらないけれど」

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まき:「ここでは私だけが地べたすりだから…」
石塚:「それが?」
まき:「気にしないで、いいの?」
まき:「オーマの敵だって…いや、敵にも満たない存在だって…」
石塚:「まあ、確かにそりゃそうだけど。僕は随分後の時代だからなあ」
石塚:「セプテントリオンの取引相手には人間もいるよ?」
まき:「あとの時代?えーと、ここにいらっしゃる皆さんは、昔の方々?」
石塚:「時代はまだわからないね」
石塚:「でもまあ、確かに過去かも」
石塚:「あるいは、過去の影か・・・」
まき:「格好だけなら…そうだよね。」
まき:「過去の、影?」
石塚:「うん。実体はない。最先端でない世界線」
まき:「ここがもし第二世界なら、過去かなぁ。レムーリアでも随分昔かもしれない、よね」


/*/

バロ:「よいかな?」
石塚:「どうぞ」
芝村:入ってきたのは黒い鎧の男だ。座って、火をおこした。
まき:「あ…こんにちは」 ぺこりと頭を下げて
バロ:「……お邪魔だったかな。わははは。まあ、火を寄越すので、許されよ。あと直ぐ寝るんで。まあ、その後にでも」

/*/

石塚:「僕たちを殺さないんですか」
バロ:「まだ黄金戦争ではないな。それに先代のシオネは白だった」
芝村:外見はバロだね。いつもの。少し若い。
まき:「火を、ありがとうございます」おおう!>若い
バロ:「青に行かれるか」
石塚:「はい」
バロ:「……そうか」
まき :(きょろきょろと、ふたりの顔をみくらべてます)
芝村:石塚はまきを引きよせて抱きしめた。
石塚:「こうすれば、おわかりでしょう」
バロ:「そうせんでもわかるな。まあ、見た瞬間から。出来てるように見えた。まあ、いい。青の青は俺の弟だ」
まき:「……」 照れまくり…
バロ:「人間を愛するとはまた、リンにしては豪胆だな」
石塚:「だから二人で、逃げてきているんです。火ももたずに」
まき:(黙って話を聞いています)
芝村:バロは笑った。
バロ:「青にならずと黒にでもなるか。俺も翼がないくらいで食料にするのはいささか哀れと思う派だ」

/*/

石塚:「あ、ええと、それで今日は、谷を脱出しよう。うん」
まき:「やっぱり谷にはいない方がいいの?白の人たちが来るから?」
石塚:「地べたすりへの対応はひどいものだよ。まあ、控えめにいって殺されるね」

/*/

石塚:「……とてつもなく大昔に、助けられたことがあります」
まき:「バロさんにとっては遥か昔の話だと思うんですが…」
まき:「その節はありがとうございました!」ぺこりと頭を下げます
バロ:「はて」
芝村:バロは難しい顔して自分の額をつついている。思い出そうとしているらしい。
まき:「えーっと……どのくらい昔なんだろう?」 石塚さんの顔を見て
まき:「銀の谷の洞窟で、えーっと」
石塚:「1000年以上前かな」
まき:「覚えてるわけ、ないかな、やっぱり…」
まき:「でも、本当に助けていただいた事には間違いなく。ありがとうございました」>バロさんに向かって
バロ:「銀の谷。というか、銀の谷で助けたやつらにそんな長生きする奴が・・・」
バロ:「おお。気にするな。俺は覚えていない」
まき:「アーさんに、この時代に戻していただきました。この時代が私たちの本当の時間で、あのときは魔術によって銀の谷に飛ばされたので……」
バロ:「おー」

/*/

まき:「私は、ラヴィなんですか? 鍋の国の、まきじゃないんですか?」(ゲシュタルト崩壊中)
バロ:「鍋の国のまきだろうさ」
まき:「じゃ、なんでバロさんには白オーマのラヴィさんに見えちゃったりするの?」
まき:「そんなことありえないよね? 石塚さん」

石塚:
 「……んーと。難しいなあ。ラヴィと言う形質を受け継いだ人が何万人いるかしれないけれど。
  あ、そうだ。カテゴリーだと思えばいいよ。僕もそういうカテゴリーの一人さ」

石塚:「というか、気にしない気にしない」
まき:「……それ、最初から気づいてた?」
石塚:「僕は猫に中身があったことすら4年気づかなかった男だよ」
まき:「……わかった」
まき:「私は私、でいいんだね」
石塚:「というか、ぜひ、君のままで」


●電網適応アイドレス 生活ゲームログ 契約
 http://d.hatena.ne.jp/akari_k/20080523

ラファエロ:「そ んなに難しい話ではない。あの人が全てに法を設けたとき」 
ラファエロ
:「種族……当時はまだ国が ない……は不干渉とした。例外は二つ」 
ラファエロ: 「例外は二つ、一つ、他の種族を助けることをシオネは禁じていなかった。自分がよくやっていたからな」 
ラファエロ: 「もう一つは愛に関することだ。これについては種族関係なしだ。だから猫は、人の家の中にいる」 
ラファエロ: 「……シオネ自身が種族違いの恋をしていた。リンなのにな」 
緋璃
:「リンはリン同士で結ばれるのが 通例、だっけ……?」 
ラファエロ
:「……そうだ」




●アルファシステムサーガ P118 ラキ

 シオネ・アラダの居城アモノガヘノを守る任を負った歌い手の一人。玖珂光太郎の原型にあたる人物でもある。
 青にして群青のキラと対になる存在。

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●アルファシステムサーガ P143

 玖珂光太郎と瀬戸口隆之は、青にして群青のラキとキラの転生体。
 ともに赤の血が入った二重星のアラダである。

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●式神の城SS(四)
 http://www.alfasystem.net/game/shiki/ss/ss_04.html

 玖珂は時々夢を見るときがある。

 ひどくはにかみやの娘が、自分に微笑んでくる夢だ。
 玖珂も女は嫌いではない。どう扱って良いか分からないだけの話である。

 夢の中での玖珂は、いつもうまくいっている。
 どうやったんだ、教えてくれ。夢の中の自分にいいたいときもあるが、どういうわけか夢を見ているときはそのことを忘れているのだった。

 夢の中の娘は、今やあられもない格好をして玖珂に顔を近づけていた。
 はにかみやがそんなことするのかと思わなくもないが、まあ十五の少年の頭の中身としては妥当な内容とも言える。

 右手が、無意識に剣鈴をもとめて動いていた。

 次の瞬間悲しそうな白にして白亜の顔が浮かんだ。万の色旗が立つ戦場での再会だった。
「お前もそうなのか」
「オゼットとあまり変らない、幼い方だ。楽しいことがあっても良いと思う」
「この変態め。第7世界に落ちろ」
「はあ?」

 青にして群青ならぬ玖珂光太郎は目を見開いた。机に突っ伏したまま、その頭を教師の拳で抑えられていた。


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●漫画:式神の城 ねじれた城編 5巻 (芝村裕吏 ワンワン帝国宰相の文章より)

 白にして白亜という人物がいる。
 小夜の、前世みたいなものである。正確には小夜の原型である。
 原型をオーマと言う。今、ここにある全てのものは大昔にその原型があって、その劣化したコピーが繰り返し流れているというのが
無名世界観における歴史のありようである。

 前世からの恋と言えば聞こえがいいが、実際は小夜が死んでザサエさんと融合した時に融合によってより原型に近くなった結果、
一時的にせよ白にして白亜が出現したと、言える。
 乗っ取りである。かつてうまくいかなかった原型の悲しみを、白亜がここで晴らしていると、言えなくもない。
 つまり原型では白にして白亜と青にして群青のラキは結ばれなかったわけだ。

 オーマはおおよそにして(魔力がほとんどなくなった式神世界と比較して)1000倍を越える魔力があるので、ヤタ100連発(次巻登場)は、
あれは白亜が手を抜いた攻撃であるといえる。

 オーマ同士が戦う場合、同じ絶技は2度使われない(パターン解析されて逆襲される)
また、同じかそれより弱い絶技は使われない(リューンの流れに逆らうことは出来ない)ために最初はこの程度の小さな技で戦われるケースが多い。

 本格的な戦いがはじまるといくつもの世界を崩壊させながら戦いが行われる。

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●式神の城3 ロジャー&バトゥ

風の人:傷ついた風が吹いています。触れれば血が流れる、そんな傷の風が。
ロジャー:自由なる風の人・・・・・・!?
バトゥ:知り合いか。
ロジャー:いや、伝説だ。赤にして群青、青にして群青の妻。黄金戦争で地べたすりを守って死んだ・・・。
風の人:私の事を覚えている人がいるのね。
ロジャー:僕は尊敬していた。そのあなたと戦う事になろうとは。
風の人:今の私は死霊・・・、ただの影でしかありません。遠慮する必要はありません。さあ、行きますよ。

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●式神の城3 ミュンヒハウゼン&エミリオ

ゆかり:何故私たちが飛べるのか、わかる?
エミリオ:・・・古い血のせいだ。昔、空を飛ぶ種族があった。
ミュンヒハウゼン:世の中には気合だけでどうにかされておられる方もいますが。
 血も伝統も、青空の前には関係ありますまい。地獄へお行きなさい。

ゆかり:え? なんで? なんかこの人強い!
ミュンヒハウゼン:ゆっくりお休み下さいませ。

エミリオ:・・・あなたは、本当に執事?
ミュンヒハウゼン:万能執事でございます。
エミリオ:あなたも古い血を?
ミュンヒハウゼン:・・・そんなもの、価値はございません。どうぞ天空を翔ける喜びだけを胸に、人を分け隔てる事をお止めなさいませ。

風の人:東の風が吹いています。すべての闇を吹き消すような。そんな悲しい一陣の風。あなたは踊る人形について戦った悪鬼の一人ね。
ミュンヒハウゼン:左様でございます。世の美しさに魅せられ引かれ、かような所まで来てしまいました。
風の人:どんなのかしら。
ミュンヒハウゼン:美女の涙。

風の人:空を飛ぶのは幸せね。地べたすりの悲しみはいかほどでしょう。
ミュンヒハウゼン:その傲慢さがオーマを滅ぼしたのです。奥方様。
風の人:滅んだのは青が裏切ったせいですよ。いえ、シオネが裏切った。私の夫も、私を捨てて地べたすりを愛した。
ミュンヒハウゼン:・・・・・・・・・。
風の人:そうでしょう? 四方を守る東の風。青にして深青の大嘘つき。
ミュンヒハウゼン:すべては完全なる青の前に、青くなるしかないのです。それだけを覚えて地獄に行きなさい。

風の人:ラキ・・・・・・・・・。

エミリオ: ・・・あの人と、何を話していたの?
ミュンヒハウゼン:今を生きる人々には、必要ない事でございますよ。
 実際何も覚えておく必要はないのでございます。我らはそう、忘れられるために戦いました。

カガチ:古い伝説がある。
 最強の幻獣、踊る人形がいとかしこき姫の説得で人間側についた時、それに従った四柱のアラダがいた。
 なあ、東の風を司るウォータードラゴンは、その後何処に行ったのだろうな。

ミュンヒハウゼン:・・・ウォータードラゴンの守備範囲は東の風ではございません。東の風八十八万を司るのはサンダーバード。
カガチ:灰にはっては新たな翼を得てまた蘇る、稲妻の鳥。ウォータードラゴンを凌ぐという・・・。
ミュンヒハウゼン:ただの女の拳に負ける、その程度の強さでございますよ。
 強いという事は、そんなものではございません。それだけを覚えて地獄に行かれませ。

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●2007年9月23日 生活ゲーム 12:00 〜××大作戦〜ヒオ、大人の階段をまたのぼっちゃうよの巻
 http://idressplayer.at.webry.info/200709/article_2.html

 荒風ヒオ:「あなたの幸せな瞬間てどんなときかな?」
 芝村:アスタシオンは貴方が話し飛ぶのが理解できかねるようだ。
 アスタシオン:「敵を殺したときだ」
 荒風ヒオ:「ふーん、私もそんなときあったかなー いまはとっても嫌な感じするけど」
 芝村:アスタシオンは黙っている。貴方の言葉に興味を抱いたようだ。
瞳の光を和らげて、貴方を見ている。
 荒風ヒオ :「ただ力で敵と思ったものをたたき伏せてた。でもね。それやるうちに心が、壊れそうになったことがあるの」
 アスタシオン:「心が弱かったのだな」
 荒風ヒオ:「うん」
 芝村:アスタシオンは返答に窮した。貴方を見ている。
 荒風ヒオ:「弱かった。誰かのためにと思っても心が叫びをあげ続けた」
 荒風ヒオ:「アタシ、戦ってるとき別人みたいに殺しまくるんだ。笑いながら。それを思い出すと、、ね」
 アスタシオン:「白のようだな」
 荒風ヒオ:「そうなの?」
 アスタシオン:「白は、戦うときに笑う。戦いでないものも、戦いと言う」
 荒風ヒオ:「へー豆知識。ふんふん」
 アスタシオン:「黒も戦いを笑うが、向こうの気持ちは我々にも理解できる」
 荒風ヒオ:「どんな気持ちなの?」
 アスタシオン:「黒は、強い敵と戦うときに喜びを感じる」
 アスタシオン:「我々は笑わない」
 荒風ヒオ :「いいな。私もそんな風に戦いたい。
心を強くする方法ってなんだろうな
 芝村:アスタシオンは寂しそうな顔になった。
 アスタシオン:「だが、そんな緑も、少なくなった。心を強くする方法など、あれば緑も使っていたろう」
 荒風ヒオ:「力でねじ伏せるだけが戦い方じゃない気がするんだ」
 芝村:ヒオの言葉を、アスタシオンは考えている。
 荒風ヒオ:「アツィ、シオネって人についって調べたことあるんだ。そんな方法を探すために」
 荒風ヒオ:「でもよく分からなかった。情報結構少なくて」
  アスタシオン:「伝説だ」
 荒風ヒオ:「伝説?」
 アスタシオン:「悲しみの聖戦を生き残ったアラダは多くない」
 荒風ヒオ:じっとききます。
 アスタシオン:「全てのオーマを束ねる、聖女だったという。青を生み出した者」
 アスタシオン:「黒オーマの一部が裏切り、新たなオーマを作った」
 アスタシオン:「私はシオネを、最強のアラダと推定している」
 荒風ヒオ:「最強………その根拠は?」
 アスタシオン:「兄は別のことをいっていた気もするが、幼い頃だ。覚えてはいない」
 荒風ヒオ:「そうか。アタシは彼女のように戦えたらと思ってる。あの盟約、かなえてみたい」
 アスタシオン:「なるほど。アーラ・オーマになるのか」




タイトル : Re[2]: 晋太郎=シオネ・アラダ?より考察 ▼ △ □
記事No : 21713
投稿日 : 2005/06/21(Tue) 14:58:35
投稿者 : 芝村@絢爛舞踏祭デザイナー 

(以下は抜粋になります)

2.
・瀬戸口(祇園童子)はAのグライダーである。
・瀬戸口はキラの転生体である。
・以上より、キラはAのグライダーと考えられる。
・対となるラキもまたAのグライダーと考えられる。
・ラキの転生体である光太郎もまた、Aのグライダーと考えられる。

 結論2――光太郎は、Aのグライダーである。

「結論4までは完璧ですね。でもその後がトンデモに流れています。悪い癖ですなあ。」




●テンダイスブログ リターントゥ神々の宴(8)
 http://blog.tendice.jp/200609/article_2.html

「昔、原初の人間を探したことがある。本物の人間、最強の魔術的人間を」
 英太郎はぽつりと言った。
「神話にあらわれる最初の人間ですね。それは最初の人神族でもある」
 晋太郎はそう返事した後、英太郎を見た。

「オリジナルヒューマン。それがあればと思う。それがあれば、あるいはお前も癒すことも出来ように」
「”僕”は弟が幸せなら、いいんです。それに原初の人間なら僕は知っている」
 英太郎が誰何する前に、晋太郎は微笑んで言った。
「オリジナルヒューマンはすべての原型。言うならば編む前の、染める前の毛糸です」
「それが?」

 晋太郎は祖父に笑って見せた。
「僕の弟は純潔で、無垢だ。ひょっとしたら、月子ちゃんもそうかも知れない。ね? おおじいちゃん。僕は確かに、原初の人間を知っているんです」

 若い天才魔術師が出した途方もなく平凡な答えに、英太郎は目を開いて驚いた後、続いて優しく笑ってその肩を抱いた。
 そしてわしの孫はどんな大魔術師よりも才能があると言って褒めた。

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●式神の城SS 弐

 http://www.alfasystem.net/game/shiki/ss/ss_02.html

「あれは、死と飽食の悪霊?」
「今はあの少年を守っているわ」
「そんな。あの人には魔法の力が見えません。術式だって目茶苦茶で」
「原初の魔術師は、呪文や魔法陣を使って契約を結んだわけではないのよ」
 玖珂の拳に、食人鬼の手が重なった。
「原初の魔術師は、ただその態度だけで精霊を従えたわ。契約は精霊が契約したと認めれば発効する。……例え言葉がなくとも」

 美しい女食人鬼は、玖珂を守るようにして実体化した。
 長い肉切り包丁を両手に持ち、切れ長の目で敵を流し見て、次の瞬間には駆け出した。
 人形達の首を肉切り包丁が撥ねていく。

「精霊は認めた。玖珂は魔術師よ」
 ふみこは宣言するかのように小夜に言った。

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●式神の城3 石神迷路の解 P263

「光太郎さん!」
 呼びかけると光太郎は小夜の方を見た。仁王剣は自分で引き抜いたようで、刺さってはいない。
 ただそれも考えてみれば、とんでもないことだった。
 小夜は急いで光太郎のそばに寄り添い、その傷を見る。
 普通ならどう考えても致命傷の傷には、今は手が添えられていた。それでリューンが活発に活動しているのを、小夜は光として見る。
 どうやら治療をしているらしい。
「大丈夫なのですか?」
「ああ……おそらく」
 光太郎は傷口に手を当ててるだけだった。この治療は絶技の類ではない。
 光太郎がこんなところでは死ねないと、そう思っているだけという風に見える。ただそれだけで、リューンたちが勝手に光太郎の傷を治していた。



●電網適応アイドレス 生活ゲームログ 青の歌声
 http://i-dress.at.webry.info/200802/article_3.html

石 塚:「ガンプ・オーマは本来あるべきところにもどす絶技があるとききました」
楽士アー:「盛大に痛い拳骨だけどね。たしかにある」

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電網適応アイドレス テンダイスブログ エンディングセレモニー T12  外交条件、外交戦リザルト
 http://blog.tendice.jp/200808/article_23.html


「ほな、やりまひょか」
「なにを?」
 ヴィクトリーは首の蛇を見た。この少年、蛇も好きである。命のあるものがたいてい好きなのだった。
 家ではご先祖のようにヤギを飼っている。この少年は、文句なく豊かな生命の中を生きていた。
「再生や。本当の不死を、教えまっせ。それは死なないことやない」
 蛇神は二股に分かれた舌を見せた。
「また春が来ることや」
 蛇神は天を仰いだ。シオネ・アラダの首に巻かれていた時のように。ヴィクトリーも、釣られて上を見た。
「ということできりきりその青い珠ひんのんで大地たたかんかい」
「えー」 苦い顔するヴィクトリー。青い珠は、あんまりおいしくなさそうだ。
「えーやい。びーでもない」
「あーもーこの蛇かわいいなあ」
 ヴィクトリーはヴィクトリーだけが言える感想を述べると、青い珠をごくりとのんだ。レモンの味がした。
「キスの味がする!」
「自分、ほんまのアホやな」
「うるせぇ!」
 地面を叩くヴィクトリー。遠くで駆けつけたサクがあーとか叫んでいたが、ヴィクトリーは無視した。
 正確には、起きた現象にびっくりして、反応を忘れた。
 叩いた傍から緑が蘇り始めていたのだ。蛇は嬉しそうに尻尾を振った。
「さ、大地さん。健康になるときやで、わしやわし。おっちゃんや。また春がきたで。円を描き、先祖を奉って踊るときや」
 蛇は軽やかに歌った。それは脱皮を繰り返し、冬には眠り、永遠に生きて旅をする蛇だ。
「いつかはシオネが戻ってくる。それまで円を絶やしたらいかんのや。円の切れ目が縁の切れ目」
 蛇はそういうと、綺麗な幻の翼を広げた。それこそは蛇がシオネから受け継いだ心の形であった。

「跳べ!春だ!」(spring! It's spring!)
 何も起こらなかったが、蛇はあきらめはしなかった。

「跳べ!春だ!」
 今度も何も起こらなかったように見えたが、少し違った。ヴィクトリーが息を吸い込んだのだ。

「跳べ!春だ!」
 一人と一蛇が言うと、双葉がFVB全域で生えた。

「跳べ!春だ!」
 鳥が再び舞いはじめた。蟲も、木々も。国名どおり国の全域で花が咲き出した。

「跳べ!春だ!」
 多くの死者の骸の下から、冬眠していたように沢山の男女が起きだした。

 蛇とヴィクトリーは手と尻尾を取って円を作って踊りだした。
 夕日だったが、青空に見えた。

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●電網適応アイドレス テンダイスブログ 小説アイドレス ライチ伝
 http://blog.tendice.jp/201111/article_4.html


「おお、よく出来ていますねえ」
 あさぎの後ろから現れ、あさぎの人形に触れるライチ。人形は動作を停止する。
 それは触れたものを、ありとあらゆるものを健全な状態へ導く再生神の絶技だったが、
 絶技使いであるあさぎも、サトルでさえも、それが余りにも自然な動作過ぎて、絶技が使われたことに気づかなかった。



●電網適応アイドレス 
護民官慰労座談会
 http://youmi.org/gomin/arcives/kaizen/file/1207839300.txt

芝村:では誰か質問してくださいな。
深夜@後ほねっこ男爵領:?:帝国の歴史=
芝村:帝國は共和国からわかれた、というのは大丈夫かな。

九重 千景:
 Q:帝国の領土ってどれくらいあるんでしょう?
 テラ領域とかペルセウスアームとかあるらしい、というのは聞いたんですがそれ以外にもあるんでしょうか?
 直接歴史じゃないかもですがっ

芝村:
 A:帝国領土はまだオリオンアームにはほとんどありません。

深夜@後ほねっこ男爵領:いえ、帝国の歴史とか全然なので、たった今、知りました。<共和国から分かれた
九重 千景:共和国の方が古い というくらいしか知らなかったですね…
双海環@芥辺境:はい、知ってました>帝國が共和国からわかれた
リバーウィンドさん:どこかでお聞きした覚えがあるなぁ。我が王からだったか
芝村:共和国の中でも、特に急進的な派が分かれて出来たのが帝國だね。

青にして紺碧@よけ藩国法官 :
 Q:共和国から帝国が分かたれたのは、何年前になるのでしょうか。かなり昔と思うのですが

芝村:
 A:そだね。1000くらい。
1000年ない。

深夜@後ほねっこ男爵領 :
 Q:共和国内の急進派とは、どのような人たちだったのでしょうか?

芝村:
 A:英雄派といわれる存在だよ。
 A:つまりはそう、世界の滅びを防ぐのは英雄だって考えだね。

深夜@後ほねっこ男爵領:#なるほど
九重 千景:…だからヒロイズムなんですか?
双海環@芥辺境:♯だから、帝國はヒロイックを重んじるのか
芝村:うん。

九重 千景:
 Q:その頃の「滅び」とは具体的な脅威がなにかあったのでしょうか?

芝村:
 A:黄金戦争だね。
 A:先の時代ね。

リバーウィンドさん:
 #黄金戦争期に分化したのですかー

芝村:
 ええ。

双海環@芥辺境 :
 Q:帝國の初代皇帝はどのような方だったのでしょう?

芝村 :
 A:冬のツルギ 英雄の一人だ。

リバーウィンドさん:
 Q:冬のツルギ氏はオーマだったのでしょうか?

芝村:
 A:オーマではない。
 A:オーマだった時期もあるけどね。

深夜@後ほねっこ男爵領:
 しかし、そう考えると、黄金戦争が終わった後も分化したままというのは解せませんね。何か理由があったのでしょうか?

芝村:
 黄金戦争で、共和国は足の引っ張り合いでまともに機能しなくてね。

青にして紺碧@よけ藩国:
 Q:冬のツルギ氏がオーマでなくなったのは、英雄派の思想から外れる物ではないのですか?

芝村:
 A:英雄派だからやめたのさ。シオネに味方した。

芝村:
 で、それ以降帝國は、英雄思想に突っ走って、戦闘に強い国をつくっていたつもりだったが。
 まあ、長い歴史で衰退してたというのがシーズン1だね。

九重 千景:#黄金戦争とわんわん帝国って全然違う世界の話だとおもってました
リバーウィンドさん:#光の軍勢と帝国が関係あるというお話を聴いた覚えがあります。
芝村:そだね。

深夜@後ほねっこ男爵領:
 Q:本来、黄金戦争を戦う為に作られた帝國が、黄金戦争後も残った理由はなんなのでしょうか?

芝村:
 A:共和国に戻りたくなかったからさ。
 A:さげすんでた、がいいかな。
 まあ、さげすんでたつもりが今は逆だから、因果はまわるね。

深夜@後ほねっこ男爵領:
 Q:蔑んでいた理由は、やはり黄金戦争時に、ろくに身動きがとれなかった所為でしょうか?

芝村:
 A:そだね。お金だマイルだで。

リバーウィンドさん:
 Q:共和国から帝国に分化する前には、共和国にも犬妖精さんがおられたのでしょうか?

芝村:
 A:ええ。

リバーウィンドさん:
 Q:帝国分化時に、共和国に残った犬妖精もおられたのでしょうか?

芝村:
 A:いるねえ。

リバーウィンドさん:#となりますと、逆に帝国に移籍された猫妖精さんもおられたんでしょうなぁ
芝村:ええ。いまもそうだね。

リバーウィンドさん:
 Q:そもそもにゃんにゃん共和国とわんわん帝国の名前の由来はなんだったのでしょうか?

芝村:
 A:なんとなく。正式には単に帝國と共和国。

リバーウィンドさん:#おおぅ、わんにゃんは正式名称じゃなかったんですかー。存じませんでした。
青にして紺碧@よけ藩国:#なんと!?>わんわんとにゃんにゃん
芝村:銀河レベルだからね。どっちも。特に固有名詞ないんだよ。

リバーウィンドさん:
 Q:共和国の成立時期はいつでしょうか?

芝村:
 A:4000年前くらい。

双海環@芥辺境:
 Q:共和国の初代大統領はどんな方だったのでしょうか?

芝村:
 A:シオネ・アラダ

リバーウィンドさん :
 Q:共和国初代大統領だったシオネ・アラダは、先代のシオネ・アラダでしょうか?

芝村:
 A:いいえ

リバーウィンドさん:#あぁそうか。4000年前ですもんねぇ……
芝村:ええ。先代は1000年前だ。シオネを助けて戦った者が帝國の原形なんだよ。

九重 千景:
 #ちょっと最近の話も聞きたいので
 Q:伏見卿やになし卿が王女の義弟とされているのは何故なのでしょう?

芝村:
 A:帝國では、レベルの高そうな国は帝室に組み込まれるのさ。
 だから、伯爵でも有望そうなのは子爵になるんよ。

リバーウィンドさん:#そういえば帝国爵位の序列を知らない私……
芝村:位階ね?
リバーウィンドさん:はい。
芝村:公爵(王)、侯爵、子爵、伯爵、男爵、騎士

リバーウィンドさん:ありがとうございますー。子爵が伯爵の上になるんですね。
芝村:中国や日本では逆だね
リバーウィンドさん:公侯伯子男で覚えておりました。
芝村:子爵は帝國では王家のつながりでもらうんよ。

リバーウィンドさん:
 Q:となりますと、子爵の子は王家の子息(あるいは息女)という意味に?

芝村:
 A:王家のつながりだね。
 だから、子爵を与えられた越前、伏見は王家つながりで義兄なんだよ。

深夜@後ほねっこ男爵領:
 Q:シオネが共和国の初代大統領になったのはどういう経緯があったからなのでしょうか?

芝村:
 A:ネットアイドルだった。

深夜@後ほねっこ男爵領 :
 Q:汎銀河ネットワークのアイドルとかそういうことでしょうか?

芝村:
 A:アイドレスの世界はネットが進みすぎた世界なんだよ。
 A:で、そこではまともな国がなかった。ネットで国作ってる奴はいないわな。
 民主主義というにはあやふやな、猫のようにその日の気分で動く民衆の群。それが共和国の原形だ。

みぽりん@神聖巫連盟:#ああ、だから「アイドル」なんですね。
芝村:共和国は伝統的に声が多い奴がいいとされる。まあ、そういうもんだ。

みぽりん@神聖巫連盟:
 Q:声が多い=よくしゃべる ですか?

芝村:
 A:NWCやナンバリングイベントみたいな多くの人が見るところで活躍する。
 いまもそうだね。共和国は雪崩打って動く国だ。
 帝國は、そう言うことはないね。帝國は大抵、勝手に動くから。帝国が一丸となる戦いはかつてない。
 帝國が唯一、幅広く協力するのは、王女が動いてる時だね。帝國は文句なく王女の無謀さこそを熱狂的に支持している。
 そりゃほねっこの王みりゃわかるだろ。

深夜@後ほねっこ男爵領:#そうですねぇ
芝村:うん。帝國の王は多かれすくなかれ、王女が元気ないとへろへろで、逆だと力をつける。
リバーウィンドさん:#成立当時の共和国がそんな感じだったんでしょうか。
芝村:共和国はそれほどでもないね。
リバーウィンドさん:なのですかー。ネットアイドルが大統領になったということで、そんな感じだったのかいなぁと思いましたが。
深夜@後ほねっこ男爵領:#何となく、ガンダルフを大統領に運動を思い出す僕がいます。<シオネ、実はネットアイドル兼共和国初代大統領
芝村:ははは。

リバーウィンドさん:
 Q:共和国はオリオンアームとテラ領域で大統領が別なようですが、帝国でもオリオンとテラで帝室が分かれてたりするのでしょうか?

芝村:
 A:ペルセウスアームに皇帝がいて、新興のオリオン側に王女を置いて副帝としてる

みぽりん@神聖巫連盟:
 Q:ペルセウスアームの皇帝が、ぽち王女の実の父ですか?

芝村:
 A:帝國には実父なんてないよ。

みぽりん@神聖巫連盟:#実父はないですか。
芝村:ええ。ネットの世界では血筋はあまり強く出ない。
みぽりん@神聖巫連盟:#ああ、なるほどです。
双海環@芥辺境:♯有望そうな子を養子でもらってくるのかな?
芝村:まあ、帝國は血筋=ヒロイックでみるから。ポチのあとを継ぐのは、血筋ではなく、その志なんだよ。
みぽりん@神聖巫連盟:#志ですか。
芝村:そだね。帝國では、夢を受け継いだ人が後を継ぐ。帝國の存続・財産分与法ではそうなってる。
リバーウィンドさん:#成文法になってるんですねぇ
深夜@後ほねっこ男爵領:#まさにヒロイックですね
双海環@芥辺境:♯夢を継ぐのが後を継ぐか……いいですねー
青にして紺碧@よけ藩国:#まさにヒロイックだ
芝村:まあ、帝國の帝國たる所以だ。
芝村:と、志は高いんだがいまのていこくはなあ……
深夜@後ほねっこ男爵領:#あははは(乾ききった笑い #頑張らないとなー
九重 千景:(汗
芝村:まあ、ようやく回復期に入ったね。
芝村:旅にでていたポチがもどり、になし藩が復活し、宰相の心に無限の父性が復活した。

九重 千景:
 Q:上記のお話を聞いた限り藩王交代などもアイドレスルール上できるんでしょうか? 俺の夢と国をお前に任せるぜ…みたいな。

芝村:
 A:ええ。ゲーム通じて作れる。

九重 千景:ゲーム通じて…ですか。函でそういう設定を作る…で合ってますか?
芝村:ええ>九重

みぽりん@神聖巫連盟:
 Q:全体像はペルセウスアームには「共和国」はなく、テラ領域には「帝國」はなく、
 新興地の「オリオン」には「帝國、共和国」があるのですか?(すみ、ません、少し混乱しています)

芝村:
 A:いいえ

芝村:まず、アームってわかるかい?
みぽりん@神聖巫連盟:腕、ですか?>アーム
双海環@芥辺境:♯わかりません。領域みたいな認識をしていました>アーム

芝村:
 まず、銀河って渦なのね。渦を拡大すると、腕に見える部分があるのね。それが、アーム。
 銀河は中央の星が集まった密集地域と、いくつかの腕で成立している。
 で、その腕の一つがペルセウスアーム。その隣が我々テラ(地球)を含むオリオンアームだ。
 アイドレスの歴史はペルセウスアームで刻まれてきた。
 で、ターン0、アプローで新たにオリオンアームに繋がるリンクゲートがみつかってね
 それが、みなさんの知るアイドレスの始まりなんだよ。

深夜@後ほねっこ男爵領:#なるほどー……
みぽりん@神聖巫連盟:#ああ、だから「国づくり」からはじまったんですね
芝村:ええ。

リバーウィンドさん:
 Q:ペルセウスアームでは、居住惑星は複数あるのでしょうか? #オリオンだとテラだけだなぁと思いまして。

芝村:
 A:さあ ネットが進みすぎて、リアルがなくなってるのがアイドレスの大部分だから
 テラ領域は遅れているんで、まだリアルがのこってる。そう言う設定なんだよ。

深夜@後ほねっこ男爵領:
 Q:リアルがなくなるというのは、人格や記憶などをデータに置換してしまっているという事でしょうか?

芝村:
 A:ええ。海0のポーレットとかがそうだね。

リバーウィンドさん:#ある意味みんな電子妖精……
青にして紺碧@よけ藩国:#リアルがなくなる=実体がなくなる、のか。
深夜@後ほねっこ男爵領:#う〜ん、良いなぁ……うっとり。
芝村:全員ベッドで寝たきりかもしれんが。
双海環@芥辺境:♯うわー
リバーウィンドさん:#映画のマトリックスだー
芝村:マトリクス
深夜@後ほねっこ男爵領:←SF大好き
青にして紺碧@よけ藩国:マトリックスを思い出しますね>全員ベッドで寝たきり
リバーウィンドさん:#サイバーパンクですなぁ

深夜@後ほねっこ男爵領:
 Q:まだ、データ体が自己増殖する段階ではないのでしょうか?
 具体的には、データ同士の結合(婚姻と言い換えてもいいですが)により、
 双方の特徴を少しずつ受け継いだ第三のデータ体が生まれるとかそういう感じですが

芝村:
 A:設定国民はふえとるな。

リバーウィンドさん:#個人エースとの間に子供が出来るようですしのぅ
深夜@後ほねっこ男爵領:#ふむふむ
芝村:リアルボディをもたないAIとの恋も、アイドレスでは珍しくない。
深夜@後ほねっこ男爵領:#なるほど、確かに……
リバーウィンドさん:ネットワーク上の情報が主となるアイドレス世界では、AIも生命体としてさほどの差はないわけですか。
芝村:ええ>りばー

みぽりん@神聖巫連盟:
 Qつまり共和国の「オリオンアーム」と「テラ領域」の関係は 同じ「オリオンアーム」という巨大な腕のなかのおとなりさんですか?

芝村:
 そだね。

みぽりん@神聖巫連盟:
 Q:「法官団」が共和国の弾劾裁判に影響を与えることのできる存在だということに驚いているのですが、
 つまり「吏族」「法官」「護民官」はアイドレス上の国連のような存在ということですか?

芝村:
 A:法官は共和国と帝國でそれぞれ分かれてるけど、実質協力してやってる。
 これは吏族も護民官も同じ。まあ、ネットの世界では距離、あまり関係ないしね。

リバーウィンドさん:
 Q:テラ領域でも制度上は吏族・法官団・護民官団は制度上帝国と共和国で別組織なのでしょうか?

芝村:
 A:ええ。

双海環@芥辺境:
 Q:ペルセウスアームにも、オリオンアームの各組織と別に「吏族」「法官」「護民官」組織は存在するのでしょうか?

芝村:
 A:ええ。

リバーウィンドさん:
 Q:生活ゲームに、ペルセウスアームの吏族さん・法官さん・護民官さんをお呼びすることは可能でしょうか?

芝村:
 A:ええ。もちろん。

リバーウィンドさん:
 Q:宰相府の図書館にて、ペルセウスアームの吏族さん・法官さん・護民官さんの主要人物について調べることは可能でしょうか?

芝村:
 A:出来ると思うよ。




●テンダイス記事 主要記事一覧+小説:アイドレス1208
 http://blog.tendice.jp/200812/article_29.html

 電網適応アイドレス

 ”宰相府には女しかいないよ。”
 ”ついでにどれもおっかない”

                設定国民の忠告 80218002

/*/

 宰相府と言う国がある。もともとはにゃんにゃん共和国の”厳父”国という国であり、
 娘ラブ以外の主張らしい主張を持たない国であった。
 それが変わったのは先代の皇帝”アウトマティア”に従い、共和国から帝國に籍を移してからである。

 伝説によれば、いまだただの娘であったアウトマティアはコインを投げて表が出れば、
厳父よ、あなたは私の配下となりなさいと言ったとある。厳父はコインを投げようとしたその腕を握って首を振り、
主よ、あなたは既に私の主ですと言い、かくて斜陽にて細腕にて切り回される帝國は一人の厳父の補佐のよろしきをえて、
後に続く、礎を築いたと、ある。

 その日から、厳父は宰相をなし、厳父国は宰相府となり。
 宰相は制度上藩王でありながら、その名を名乗らず、摂政執政もおかずに皇帝の長き影として。
 あるいはその手がかざす楯として存在することになる。

 ちなみにアイドレスを含む全ての歴史が納められた”ヒストリー”、そして”戦記”には、こうある。

 ”アウトマティアは愚かな娘ではあったが、宰相はもっと愚かではあった。
 だから皇帝領より大きな領土と戦力を持っていたにもかかわらず、その配下に、喜んでなったのだと。”

 ヒストリーで愚かと書かれているその時には最大の賛辞が隠れている。
 おそらくはアウトマティアは、立派な人物だったのだろう。宰相はその立派さに尻尾を振ったに違いない。

 いずれにせよ伝説でも歴史でも、言うことは同じである。
 勝負らしい勝負もなく、深い理屈らしい理屈もなく、皇帝は宰相を得た。その後100年で帝國の建て直しに成功する。

 あるいはもう一つの伝説がある。こちらは共和国での言い伝えだ。
 宰相はアウトマティアの本当の父であり、娘ラブゆえに、下ったと。
 こちらは厳父国が娘ラブを公言してたゆえの後世につくられたやっかみであろう。

 そもそもにして、厳父あらため宰相の娘と言えばアイドレスに生きる女性の大抵全部がそうであった。
 区別をつけるのは、重度の近眼だった宰相の目では困難だったはずである。

/*/

 その宰相府は、今でもそう、アイドレスの女は全て我が娘。おお、娘ラブという国是と態度と生き方を崩してはいなかった。
 先帝は崩御し、代は替わっても、なんら変わってない。世の中には永遠というものもある。
 それは継いだ生き方だ。こればかりは継ごうと思うものがいる限りはずっと続く。

 宰相は、12年前には、まきという一人の娘のためにアイドレス全域を揺るがす大規模戦闘を起こし、
 8年前にはぽちと亜細亜のためにマイルを基軸通貨に引き上げ、4年前はあやのために大きな祝賀を催した。

 宰相府の歴史は、父の、たいてい間違った愛情表現に色どろられている。
 ありていにいって振り下ろされる拳がでかすぎて木っ端微塵になる、そんな愛情表現だった。

 もちろん父は、そんなこと気にしないのである。不器用で間違っているし、肝心の娘からは恥ずかしがられる。それで、いい。
 宰相はかつて、その生き方をとがめた貴族の一人に、こう答えたとされる。
「器用で正しく誇るべき父から、一体子供は、何を学ぶんだ?」
 そして続けて言った言葉は、貴族をして完全に匙をなげさせた。
「俺を見て正しさを論じるな。俺の娘の輝きを見ろ。宝石を磨いた布にまで美しさを期待するな」
 もちろんなにもかも間違っている。だがそれが、宰相府の生き方だ。




 ・アイドレス質疑掲示板 水の塔
  http://cwtg.jp/qabbs/bbs2.cgi?action=article&id=3195

 緋璃:水の塔って結局どんなものなんでしょうか? 生活ゲーム等で見た限り、葬送のイメージがありますが
 芝村:星見の塔の一つだね。死者を送り出す
 緋璃:なるほど
 芝村:他の世界に死の情報を流さないと、おかしくなるからね。坂の神のやることに同じ
 緋璃:他世界に渡ってる情報を観測するとかそういうことができるわけね、おそらく>のぼると
 芝村:逆に言えば、誰が死んだのかとか、分かる。
 緋璃:場合によっては分からない方が平和な気もします(苦笑
 芝村:また、ゲートが定期的に開くんで、その時に他世界の動向もわかる。まあ、いや。本当はもう一つ大事なのがある
 緋璃:?
 芝村:他世界の生まれも司るのさ
 緋璃:あー こっちから送る=向こうで生まれる、ですね。
 緋璃:……あれ? えーとやるつもりはまったく無いですが、水の塔が死亡情報を他世界に渡す唯一無二のものだとしたら
 
緋璃:これを制御したら死者の復活が出来るようになりませんか?(世界にダメージを与えない形で
 芝村:まあ、やればラスタロロスの二の舞だ
 緋璃:セプはやったんですか
 芝村の発言:やったね。大爆発した。

/*/

 ・星見司掲示板 1級試験関連質疑2
  http://kaiho.main.jp/hoshimiqa/bbs2.cgi?action=article&id=18
 ・1級試験関連質疑3
  http://kaiho.main.jp/hoshimiqa/bbs2.cgi?action=article&id=24

 Q:前回の「悲しみの聖戦」はどのように決着を見せたのかが気になります。
 (新しい世界構造論から考えても、リフレインするのは悪いことではなく、踏襲できる部分はしたほうがプレイミスが少ないのではと考えました)
  神々のどなたかか、オーマの記憶継承を受けている方にお伺いすることはできますか?
 A:出来るけど、伝わってないぜ。そこだけ、皆の記憶からすっぱりぬけている。

 Q:悲しみの聖戦の決着について皆の記憶からすっぱりぬけているそうですが、このような現象が起こせるものは何でしょうか?(時間犯罪……?)
 A:その後から世界が始まってるからじゃない?

/*/

 ・星見司掲示板 試験クエスト関連質疑(3)
  http://kaiho.main.jp/hoshimiqa/bbs2.cgi?action=article&id=20

 Q:最初の時間犯罪は改心する前のAと後に呼ばれる存在、もしくはそのグライダーたる存在が行った、これは間違いですか?
 A:アーがなってしまったという話はあるが、そりゃラスタロロスの罠だよ。それをさして行ったといえるかどうかはあやしい。






 夜。

 大猫ブータは、赤い短衣をはためかせて、その看板を見あげた。

 正義最後の砦とあった。

 目を細める。

 ブータは、血を吐くと耳をたれて、その場でしばし行儀善く座っていた。





 低い低い雲が立ち込めていた。
 星も見えないような暗い夜だった。

 正義最後の砦と大書された文字が、暗闇の中でかろうじて見えた。

「これはなんと書いてあるのですか」
 傍らに座る、まだ仔猫の気分が抜けていない小さな猫神族が言った。

 猫神族の英雄ブータは、血を吐きながら、細い息を吸うと、ヒゲを動かして歌った。
 それは意味のある音のつらなりであり、心動かす響きであった。

「それは上方世界の言葉ですか」

 英雄の老猫は、寂しそうに口の端をゆるめると、丸い目を一杯に開いて朗々と歌った。
 年老い弱った猫であったけれど、 歌声までは枯れていなかった。

「それはすべてをなくしたときにうまれでる 無より生じるどこにでもある贈り物。
 それは悲しみを終らせる為に抜かれた刃。 偉大なる魔法の女王が残した最後の絶技。
 世界のどこにあろうとも、かならずさしのばされるただの幻想。
 失われそうになれば舞い戻り、忘れそうになれば蘇る、最弱にして最強の、ただ一つの聖なる力」

 ブータは、前足の爪でその看板を掻いた。

「その軍団は、それが宿るその印として必ず聖句を描いた。我こそ最後と」

 その後ブータは自らを嘲った。
「……悪い冗談で、大嘘だ。この世に聖なる物など、ない。壊れぬものもない。
 正しいものなどどこにもなく、 光の軍勢は遠くに去り、生き残ったわしだけが、こうして恥をさらしている」

 雨が降ろうとしていた。

「みすぼらしい天幕だ。みすぼらしい墓標のようだ。……子供の遊び場が我ら最後の墓標だったか」

「これを書いた人族は、我々の味方でしょうか」
「まさか」

 ブータは激しく咳き込みながら言った。

「青の青と一緒に正義は死んだのだ。そしてわしも、もうじき死ぬ。やっと」




 雨が降り出していた。

 猫神族の英雄ブータは、正義最後の砦と大書された天幕に入った。
 いくつかの巨人が居た。絶望の響きをあげていた。悲しい、悲しいと。
 その足元で、丸まって寝た。

 夢を見た。

 夢の中ではブータは、楽土を駆けていた。
 死んだら、また仲間と共に走れるだろうか。

/*/

 猫神族の王にして列王の一柱ブータは、その背にきらびやかな鎧と光の剣を纏った小神族の戦士を乗せて、
一万を数える神々と英雄の連合軍とともに戦場を駆けていた。

 高らかに鳴らされる角笛と共に、重装甲をつけた騎士団が前進する。
 それは身の丈二十キュピトはあろうかという巨人達であり、その肩に乗る鳥乙女達であった。
 彼らは不思議の側の大河を越え、 光の軍勢に馳せ参じていた。

 騎士団の進む道を切り開くように、何本もの矢をつがえる兎神族の弓兵達が一斉に天空に光の矢を放った。
 天が黒くなるごとく、 矢が放たれる。

 矢が放たれる先に見えるのは、はるかかなたまで埋め尽くすように迫りくるあしきゆめ。
 それはスケルトンであり、それはろくろ首であり、それはメデューサであり、バイコーンであった。
 ブータは歯を見せて怒った。 その怒りは光のようであった。

「続いて猫神族。人神族。前進用意。ヌマ卿、名をあげられよ」
「承知した! 猫の旗をあげよ! 闇を退ける時はきた!明日が来たのだ!……全軍!」

 ブータは喉が音を鳴らすまで息を吸った。ついで太陽が昇るような輝きの声を上げる。

「猫前進!」
「猫前進!」

 白に黒にぶちに茶毛に縞模様の猫神族の英雄達が、
それぞれの背に小神族の英雄を乗せて騎士団の後を追うように前進を開始した。

 全員が手に持つ武楽器を天に掲げた。地を埋め尽くすような小神族の白刃が、太陽の光を浴びて黄金に輝く。

 輿に乗ったシオネに頭を下げると、猫達は一斉に前進を開始した。

 続いて馬神族に乗った人神族の英雄達が轡を並べた。
 同じくシオネに頭を下げながら、歌を歌いつつ前進する。
 それは人神族の誇りであった。全ての神族の中で、武楽器を与えられなかった人だけが歌と共にあった。

 歌が朗々と全土に響く。

「それは世界の危機に対応して出現し、世界の危機を消滅させて、また消えていく存在。
 ありうざるべきそこにある者。夜明けを呼ぶ騒々しい足音。人が目を閉じるときに現れて、
 人が目を開く時に姿を消す最も新しき伝説。世界の最終防衛機構!」

 ブータは人神族の盟友と並んで笑みを浮かべた。声をあわせる。

「この大地のことごとく! この天空のことごとく! はびこるあしきゆめを討て! 我ら生まれは違えども!」

「心は一つ!」




 目をつぶったブータは、女の歌声を聞いたような気がした。

(それはすべてをなくしたときにうまれでる。それは無より生じるどこにでもある贈り物)

 ブータは、顔をあげた。七度七度生まれ変わろうと、決して忘れえぬ旋律だった。
 それは誰かの心の声だった。

(それはすべてをなくしたときにうまれでる。それは無より生じるどこにでもある贈り物)
 そこから先の詞を知らないのか、同じ部分ばかりが繰り返し歌われていた。

 ブータは、無意識に心の中で詩を引き継ぐ。

(それはすべてをなくしたときにうまれでる。それは無より生じるどこにでもある贈り物。
 それは悲しみを終らせる為に抜かれた刃。 偉大なる魔法の女王が残した最後の絶技。
 世界のどこにあろうとも、かならずさしのばされるただの幻想。
 失われそうになれば舞い戻り、 忘れそうになれば蘇る、最弱にして最強の、ただ一つの聖なる力)

 それはブータが好きだった希代の女詐欺師の言葉であった。
 どんな境遇でも一生嘘をつきつづけてきた女の言葉。




 下の騒ぎを無視してブータはプレハブ校舎の屋上で座り込んでいる。
 髭を揺らして、周囲の風景を見る。

 咳き込んで、そして風に頬を揺られた。

「シオネアラダ。偉大な詐欺師よ。貴様のついた嘘を、まだ信じていた娘がいたよ」

 声が、つまった。

「貴様は本当に、偉大な嘘つきだったのだな。青の青も、わしも、ずっと騙されていた」

 ブータは目をつぶって、はらはらと涙を流した。

「だが貴様の嘘ももう終りだ。わしが死ねば、終る。
 死んだらまた嘘をつこう。我らこそ豪華絢爛たる光の舞踏。光の軍勢と」




 整備 テントの上では、ブータが長い髭を揺らしながら夕日を見ていた。
 目の端には、舞と善行が裏門から学校に入ってくるのが映っていた。

 ブータはそれを無視し、咳き込み、血を吐いて、オレンジ色の天空を見上げる。
 空に穴は開いていなかった。いつも通り。

 ブータは、誰も空を見ていないぞと、なぜ世直しをしないと、天に文句をつけた。
 目をつぶる。

 目をつぶれば、背をやさしくさする白い手を思い出した。
 シオネアラダだ。

(昔ばかりを思い出す。それも楽しいことばかりだ)
 ブータは、ちょっと泣いた。

 目をつぶったまま、ブータは考える。
ひょっとしたら運命を決める火の国の宝剣は、一人だけ残された自分を哀れんで、この場所を用意したのだろうかと。

 正義最後の砦で、あのなつかしい思い出達を胸に抱いて死ぬ。
 ブータは少しだけ微笑んだ。

 微笑みながら、夢を、見た。
 ブータは、友を待っている。

/*/

 あしきゆめに利する夜を呼ぶ、絶望的に赤い夕日を見ながら、老王は城を包囲するように布陣する幻獣の軍を眺めていた。

 時折、老王が立つ物見の塔へもあしきゆめが矢を放ったが、老王はそれを無視した。
 届かぬと思ったし、老いたりと言え、王は英雄だった。

 王は、皺深い目尻を下げると、虚空に物を言った。

「これ、アー」
「ここに」

 影が、王の背中から動き出した。
 それは白いマントを身につけた楽師の姿を取ると、膝をついて王に礼を示した。

 王は楽師アーを見ずに夕日を見た。

「戦いは、いよいよもって苦しくなってきたの」
「子供達が気になります」

 老王は笑った。
「一体何人の子を持つのだね。アー」
「世界の全ての子が、私の子です。とりわけ不幸な子ならば」

「アーは、子供が好きなのだな」
「いえ、嫌いです。時々笑顔を見せられるときは、心ぐらつきますが」
「そうか」

 老王は、にこりともせずに落ち着き払って言うアーを笑った。

「七人にして一人の父を持つ者が生まれると星が告げている。おぬしは父の一人かも知れんな」
「そうかもしれませんし、そうでないかも知れません」
「お前は自分一人で答えを確信した時は必ずそう言うな」
「そして時が来ていないならです。時が来れば、すべては分かりましょう」

 老王は目をつぶると、開いて、口を開いた。

「いけ。アー。己の思う最善をつくせ」
「御意のままに」

 もはや残っていたのは声だけであった。
 すでにその姿は消え失せ、後には一陣の風と老王だけが立っている。

 老王は一人笑うと、物見の塔を降り始めた。

 その頃ブータは、数日も城の前で、目をつぶっていた。

 城の前の跳ね橋でじっとしているブータを、多くの者がいぶかしんだが、
とはいえ誰が見ても魔法の大猫であるブータを 誰も触れようとはしなかった。
 かかわりと言えば時折目の前にお供え物が置かれているだけだったが、ブータはそれも無視した。

 ブータは目を見開いた。その隣に気配がした。

「来たか。友よ」
「来ないとでも思っていたのか」

 からかうような声に、ブータは真面目くさってにゃーとないた。

「あの王が死ぬまで、地べたはいのふりすると思っていた」
「その通りだ。そして王は、俺に己の思う最善をつくせと言った」

 いつのまにか、一人の楽師がブータの横に立っていた。
 一緒に歩き始めると楽師アーは鮮やかにマントを翻した。その下から青の青が現われる。
 この星の色をした豪華絢爛な歌い手だった。

「最善をつくそう。運命を決める火の国の宝剣も照覧あれ。
 地を覆う暗雲を払い、我が手で我が子を守ろう。 ここより先は俺の時間、伝説の時間だ」

「また子を増やしたか」
「そうとも。今度はまあ、ざっと3万だな」

 青の青は、不敵に笑った。

「そういう顔をするなヌマ・ブータニアス。いっておくが、次の時代、次の次の時代、
 次の次の次の時代で シオネアラダを守るのは、俺達ではないぞ、俺達の子だ」

「次を考えるのもよいがな、青よ。この戦況では次がないという可能性もあるぞ」

 そう言うブータを見て、青の青は歌うように言った。

「未来がなければ今に意味はないのだ。友よ。未来にどう繋げるかだけが重要なのだ。
 今は一時の腰掛だ。 過去はただの思い出なのだ。
 我らよりも、オーマよりも、アラダよりも、もっと重要なものがある。
 ……それは明日の微笑なのだ。 明日誰かが微笑むことが重要なのだ。
 私は確信する。光の軍勢は最終的に、ただそれだけの為に剣鈴を取ることになるだろう。
 我らこそは未来の護り手として、人の記憶に残るのだ」

「また未来とやらか。お前は子供と未来があればそれでいいのだろうが、だがそんなものは戦の役には立たぬ」

 青の青は、笑った。胸に掲げられた燦然と輝く青い宝石を見せる。

「だが青はここにいるのだ。友よ。世がどうであろうと、青はいる。
 青の居る所が未来のあるところだ。 剣や矢が多く置いてある場所が、未来だなどと思ってくれるな」



 一人になった瀬戸口は、考えをまとめながら廊下を歩いた。
 そのまま中扉を開け、外に出る。

 空は、暗かった。星も見えなければ、月も見えない。
 天空に輝く英雄の星は全部落ちたのだと、瀬戸口は思った。
 至高の星を守る七つの星車もすでになく、空を見上げる者も、今はない。

 瀬戸口は皮肉そうに笑うと、教室に向かって一人歩き出した。
 世の中がどうなろうが知ったことかと考えていた。

 遠くで聞こえる鈴の音がうるさい。
 澄んだあの音を聞くたびに、永遠に失われた声を思い出す。

 それは歌。可憐でいて力強い歌。
(それはすべてをなくしたときにうまれでる。それは無より生じるどこにでもある贈り物)

 顔をあげればその先に、琴弓を持った女の横顔を思い出す。
(覚えている? これは、すべてをなくしたものが身につけるのよ)

 瀬戸口は短く叫ぶと、青い瞳を揺らした。歯をくいしばって頭をふり、我に返ろうとする。
 あれは目に入ったゴミのようなものだ。目をつぶって、開けば、ほら、元どおり。

 目をつぶり、涙を一筋落すと、瀬戸口は目を開いた。瞳は紫に戻る。

 鈴の音が近い。

 瀬戸口は、大猫の隣を通り過ぎた。純白の毛長猫だ。
 猫に道を譲るように壁際によると、瀬戸口はその猫を見た。逃げるように走る。

「……いつもとは違う猫だな」

 そうつぶやいた。

/*/


 一方その頃。

 いつもの猫の方は、屋根の上にいた。

 一匹の中型幻獣と向き合い、今まさに戦おうとしている。
中型とは言え、その大きさは10mを軽く越えている。節目節目に紅い目を持った、長蟲のような幻獣だった。

 ブータは、もはや数えるほどになった猫神族を率いて夜を守っていた。
 屋根の上に巣くう、長蟲のような幻獣の紅い目が、その様を嘲笑うように揺れる。

 青い青い目を敢然と向けたブータは、牙を見せてうなると、首を振って喉の鈴を鳴らした。
 澄んだその音は星のようであり、闇をも遠ざける誇りであった。

 ブータは叫んだ。その怒りは光のようだった。
 ブータめがけ、長蟲がいくつもの瞳から真っ赤な光を射出する。屋根瓦が、次々と蒸発した。

 吹き上がる煙。

 煙の中からブータが現われる。肩口から血を流しながら、まっすぐ長蟲に向かって駆けた。
 そして飛んだ。あらゆる物を裂く長い爪で、目を潰し、その喉元に食らいつく。
 部下の猫神族が続々と目を潰し、長蟲に食らいついた。一匹に鈴なりになって食らう猫神達。

 嫌がってうごめく長蟲の肉を裂き、血を浴びながらさらに食らいつく。

 今宵もまた、血で血を洗う饗宴がはじまる。

 なんとぶざまな戦い方だ。
 ブータは次の獲物を探して丸い目を動かしながら思った。
 この背に小神族がいれば、右手に兎神族や猿神族がいればと思う。

 人はこんなにいるのに、不思議の側の大河のこちら側に人神族が居ないのも寂しかった。
 あしきゆめが昼にも闊歩する中、このままよきゆめはおしつぶされてしまうのか。
 あしきゆめをゆめの中だけに閉じ込める、あの醜い舞踏達はどこにいったのだ。夜が暗ければ暗いほど、燦然と輝く星々は。

 ブータは走り始めた。新しい敵の姿を見つけたのだった。
 そして、それまで考えていたことを捨てた。

 全てを忘れて戦うその間だけ、ブータの心は安らぐのだった。

 ブータは瞳をうるませる。

/*/

 うるんだ瞳を閉じると、瀬戸口は教室の窓を閉じた。
 遠くに聞こえていた忌々しい鈴の音も消え、静寂のとばりだけが身を包む。

 瀬戸口は一人真っ暗な教室にいた。今日はここが寝床だった。
 机と机の合間を箒で掃いて、毛布に包まって寝る。毛布は、女の匂いがした。

 本田教官も女なのだな。埒もないことを考える。

 すぐ眠くなる。不幸でない気分。全てを忘れて眠るその間だけ、瀬戸口の心は安らぐのだった。

/*/

 瀬戸口は、夢の中でシオネに逢った。
 それが夢だということを知っていたが、瀬戸口は、シオネを抱きしめた。

 長い黒髪も抱きしめるように、瀬戸口は毛布を抱きしめる。

 知らない間に涙が出ていた。それが夢だと分かるから。




 大事にバスケットに入れられて、ののみの膝の上に載せられたブータは、眠りながら体力を養っていた。

 時々身体を震わせて、ブータは、夢を見る。

 友よ。友よ。と。

/*/

 それは最後の時であった。

 それまで無敵を誇った巨神族の勇者がわずか一撃で頭を吹き飛ばされ、無残な屍を大地にさらしていた。

「なぜだ。なぜ貴様があしきゆめになる」

 ただ一匹生き残ったブータは絶望的な声をあげて、夕日に沈む瓦礫の山を見上げた。

 その上に、漆黒の衣を翻す旧友がいた。紅い目を輝かせ、背を向ける男。
 その手には生き物のようにうごめく銃があった。

「答えろ、友よ!」
 瞬く間に周囲のリューンが汚染されていくのがわかった。
 男を中心に膨大な量のリューンが、次々と可能性を黒く塗りつぶして行く。

「完全なる青は死んだ。友よ。もはや言い訳はすまい。最後の命だ。あたらしい青を探せ。あたらしいシオネを探すのだ」

 ブータは歌を歌った。黒いリューンを少しでも押しとどめるために。
 このままでは世界が滅ぶ。今この機会を除けば。

 しかし。

 ブータの視界が暗くなる。
 リュ−ンが、決定的に不足を始めていた。

 ブータはそれでもあがこうとした。
 泣きながら。

 ブータの身体が意思に反して浮きあがる。

「そなたでは勝てない。去れ。そして七つの世界に吹聴するがいい。我の黒き伝説を」

/*/

 世界が闇に塗りつぶされる。




 落ちているサツマイモを集め、頬ぼったニホンザルは、檻に張りつく仲間を見た。

「そろそろ我々も行くか……どうした?」
「絶望の悲しみの声をあげる巨人が、黙った」
「なんだと」
「黙った。何がおきた?」
「瞳だ。瞳を見ろ。目を見ればどちらについたか分かる」
「駄目だ、兜をかぶっている」
 士魂号の頭部を見上げながら、ニホンザルは口々に言った。檻に手をかけ、キーと言った。

「サトリケが払われた。神格があがるぞ!」

/*/

 ペンギンは煮干しをくわえようとして、手羽を休めた。
 下を向く。

「誰かが怒っているな。ああ、怒りの匂いだ。純粋で誇り高い、久しぶりのいい匂いだ」

 ペンギンは目をつぶった。
「奴が帰ってきたのか。いや、それも違うな」

 遠い場所で、兎はぼそぼそと言葉を続けた。

「……このどことなく悲しい怒りには覚えがある。
 ……人神族だ。人神族にも生き残りがいたのだな。いや、まだ神には程遠いか。
 ……この匂いは、稲羽の気多の前で我々素兎を助けたあの男と同じ匂いだ。 そうか、そうか……」

 伝説では泣いたために赤い目になったという兎は、瞳を青くして天を仰いだ。

「あの老猫が来たということは、そうだったのか」

 壬生屋につかまり、隣の檻に入れられた山羊が言葉を続けた。
 子供たちとの交流コーナーで、 兎と共に生きてきた山羊だった。

「猫でありながら狛犬だってやってのける猫だ。人神族を造るくらい、やるかもしれん」

 別の山羊が檻に角をぶつけながら口を開いた。

「客人神は違うのだな。滅びの美がない。……なんと醜い姿、なんと醜い神よ。そしてなんと気高く強い」




 ののみにかばわれるように抱かれたまま、ブータは丸い目を一杯に開けて、伝説が歩いて戻って来た様を見上げた。

(ホモ・ギガンテス・メガデウス)
(ホモ・ギガンテス・メガデウスだと?)

 それは鳥乙女を肩に乗せて戦う巨神だった。
 善き神々とともに幾多の戦いを共に戦った、伝説のよきゆめ。

 姿形は変わり果て、ずいぶん余計なものがついているような気がしたけれど、ブータはその中に、古い古い戦友を見た。
 覚えていないくらい昔と同じように、それは子らを守って奮戦していた。しようとしていた。

 それはブータを叱咤するように、地上に光を呼ぶために死者の国から蘇っていた。

 限界まで開かれたブータの瞳に、舞い落ちるいくつもの黄金の羽根が映った。巨人の肩に乗った鳥乙女の羽根であった。
 巨人のその何よりも太い腕に、星々の光を束ねて編み上げたティターン族の手甲が重なって見える。
 半分開かれたブータの口が揺れる。耳の奥には、声が聞こえる。他を圧して聞こえ始める武楽器の音を。神々の歓声を。

 にゃ。
 声が漏れた。
(コンシダー・ステリ、コンシダー・ステリ! 星と共にある星、地上の星。思慮深き者。汝は死してなお信念を貫くか)
 ブータは母国語である長靴の国の古語でつぶやくと、大きな目に涙を溜めて、生きてあきらめる己を恥じた。
 死者すら信念を貫いているのに、なぜ老いた程度で我は諦めていたのかと、己を恥じた。

 それは何も変わってなかったのだ。ただ時間が過ぎただけ。
 ブータはこの瞬間、己の周りを漂う幾千万のリューン達が そうささやいていたことに初めて気づいた。
 失われたリューンを補おうと、ブータが下を向いている間に世界が懸命に歌っていたのだった。




 夜は寒く、地上には敵味方の屍が折り重なり、生命の火も、ない。
 楽師アーは死んだ子供の一人の亡骸を抱きながら、白い息と声を吐いた。

 この世は闇だな。

 いや、闇ではない。

 巨人は天蓋に手を伸ばした。
 巨人の肩に止まる鳥乙女もまた、天蓋に手を伸ばした。そして口を開いた。
 物言わぬ巨人の代りに物を言った。

「闇ではないわ。星が瞬いている」

 楽師の隣に鎮座していたブータは、天の伽藍一杯に星々が輝いているのを白い息を吐きながら見上げた。

 ブータの丸い瞳一杯に、地上のいかなる宝石より価値がある輝きが映る。

 青い宝石を胸に下げたシオネ・アラダは、輿に乗ったまま声を上げた。
「砦に帰りましょう。ブータニアス卿、指揮を執りなさい。砦があるその限り、まだ世界は潰えてはいない」

 傍らに仕える鬼は声を掛けた。
「おでら、帰るのか」

 シオネは、自らの動かない脚を一瞥すると、胸に下げた青い宝石をいじりながら静かに言った。
「そう、帰るのよ。子らの夜を守るのは我ら。昼を守るのも我ら。私達には休む時も哀しむ事を許されない。
 ……私も神々も、万能でも不死でもない。でも、だからと言って戦うことも、存在することも辞めはしない。
 善き神々や英雄が善き神々や英雄であるのは、万能だからでも不死だからでもないから」

 シオネを守るように、赤にして深紅の鼓杖使いが、長い髪を風に吹かせながら口を開いた。
 美しい人神族にして、 燃え盛る炎から生まれたと言う火の一族の出であった。

「そう、我ら善き神々が神々たるのは……」

/*/

 善行は、原が成長したなと思った。
 時という物は酒をうまくするだけではないと、善行は考える。

 原は善行を横目で見ると、口を尖らせて言った。
「結局日本を守るために幻獣と戦うのは日本に住む人間しかいないのよ」

「違うな」

 ブータは、そうつぶやいた。

「あしきゆめと戦うのは、人ではない。幻と対等に戦うことが出来るのは、同じ幻のみ。
 あしきゆめと戦うのは本来我ら、 善き神々と英雄達。
 とじめやみにあらわれて、ひらめきひかりですがたをけす、光の軍勢。あしきゆめの天敵」

 ブータはみすぼらしいなりのまま胸をはって人間に言った。

「我々は帰って来る。今はこのなりだが、必ず帰って来る。
 闇が広がるその時には、天を見上げれば星が輝く。 闇に脅えるな。星を見よ。星は、煌くことをやめてはいない」

 ブータは誓いを口にした。

「善き神々と英雄達は帰って来るのだ。そしてかならずここに帰還するだろう」




 裕の記憶は飛ぶ。

 悪魔のような仮面をつけたその男は、長い釣竿を肩に担ぎながら裕の前に現れた。
 裕は仮面代わりの厚い化粧で、その姿を迎え入れる。

「フフフ、釣れましたか?」
「勇気は釣れた。それは最初からあった」

「……そして何をされる?」
「残されたものを守ろう。妻は失ったが、想いと子は、残されていた。
 アレは俺が戦うことを望んでいる 。勇気は偉大なり。勇気こそは諸王の王なり」

 裕はバルカラルの言葉に切替えた。
「ガンプオード、ガンプシオネ・シオネオーマ。サイ・カダヤ……」
「サイ・カダヤ・アエル」

 悪魔のような仮面をつけた男はそう返すと、柱の影からこちらを見ている娘を見た。

「おいで、イアラ。皆と遊ぼう」
 肌の浅黒い娘を抱き上げ、悪魔のような仮面をつけた男は歩き出した。

「父はだまっておりますまい」
「舞を預ける。治療法は覚えているな」

/*/

 岩田は校庭の隅で、士魂号が雄々しく戦う様を見ている。
 そうしながら、彼は病弱だった舞を看病していた頃の自分を知覚した。
 もう一人の自分は微笑み、どこか寂しい気持ちでこちらを見ている。

 岩田は微笑み、一際戦果をあげる士魂号複座型を見ながら、一人つぶやいた。

「貴方は最後まで娘が継ぐのを嫌がった。されど貴方の娘はそれを選んだ。
 剣鈴を取り、古い伝説を従え、白馬に乗り、 貴方の娘であることを選んだのだ。勇気は継がれた。万民を守るのは彼女だ」

 人の決定が世界の選択だと錯覚するときがある。
 舞が選択したのか、世界が舞を選んで万民を守らせるのか、岩田は判断がつきかねた。

「それでも、私の記憶では、あの子は弱虫で、いつも泣いている。……花が好きで、貴方は花を育て始める」

 岩田は空を見上げ、寂しそうに笑うと、背を見せてテントの中に戻り始めた。

「ガンプオード、ガンプシオネ・シオネオーマ。サイ・カダヤ……」
(勇気は偉大なり。勇気こそは諸王の王なり。その妻は……)




 思い出が、思い出が……ワシを置いて飛んでいく。
 結局二人がかりでじゃぶじゃぶと洗われ、ヒゲもしおしおの情けない顔にジョウロで水をかけられたブータは、
うらめしいジョウロを見上げた。

 ジョウロは詫びを入れる気か、水を撒いた端から虹を作っていた。
 小さな小さな、虹。

「わぁ! にじだー。にじにぃ、てがとどくなんて、ゆめのようだねぇ」
「理科の時間にやりませんでしたか? スケールが違うだけで空と同じことが起きたわけですね」
「ふぇぇ、すごいねぇ。いいんちょはぁ、なんでもしってるねえ」

 善行は肩をすくませたが、何も言わなかった。そう、この子を着替えさせないといけない。素子はまだ戻ってないか?  誰に頼もう。
 善行はそこまで考えた後、泡だらけの自分とののみを見、ぶるぶると水切りするブータを見て、急に愉快な気分になった。
傍に若宮がいないのが残念だった。市電で前線に兵力を輸送できるような戦況なのに、我々は何をやっているのだと思ったのだった。
戦時中にしては豪華な時間の使い方じゃないかと考える。自分以上の苦労人、若宮にもこれを味わせたいと、そう考える。

 善行の歪んだ審美眼は、自分を嘲笑った。
 そして、実際声に出して笑った。
 ののみもひっかき傷だらけで、笑った。

/*/

 あれ、ワシ、こういう場面知っている。

 濡れ鼠ならぬ濡れでぶ猫のブータは、ヒゲが早く乾くようにリューン達を使う歌を謡いながら、そう思った。
 あれはいつだったか。シオネが笑い、アーが誇らしげにカドルトを使っていた頃。

/*/

 冒険にして自由の天地である銀河を行く冒険艦。
 全長43m。重量わずかに180tのその空飛ぶ船は、大逆転号と言った。

 ブータは一等航海士として、遠くオリオンアームの向うまで駆け巡っていた。
 そう、それなのに。

 操舵手、エルンストがブータの姿を見て笑っている。

「今度という今度はやられたようだなぁ」
「シオネ・アラダに100年の呪いあれ」

 ブータがそう言うと、宙に浮きながら無重量空間にリューンの息吹を感じた。
 細くて白い腕をひっかき傷だらけにしたシオネが宙を泳いでくる。完全に怒っていた。

「ありゃあ、親父さんをブラッシングするまで許さない勢いだと思うね」
「させはせん」
 ブータは壁を蹴って逃げ出した。宙に浮かぶタヌキのごときその様が面白かったのか、
鼓杖を浮かせて瞑想に入っていたイニン・ヨシアが調子を崩した。艦が姿勢を崩し、ガスジャイアントのリングに異常接近した。

 後方に吹き出す船の推進剤が水の塊を跳ね上げる。そこに恒星の光が当たって虹の環を作った。

/*/

 ブータはそのまま、ののみを見て、善行を見る。

 あの頃とまったく同じだった事に、気付いたのだった。
 なぜあの髪の色を忘れていたのだろう。真面目一辺倒の人間が急に調子を崩す様を忘れていたのだろう。

 ブータはとても大事にしていた思い出を、物にすがるあまり、自分が忘れていたことを自覚した。

 ののみに貰った安っぽい青いペンダントが、水に濡れて輝いていた。




  ブータはののみの手で、その身をののみの私物であるかわいいドライヤーで乾かすと、
その身を映す鏡で、 新たに染め直されたように見えるチュニックを見た。

 そのチュニックは火の色をしていた。
 燃え上がるようなテスタロッサだ。汚れて灰色がかっていた面影は、もはやどこにもない。
 その肩につけていたマントをユリウスに貰ったときも、そういえばこの色だった。
 ブータはそう思った。

/*/

 目はその生を現すという。
 だから、猫の目は、猫の生を現している。ころころと変り、過去も未来もない。

 ブータの瞳は、細くなり、太くなり、そしてまわった。

 記憶が飛ぶ。

 この頃多い派手好きが打ち立てた壮麗な宮殿で、ブータは遠い未来と同じように、
面白くない顔をして行儀良く座っている。 そして口を開いた。

「無毛のお前はともかく、私は、美しい毛皮に覆われている。マントなどいるか。
 こんなものがなんの役に立つ。 どうせくれるというのなら、猫用の剣でも兜でもくれればよかろう」

「さてな」
 借金大王にして助平親父として全ローマ市民達に愛された男は、腕を組んで面白そうに親友である大猫ブータに笑ってみせた。
 ブータの言う通り、無毛であった。
「これからその時が来るかもしれんだろうが。運命って奴は、読めんから運命なんだ」

/*/

「運命だな。ユリウス。運命だな」

 ブータはラテン語で言った。

「運命を定める双面の剣は、時に味なことをする」

/*/

 鏡に映るブータの瞳は、細められた。

 また記憶が飛ぶ。

 満開の桜の樹の下で、古い切れ切れのマントを短いチュニックに直してもらったブータは、それを着せてもらって、
桜の樹の主人である少女に深々と頭を下げた。

 首を横に振る少女。目は、見えていないが、見えていた。
「……貴方に伝えなければと思っていたの。死んだあの子が、貴方に伝えてくれと」

 少女は優しく笑って、死んだあの子の声色を真似た。

「ありがとうねこさん。僕の友達よ」

 瞳の形がかわる。ブータの丸い瞳は、涙を落した。
 そしてブータは、バルカラルの言葉で言った。
「エステルヴァラオームイスラボート」

/*/

「それはかまどの女神が鍛え上げたる不滅の剣にして、人民を守る最後の砦」

 ブータは前脚を伸ばすと歌を謡い、七色に輝くリューンの防壁を張った。

 防壁にあたって岩田が弾かれ、また弾かれた。




 母猫と仔猫達は、猫の王様であり、神様であるブータを見た。
 深々と頭をさげる母猫。

「おめもじすることを光栄に存じます。猫岳の王、宝剣の使徒、アルゴーナウタイ、猫の神様」
「面をあげよ。母なるものよ。汝の用向きはなにか」

 母猫と仔猫達は速水の身に起きていることを謡うと、狭い額を地面にすりつけて速水の心の安堵を願った。

「猫の神様、どうかあの人族の勇気をお守りください。勇気が誇りを支えるよう、すこしだけの助力をお授けください。
 あの人族こそは誇り高き青のおとこし。慈悲を知る者、古に謡われる天と地の交わりにより生まれし英雄族、
 メイデアの姫君の子孫に違いありません」

「そなたも古の盟約は知っておろう。人は人が、猫は猫が決めること」
「古の盟約は相互扶助を禁止までしておりません。
 また英雄族は特定の母体種族を持たぬゆえに内政干渉の禁に抵触しないはず。そして古の歌は謡っております。
 聖なるかな 聖なるかな それは偉大なる 最強の力 ……猫神族は聖なるを守るのが 勤めのはず」

 ブータは尻尾を力なく揺らす仔猫達を見た。仔猫達は小さな声で、それぞれ祈りを声にして鳴いた。
 ブータは視線を逸らし、髭を揺らすと、チュニックを翻した。

「あと少しの勇気があれば、あの者はそれでいいと?」
 母猫は言った。
「その胸に星は輝いております。あと一呼吸分の勇気が続けば、伝説にもなりましょう」

/*/

「よろしいのですか、人族に介入して」
「あれは介入ではない。独り言だ。それに考えを変えさせた訳でもない。
 ただその身の誇りを守れるよう、勇気が長続きするように計らっただけだ」

 ブータは楽しくて楽しくてしょうがないという風に目を細めると、堂々と言った。

「それに、シオネアラダも、恋愛に関しては何も言わなかった。自分自身、種族違いの恋をしていたからの」

 傍らを歩く、まだ仔猫の気分が抜けていない小さな猫神族が言った。
「でも、いいんでしょうか」

 ブータは、前だけを見ながら言った。

「人でも神でも命を賭けて戦う時がある。そしてそれはあの人族だけに限った話ではない。
 誰も彼も、戦う時が来る。……神々もわしも、な。 絢爛舞踏祭が来るのだ」

 ブータは咳いた。

「自分の心に嘘をついて生きるのは、つらいことだ。それを納得するのは、もっとつらい。
 あの少年は他の全てを耐えることができても、 あのつらさは耐えられんだろう」

 ブータは横顔をあげた。

「あのシンボルを持つということは、そういうことだ。
 すべてをなくしたものだけが、あれを手に入れ、あれを身につける」

 ブータは血を吐くと、嬉しそうに喉をならした。
 そして上を見た。空に穴が空いてないかと。
 穴は空いてなかったが、 だが老猫はあきらめたりはしなかった。

「それはすべてをなくしたときにうまれでる。それは無より生じるどこにでもある贈り物。
 それは悲しみを終らせる為に抜かれた刃。 偉大なる魔法の女王が残した最後の絶技。
 世界のどこにあろうとも、かならずさしのばされるただの幻想。
 失われそうになれば舞い戻り、 忘れそうになれば蘇る、最弱にして最強の、ただ一つの聖なる力」

 口から自然に歌が流れ出た。それは偉大な嘘の歌だった。
 ブータは明けはじめた空を見上げたまま、笑った。

「全てをなくしたその時に、それはその者の胸に燦然と輝きだすのだ」

 若い猫神族の目の前で、余命幾ばくもない老猫の胸にかけられた小汚いペンダントが、燦然と青く輝きだした。
 若い猫神族の目が見開かれる。ただのガラス玉が、なによりも希少な青い宝石のように見えた。
 ブータは驚愕するその視線に気づいてはいない。

 ブータは神々を集めようと思った。
 今ふたたび、正義最後の砦に光の軍勢を集め、華々しく絢爛舞踏祭をはじめようと。
 年老いた猫の心に、 永遠の幻想が舞い戻っていた。

 立派な髭を揺らし、ブータは口を開く。

「今まではわしが死ぬまでのことを考えていた。これからは、わしのいない明日のことを楽しみに生きよう。
 散り散りになった善き神々に伝令を。 ブータニアス・ヌマ・ブフリコラは正義最後の砦に戻ったと」

/*/

 生き残った幻獣達が士魂号に肉薄する。
 肉薄さえすれば、図体の大きな巨人からの反撃を受けない。それが幻獣にとっての最後の望みであった。

 ブータ以下の猫神族は、声を合わせて歌を歌った。その瞳が一斉に青く輝き出す。

「それは世界の総意により、世界の尊厳を守る最後の剣として、全ての災厄と共に人の心の中に封じられし災厄の災厄。
 自ら望んで生まれ出る人の形をした人でなきもの。
 闇を払う銀の剣。悲しみの中より現れて、絶望を食らう伝説の存在」

 リューンの防壁が立てられる。幻獣が次々と、壁に当たっては光をあげた。
 士魂号複座型は、猫の歌声に呼応するかのように次弾を装填し、防壁が破れるのと同時に派手に撃った。
戦車随伴兵として猫神族が戦った最初の例である。

 死が量産される。

 伝説の巨人と善き神々は、幻獣の群れの打撃を吸収し、そして真向からの力勝負で粉砕した。

 幻獣の最後の望みを叩き潰し、幻獣の士気を崩壊させて前進する。幻獣達は波を打つように後退をはじめた。

 巻きあがる幻の血煙のその向こうに、士魂号と猫達の影が見える。
 一際大きな猫の影が、高らかに歌を歌った。

「それは、涙の中より生まれでて、限りを超えるために出現する、天に突き上げられし友情の前脚。
 自ら望んで不思議の側の大河を渡る 猫の形をした猫でなきもの。
 闇を餌にする最強の獣。涙を飲んで渇きを癒し、我が血で大地を癒すもの」

 ブータは血煙を抜けて幻獣達に告げた。

「絶望する心よ。ねたみそねむあしきゆめよ。
 汝らを打ち据える宝剣の使徒にして万物の調停者の軍勢が帰還したぞ。
 姿を変え名を変えて、 されど何一つ変ることなく」

 そして髭を揺らした。猫らしく誇り高く。

「汝らの王、アーに伝えよ。その喉を掻き切るは光の軍勢。
 ただいまより猫神族は此度の戦いに参戦する。……追撃用意。第2撃 ヘイグ」

 壊走する幻獣に直ちに追撃を開始し、士魂号は、おびただしい死を築きはじめる。




 シオネ。シオネ。偉大なる魔法の女王。
 だれよりも悲しいのに、それでもなお優しい俺の姫君。
 七つの世界に咲いた一輪の薔薇。バルカラルを照らす純潔の宝石。

 なぜ醜い鬼を恋人に選ぶのか。陰口をたたかれても、優しく笑って無視をしていた。
 誰よりも勇気にあふれ、誇り高い、笑うと子供っぽい俺の姫君。
 貴方は目が見えないから見た目など関係ないのにね、と笑って言うけれど、俺はそれがたまらなく悲しかった。

 もっと俺が、美しければ。
 もっと俺に、力があれば。
 もっと俺がうまく喋れれば。
 ……もっと俺に、勇気があれば。

 だがそれも、もうどうでもいい。
 なにもかも、どうでもいい。

 それでも俺が死ねないのは。貴方が最後に言ったからだ。

/*/

 その日、残酷な運命は猫の口から彼女の最後の言葉を俺に伝えた。

 運命は言った。生きて。そしてまた、会いましょう。

/*/

 初めて会った日のように胸に青い光だけをひっさげて、それは言ったのだ。そこまでだと。

/*/

 時は昔。遠い遠い昔。忘れるほどに、いくつもの身体を渡り歩く前の話。

 デクと言われるその鬼が、シオネ・アラダを見たのは、殴り倒される1分30秒前だった。
 デクは最初、誰がシオネか分からなかったので、村娘に訊ねた。
 近づくと娘は走って逃げた。デクは、娘に急用ができたのだと思った。
 次の女性に声をかける。女は泣いて、おびえ続けた。
 デクは、女には悲しいことがあったのだと思った。

 しばらく話を聞いて回るうちに、デクはこの村がとても悲しいところだと思った。
 自分の居た村もひどいところだったけれど、地上はみんな、こうらしい。
 外の世界には友達が居るかもしれない。淡い期待を持っていたデクは悲しくなった。
 悲しいので声をあげて泣いていると、軍隊が来て光る矛をかざすので、デクは逃げ出した。
 矛で刺されると痛いことくらいは、 生まれた村でデクも学んでいた。

 そうして山を歩き、兎を食べようと走り、捕まえた兎がかわいいので食べるのをやめ、
懐に入れて腹を空かせて歩いているとき、 デクは巨大な洞窟に立ち寄った。
 山腹の中に穿った穴に、空を飛ぶ船が一つ。

 そこで、猫と犬と蜘蛛と燕とペンギンと、その他多くの生き物を連れて旅する少女に出会ったのだった。
 その細い肩に、世界の命運と良心を、 全部背負って明るく振る舞う少女に。

 少女は何も持ってなかった。
 だから、鳥たちが羽根を一枚づつ献上してつくりあげた服を着ていた。
 その胸を飾るのは、 綺麗なクジャクの羽根ではなく、地味で黒いことを恥じて
最後まで羽根を渡すのを躊躇したカラスの羽根であった。少女は誰よりも堂々と、カラスの羽飾りを胸につけていた。
子供たちから贈られた木の実と共に。

 カラスはこれに感激し、太陽の中に身を投げて炎の鳥になると、黄金にも青くも見えるカラスとなって、少女の回りを回り始めた。
 以後、カラスはすべての神族の中でもっとも忠節にはげむことになる。
 その胸の羽根は、闇が深ければ深いほど、青く青く輝いていた。 この時から黒をさして青とも呼ぶことになる。

 裸足が痛いのはかわいそうと、一際大きな白い狼が少女を乗せていた。
 その仔である白い毛玉のような仔犬を大事そうに、少女は抱えていた。

 ああ、この人は、親切そうだ。
 この人にシオネがどこにいるかたずねようとデクが思っていると、少女の方が先に口を開いた。

「そこまでよ。もう好きにはさせないわ」
「あ、あああああ、おで、ききたい」

 少女はまばたきした。後で聞くとゴミが目に入ったのとは違うそうだ。
「シシシシ、シオネアラダ。どこいるか」
「シオネは私」
「お、おであんた殺す。お、おおお、おつかいだから」
 シオネは、何を思ったかにっこり笑うと、デクを見上げた。いや、この人の青い瞳は何も映さないと、デクは後で教えられた。

「そう。でも、今はだめなの。ごめんなさいね」
「わわ、わがまま、いけない」
「そうね。わがままはいけないわね。じゃあ、こうしましょう。私が私のおつかいを果たしたら、殺されてあげるわ。それでどうかしら?」
「待つ。いつぐらい」
「そうね。 6つの世界が平和になったら。 その時には」
 デクは考えて、おつかいには急げと言われていなかったことを思いだした。
「わわわわ、わかった。おで、待つ」
「ありがとう」

 そのときシオネが見せた子供のような笑顔を見て、デクはつられて笑った。

 そしてシオネは腕を青く輝かせて、デクをぶっとばした。
 デクにとって生まれてこっち、一番ひどいぶたれ方だった。

 彼女はそして、笑って言った。
「これで、国々を襲ったことは許しましょう」

/*/

 前夜。

 瀬戸口は自分でも訳が分からなくなるほど走り、訳の分からないことを口走った。
 忘れていた。忘れていた。あの瞳。あの口振り。
 胸にぶら下げた青く輝く宝石は、あれはカラスの羽が絶技によって形を変えたもの。
 黒より生まれ、最強と言われたオーマの忠誠を集めたのは、ただ一人ではなかったか。

「そこまでだ」
 ゆっくりと歩み寄りながら、シオネ・アラダは静かに言った。

「そこまでだ。……ここからは好きにはさせない。舞から手を引け」

「正体をさぐられても、いいのかい?」
 瀬戸口の脅しに、速水は笑った。命を掛けた決断をする時に笑うその癖も、同じ。
 何も持っていない。なんの義理もない。だがそれは血を流しながら嘘を言うのだ。
 私が世界を守る。世界は良くなる。絶対に。
 誰よりも幸薄い、世界から見放されたような者がそう言うのだ。
 猫神族やカラス神族でなくても、嘘を信じる気になろう。それは希代の詐欺師であった。

 何千年もそれは心の中で待っていたのだ。復活の時を。

 デクは、瀬戸口は顔を手で覆って泣いた。
 あの人は約束を守ったのだ。たとえ死んでも。




 ブルガリアのある教会の時計板には、十二支が描かれている。
 違うのは、虎ではなく、本来のあるべきところに、本来の生き物が、つまり猫が描かれていることであった。
 遠い昔に中国や日本では廃れていたが、そこではまだ、猫が善き側の六干の長として、
竜が率いる悪しき側の六干と激烈な戦いを演じていた。

 本来の姿は、竜虎相打つではない。猫竜相打つである。
 強そうな竜に同じように強そうな虎が戦うのでは、救いがない。
 それは合理的な正解ではあっても、神話的な正解ではない。
 神話では竜と戦うのは、猫である。
 竜ともっとも離れ、竜にはとても適わないように見える膝の上でごろごろしている生き物が、
世界の命運をかけて誇り高く戦うから、神話なのである。

 その時計盤に、火が灯った。
 文字盤の裏、時計塔に住み着いた反幻獣派の人間達が、人類の証である火を灯したのだった。
 ヨーロッパは幻獣支配下にあり、 そこで灯りを灯すことは、自殺行為だった。
 それでも火を灯さずにはいられなかったのだ。恐い闇を払おうと、人は火を手にしたのである。

 猫の瞳の所に蛍光燈がともされ、青く光りはじめた。

 続いて、鳥と兎の瞳にも光が戻った。

 猫と鳥と兎の灯す光に導かれ、散り散りになっていた人間達が教会に集まり出す。
 その日、20年ぶりにミサが開かれた。

 ぼろを着た神父は言った。
「東の果てでは、まだ人類が文明を守って戦っています。
 祈りましょう。彼らが勇敢に戦えるように。彼らに少しでも恵みがもたらされるように。
 我々の救済ではなく、彼らの元にこそ多くの幸運をと、祈りましょう」

 そして顔を歪めて力一杯言った。
「たとえ我々が死に絶えても、まだだ。まだ人類は負けていない。
 デウスも、我々が築いた文明も、負けてはいない。それはこの地に帰って来るのだ。 いつか、必ず」

/*/

 猫達はデタラメに歌った後、前足をさしあげた。鳥達は翼をあげた。
 瞬く間に無数の歌声が調律され、夜に輝く星のように、闇夜に無数の青い瞳が輝きはじめる。

 一際巨大な猫が遠い昔を思い出した。
 黄金に輝く猫達の背を抜けて、黒い髪と、太い眉の少女が、今まさに猫達をかき分けて現れる昔を。

 多くの神々が、遠い昔を思った。
 今もその草葉の陰から、にれの樹の木影から、伝説が歩いて戻ってくるのではないかと、そう思った。
 全員がその肩に優しい手が触れることを思った。
 それは言うのだ。アラダ達よ。武楽器をとりなさいと。

「我が姫君に」
 ブータが言うと、神々は一斉に歌いはじめた。猫の神々も、兎の神々も、鳥の神々も。
 異なる言葉で、同じ歌を歌いはじめた。

 それはどれだけ離れていても、光り輝く黄金のすばる。
 それは我らが得たる最後の絶技よ。

 星の輝きを我が胸に。貴方を想う喜びを。
 絶望の海への航海も、今なら怖れずできるだろう。

/*/

 いとかしこきメイデアの姫君、何も持たず、ただ弱者のため涙を流したる無力な女なり。
 されど、いとかしこきメイデアの姫君は心に耳を傾ける器量あり。
 心に耳を傾けるを恥といい、いとかしこきメイデアの姫君は恥を知る。
 無力を恥じ、同情の涙を恥じ、裸足のまま山々を駆け、闘争をはじめたり。

 世の姫君が百万あれど、恥を知るものただ一人。民草に歌われし伝説の者。

 かの姫君、踊る者、黒き暴風の神を従え、敢然と戦いし。
 その後裔こそ英雄なり。

 神々は前足と翼と手を叩いて華々しく歌った。
 生きたものと生きているもの、幾千万もの歌声とともに、神々は歌う。

 その後裔こそ英雄なり。我は英雄のはらからなり。

/*/

 滝川の目の前、3mの所に少女がいた。
 草の蔓で髪を結わえ、世界を呑みこむような稀有壮大な青色の瞳が印象的な、眉の太い少女だった。
 それは言うのだ。絶望の真中で。
<全てをなくしたその時に、これはその者の胸に燦然と輝きだすのよ>

 耳元で剣鈴を抜く音が聞こえる。
<心、震えました。我ら兄弟、貴方の騎士となりましょう>

 遥か遠くで魔王のような男が、優しく言った。
<それは夜が暗ければ暗いほど闇が深ければ深いほど、燦然と輝く一条の光だよ。ラスタロロス>

 鼓杖を持った絶世の美女が、善行に見える。
<ブータニアス卿、ビアナオーマはたった今決めた。参戦する! いくぞ!>
<猫前進! 姫を守れ>
<にゃーぁぁぁ!> 猫神族80万がときの声をあげる。

 滝川は思念の輝きに飲まれ、その輝きの中で我が身を見失った。

/*/

 髭を揺らし、ブータはひしめく神々に言った。

「善き神々よ、子らの夜をまもるものは誰か」
「それは、我ら」

 青い瞳のブータの胸の下にゆれる光の勾玉が、燦然と青く青く輝きだした。
「そう、我ら。……絶望のまなかで我らは、一番大切なものを取り戻したな。……今からでも遅くない」
 善き神々は、それぞれが顔をあげて青い瞳を輝かせた。
 明日ここで死ぬかもしれないが、何よりも大切な誇りは守られた。
 神々は、シオネを愛したことを思い出していた。それは誇り。あの女を愛したことが、神々の誇りであった。

 ブータは鳴いた。猛獣のごとく。

「人族にも盟約を覚えていた者がいた。その一事をもって我らは再び戦おう」
「志は引き継がれた。優しさは地に残った」
「愛もまたここに」

 神々は我が胸を叩いた。神々のごとく。
 ブータは誇り高く言った。

「よかろう、では滅びよう」

/*/

 そして善き神々はあるべきところに帰った。
 すなわちそこは神話である。猫は、竜と戦うだろう。

/*/

 舞は不意に笑うと、整備タラップを昇りながら歌を歌った。
 速水には、舞にあわせて鳥達が唱和したように見えた。
「それは最弱にして最強の、ただ一つからなる世界の守り。
 それは万古の盟約にして、人が決めたるただ一つの自然法則。
 それは勇気の妻にして、 嵐を総べる一人の娘」

「それは黄金に輝く草原を、青く輝く銀河の下を、永劫に旅する伝説のもの。
 全てをなくしたその時に、それはその者の胸に燦然と輝きだすのだ」

「それって、何?」
 まぶしそうに舞を見上げ、速水は聞いた。
 逆光に照らされた舞は、腰に手をあてて歌うように言った。
「それに名前をつければ、話が終る」
「だから、なに?」

 舞はしばらく黙った後、口を開いた。

「知らん。だが、それはある」
 舞は堂々と言った。そう言い抜けるその様は、まこと格好良い。
 速水は頬を赤らめると、また惚れ直したと思った。

「そうか。じゃあ、それを探さないとね」
「そうだな」

 舞はここまで正確に父の真似をして自分を笑った後、新しく自分のエピソードを付け加えることにした。

「私とそなたなら確率は倍だ。二人だからな」




 夜も随分更けてから、速水がアパートを出て外を歩き出したとき、来須は一人公園で死者達の声を聞いていた。

 手を伸ばし、自分の周りを回っては天に戻っていく青い燐光を見る。
 この奇妙な現象が発生したのは、この公園にテント生活者が出てからだった。

 来須はテント生活をしている家族に、世界に穴を開けるほどのシャーマンかウイッチがいるかどうか調べたが、
未だ不審なところは見られず ――ただ不運な少女が一人いるだけだ――いぶかしみながら公園で死者達との逢瀬を続けていた。

 今日来須の前に現れたのは、来須に真の名前を与えた力のある老婆だった。
 老婆は死んだときの姿、即ち矢に貫かれた姿のまま言った。
(坊や、いいかい、ようお聞き。お前は青と三度会う。三度目の青に、お前はいずれ殺される)

 それは大昔に聞いた言葉だった。来須はこの怪異が二度目の青だなと思いながら、口を開いた。
 バルカラルの言葉に切り替える。
「それよりも聞きたいことがある。夜明けの魔女よ。この怪異の示すところは何だ。なぜ魔力がないこの土地にお前達が出る」

 老婆は手を広げた。その胸にも、肩にも矢が刺さっていた。
(魔力はある。実体化した魔を見てごらん。
 アルス・マグナはまたしても使われ、精霊は大地に降り注ぐのだ。人は死に絶え、あたらしい世界が生まれる)

「俺がそれを阻止する。答えろ。誰が世界と時の門を開ける」
(運命は変えられないよ。アポロニア最後の精霊戦士。そなたもまた、精霊に使われる者ならば)

 老婆は光の渦になって天に帰った。
 来須が振り向く。

 そこに、厚着をした速水が居た。

/*/

 パターンの変更に速水は迅速に反応し、学習能力の高さを来須に見せつけた。
 帽子の下で来須は軽く目を見張る。瞬く間に殴り方が様になっていく。

 その歩き方も視線の配り方も間合いの取り方も、誰かに似ている。
 来須はそう思った。だが一番似ているのは勇気だ。その勇気は、来須が唯一心に抱く女性に似ていた。

 ガンプオード ガンプシオネ・シオネオーマ サイ・カダヤ オーヴァス

 来須は心の中で歌った。速水は必死に戦っている。
俺もそうすべきだろう。それがこの尊敬すべき男に対する、正当な態度だと思った。




「ふえー。いいはなしだねえ。いぬさんはながいきだねえ」
「ドウでしょう。いぬは長生キ、出来ないデス。でも」

 岩陰に隠れて銃を磨く足元を旅する兎、ストライダー兎は銃を整備する作業の手をとめ、空を見上げた。

 空は曇っていた。

「でも、だからと言って世界は無情ではない」
 ストライダー兎はつぶやいた。空は曇っていたが、瞳の色は澄んだ青だった。

「シオネは死んだが、愛は残った。道真は死んだが、子孫は残った。
 ジョニーは娘を送り出し、猫の王は老いはしたが、だがそれだけだ。
  この世でもっとも大事なものは、滅びはしない」

 ストライダー兎は拳銃の遊底を引いて初弾を薬室に送り込むと、祈るように銃に額をこすりつけた。口を開く。
「たとえ俺達、神々が滅びても」

/*/

 これより、はじまりのためのおわりの戦いがはじまる。

/*/

 瀬戸口のまぶたの裏で、黒い髪が広がる。
 絶対なる優しさと、透徹した観察眼、揺るがない意思、その身に刻まれた理不尽。
 瀬戸口は怒る。世界を敵にまわしてやる。彼女をこんな目にあわせた奴を、おでは全部殺してやる。
 だが彼女は言うのだ。理不尽の最たるものとして、鬼よ、世界を守りなさいと。




 ブータは挨拶を返した後、コンシダー・ステリにならって目をつぶった。
 神々もそれにならう。再び戦うことを決めた今、目をつぶれば、神々は遠い昔に死んだシオネ・アラダと再会することができた。

 宙を飛ぶシオネ・アラダが、頬を膨らませて怒っている。
 シオネ・アラダが傷ついた白犬を抱いて、泣いて怒っている。
 目をつぶるブータは、その背にシオネ・アラダの気配を感じた。
 戦いの前には、神々は競ってシオネの前に立ち、無謀な彼女が 前線に出ようとするのをいさめたのだ。
 その時の表情は、振り向かなくても分かる。
 彼女の声が聞こえた。それはいつもの通り、ぶんなぐりなさい、神々よ。であった。

 ブータは微笑んだ。過去が老猫に微笑みかけ、勇気を与えたのだった。




・リターントゥガンパレード 第20回 SIDE−B バッドラックボーイ
 http://blog.tendice.jp/201011/article_2.html
 http://blog.tendice.jp/201011/article_3.html

・リターントゥガンパレード 
第21回 神々の長い旅
 http://blog.tendice.jp/201011/article_4.html
 http://blog.tendice.jp/201011/article_5.html






●式神の城3 ミュンヒハウゼン&未来
●式神の城3 ミュンヒハウゼン&零香
●小説 式神の城2 パラダイスタイフーン P248 
リターントゥガンパレード 第5話
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/05-5.htm
リターントゥガンパレード 第6話
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/06-4.htm
●リターントゥガンパレード 第12話
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/12-5.htm
●リターントゥガンパレード 第15話(前編)
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/15-1.htm
●リターントゥガンパレード 第16話 SIDE−C
 
http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/16-6.htm
リターントゥガンパレード 第17話(前編)
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/17-4.htm
リターントゥガンパレード 第 18話(後編)
 http://www.alfasystem.net/novel/etc/return/18-6.htm
テンダイスブログ リターントゥガンパレード 第20回 SIDE−B バッドラックボーイ(1)
 http://blog.tendice.jp/201011/article_2.html

ドラマCD 高機動幻想ガンパレードオーケストラ Vol.2 白の章 人型戦車の鍵 04:51
●Aの魔法陣 ゲームログ 火星独立戦争前夜
 http://www.unnamedworld.net/users/miyabi/12kasei/050507_dokuritu.html
●大絢爛舞踏祭 テンダイスブログ 戦闘結果&……
 http://blog.tendice.jp/200512/article_120.html
●大絢爛舞踏祭 テンダイスブログ Aの魔法陣によるエースゲーム(ぽち救出ターン2)
 http://blog.tendice.jp/200605/article_4.html
●電網適応アイドレス テンダイスブログ イベント103帰る場所を守るための戦い(プレイログ後編)
 http://blog.tendice.jp/200708/article_37.html

女、一人の女が いた。
砂埃のする町で。
一日中泣いても意味は無い。
だから私は悪魔の手を取り、世界を救う事にした。
すべての神々相手取り、私の思う美しい、世界を争奪してやるわ。

しびれるような赤いカー。
朝日さす汚いこの街で、ながめるだけはもう終わり。
観るのを止めてプレイヤー、一寸先は暗い闇、明日はいいかもしれないわ。

女、一人の女がいた。
涙の味のする山で。
一日中泣いても意味は無い。
だから私は悪魔の手を取り、男を殺す事にした。
すべての正義を相手取り、私の思う美しい、男を争奪してやるわ。
純粋な愛は横取りと強奪。
相手が誰でも恋すれば、自然とそうなるしかないわ。

うなぎ昇りの血のたぎり。
朝日さす汚いこの街で、ながめるだけはもう終わり。
観るのを止めて地獄に落ちる。一寸先は暗い闇、癖になるかもしれないわ。

素敵なスリルを追い求め、スリルの中で踊る夜。朝を夢見て歌う夜。
あなたの夢を抱きしめて、世界を争奪してやるわ。

素敵なスリルを追い求め、スリルとともに眠る夜。
ラストギャンブルはあなたの夢を抱きしめて、死んだら地獄で待ってるわ。

一日中泣くよりも、反逆者として戦うの。

ララララ ララララ ララララ ララララ。
私は幸せ。 見なさい夜明けが綺麗だわ。
私を讃えるかのように。

風見るにつけすべてを思い出す。
太古の鼓動。 草の音。
兵馬のいななき。 槍の煌き。

昔、光を取り戻すため、寄り集まりし軍勢があった。
人は輝きを思い出し、歌を歌う。

それは遠い日のほのかな思い出。
行く末、未来を思う時、人は輝きを思い出し、歌を歌う。

風を見よ。
長い長い刻(とき)を経て、再び揃うこの時を。

それは絶望の中で瞬く一筋の光。
暗黒にあらがう小さな砦。
引き継いだのは、人間族。
最も弱い、光の種族。

一人の女、子をなした。
子は子をなし、子の子は子をなし、十万の時を待った。

一人の女の裔として、地上に満ちる光を束ね、我は魔術を使役する。
魔術の名は、希望。
また来たぞ、ほの暗いものよ。




失くしたもの、滅びたもの、遠い故郷、
太古の鼓動、草の音、
かまどの光、丘の風・・・。

それは遠い日のほのかな思い出。
行く末、未来を思う時、人は輝きを思い出し、歌を歌う。

風歌、我が心の闇を照らせ。
風よ聞け、長い長い刻を経て、女と風が再び揃うこの時を。

それは絶望の中で瞬く一筋の光輝。
暗黒にあらがう小さな砦、引き継いだのは人間族。
もっとも弱い、光の種族。

小さな砦を心に隠し一人の人の子、子をなした。
子は子をなし、子の子は子をなし久遠を待った。

今、一人の女の裔として、地上に満ちる光を束ね、我は魔術を使役する。
魔術の名は、「希望」。
また来たわよ。ほの暗いものよ。





 昏い夜に、絶望のただなかに、誰もが省みないたった一つの命のために。いつものようにそれは現れた。
 それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、燦然と輝く一条の光。
 それは、人であって人でなき者。夜の闇に現れて朝日とともに消える者。
 それは、賢き者が嘲笑い、怯える幼子のみ語られる寝物語。
 本当に久しぶりに、それは本来の姿をしていた。
 夜明けを呼ぶ足音は、絢爛たる舞踏の響きは、一つきりではなかったのだ。
 伝説に語られるとおり、銀の男には、金の女が寄りそっていた。その四つの瞳は、共に前を、夜明けを見つめていた。
 伝説に語られるとおり、銀の男と、金の女の間には、小さな命があった。三つの鼓動 の音に合わせ、四つの足がステップを踏む。
 男と、女と、小さな命。その三つが揃い、ここに伝説は全きものとなった。




 そして舞は、堂々と嘘を口に上らせた。
 それは悲しい時、苦しい時につく嘘だった。

「それは世界の危機に対応して出現し、世界の危機を消滅させて、また消えていく存在。
 ありうざるべきそこにある者。 夜明けを呼ぶ騒々しい足音。人が目を閉じるときに現れて、
 人が目を開く時に姿を消す最も新しき伝説。世界の最終防衛機構」

 舞は手を伸ばした。拳が握られる。

「それは世界の総意により、世界の尊厳を守る最後の剣として、
 全ての災厄と共にパンドラの箱に封じられていた災厄の災厄。 自ら望んで生まれ出る人の形をした人でなきもの」

 拳に祈りを捧げるかのように、唇に引き寄せる。

「それは絶望と悲しみの空から満を待して現れる、ただの幻想。
 暗黒に沈む心の中に沸き上がる、悠久不滅の大義の炎。
  失われそうになれば舞い戻り、忘れそうになれば蘇る、原初の感情! ただ一つのはじまりの力!」

 舞は己の左胸を親指でさした。

「それはここに この中に」

 その瞳は燃えるようであった。
 勇気が折れそうになるたびに、これまで舞は一人言葉を紡いでは、それを蘇らせていた。
 今もそうだ。 そしてこれからもずっとそうだろう。

 舞の心の中に剣が生まれる。
 人を傷つけるための刃ではない。ただ闇を払うだけの銀の剣だ。

 それは楽器のようで、剣のようで、炎のようで、涙のようであった。
 それは幾千万の光の集まりであり、病弱な少女の思慕の念が作り上げた、
七つの世界でも屈指の強さの拳骨であった。

 腕が、振られる。



「あ れは嘘だ。誰かが言い始めた、ただの嘘で、子供だましだ。
 私は知っている。パンドラの箱に最後に入っていたのは、 確定した未来情報、運命という最悪の災厄だ」

「だが、思うのだ。子供だましを言った親の心を。親は、どんな気持ちで嘘を教えたのかと」

「あの人は、悪意でそれを言ったのか」

「違うな。……私はそう思う。嘘はどこまで言っても嘘だ。現実は何も変らない。
 だが、嘘は、嘘とは、本来、 そうであったことにしたい真心や願いだ。
 だから夜が暗ければ暗いほど、悲しみが深ければ深いほど、人は嘘をつきはじめる。
 せめて心の中だけでも明るくしようと、そう思うからだ」

「私は思う。箱に閉じ込められ、出してくれとささやきながら出番を待ち続ける、災厄と戦う災厄の災厄を。
 世界の総意により、 世界の尊厳を守る最後の剣を自ら任じた災厄を狩る災厄を。その決心を」

「私は嘘を教わったのではない。私は真心と願いを聞いたのだ。だから私もまた、永遠に来ない明日の嘘をつきつづけようと思う」





 それは、なにかを待つ心であった。
 それがいつになるか分かりはしなかったが、自分の力でそのなにかに手を伸ばそうという、 心であった。
 いくつもの生命を渡り歩きながら、それは何千年も待っていたのだ。
 そしてこれからも、ずっと待つだろう。 それは猫の心の上に浮かびあがる一つの幻想だった。

「それは世界の総意により、世界の尊厳を守る最後の剣として、
 全ての災厄と共にパンドラの箱に封じられていた災厄の災厄。 自ら望んで生まれ出る人の形をした人でなきもの」

「それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、燦然と輝く一条の光」
「それは、悲しみを終らせるために抜かれた刃。猫の形をした猫でなきもの。怒りの顔をした怒りでなきもの」

「それは絶望と悲しみの空から満を待して現れる、ただの幻想。
 暗黒に沈む心の中に沸き上がる、悠久不滅の大義の炎。
 失われそうになれば舞い戻り、忘れそうになれば蘇る、原初の感情 ただ一つのはじまりの力」

 猫達は一斉に我が胸を叩いた。

「それはここに! この中に!」
「我は未来の護り手なり 我が一撃は空の一撃 空を割るは我が前脚なり」




 それは、なにかを待つ心であった。
 それがいつになるか分かりはしなかったが、自分の力でそのなにかに手を伸ばそうという、 心であった。
 いくつもの生命を渡り歩きながら、それは何千年も待っていたのだ。
 そしてこれからも、ずっと待つだろう。 それは人の心の上に浮かびあがる一つの幻想だった。

<人族の母親が息子に伝えた話から、序文>


 それは、なにかを待つ心であった。
 それがいつになるか分かりはしなかったが、自分の力でそのなにかに前脚を伸ばそうという、 心であった。
 いくつもの生命を渡り歩きながら、それは何千年も待っていたのだ。
 そしてこれからも、ずっと待つだろう。 それは猫の心の上に浮かびあがる一つの幻想だった。

<猫神族に伝わる古い伝承>




 ブルガリアのある教会の時計板には、十二支が描かれている。
 違うのは、虎ではなく、本来のあるべきところに、本来の生き物が、つまり猫が描かれていることであった。
 遠い昔に中国や日本では廃れていたが、そこではまだ、猫が善き側の六干の長として、
竜が率いる悪しき側の六干と激烈な戦いを演じていた。

 本来の姿は、竜虎相打つではない。猫竜相打つである。
 強そうな竜に同じように強そうな虎が戦うのでは、救いがない。それは合理的な正解ではあっても、神話的な正解ではない。
 神話では竜と戦うのは、猫である。竜ともっとも離れ、竜にはとても適わないように見える膝の上でごろごろしている生き物が、
世界の命運をかけて誇り高く戦うから、神話なのである。




−そ れは悲しみが深ければ深いほど、絶望が濃ければ濃いほど、燦然と輝く一条の光−
−それは夜が深ければ深いほど、闇が濃ければ濃いほど、天を見上げよと言うときの声−

−それは光の姫君なり ただ一人からなる世界の守り−

−世の姫君が百万あれど、恥を知るものただ一人。世に捨てられし稀代の嘘つき−
−嘘はつかれた。世界はきっと良くなると。それこそ世界の守りなり−

−善き神々は恋をした。嘘を真にせんとした−

−我は世界の守りの守り、守りの守りの守り 守りの守りの守りの守り 守りはここに、この中に−
−かの姫君、踊る者、黒き暴風の歌い手を従え、闇を相手に闘争を始めたり−
 
−それはどれだけ離れていても、光り輝く黄金のすばる−
−それは我らが得たる最後の絶技よ−

−星の輝きを我が胸に。貴方を想う喜びを−
−絶望の海への航海も、今なら怖れずできるだろう−

−それは最弱にして最強の、ただ一つからなる世界の守り。
 それは万古の盟約にして、人が決めたるただ一つの自然法則。それは勇気の妻にして、 嵐を総べる一人の娘−

−世の軍勢が百万あれど、難攻不落はただ一つ。世に捨てられし可憐な嘘つき−
−嘘はつかれた。世界はきっと良くなると。それこそ正義の砦なり−

−善き神々は定めを裏切り、嘘を真にせんとした−





”夜が暗ければ暗いほど 闇が深ければ深いほど 歌は燦然と輝きだす
 それは互いを呼び合う声 いかなる闇も声は殺せぬ
 それは光の替りに与えられし 偉大なる力
 二つからなる一つのもの 互いに引き合い 手をふれあう
 聖なるかな 聖なるかな それは偉大なる 最強の力
 その心は闇を払う銀の剣”

”悲しみが深ければ深いほど 心が痛めば痛むほど 愛は燦然と輝きだす
 それは今はなく、これから生まれる新しきものいかなる闇も手が出せぬ
 それは光の替りに与えられし 偉大なる力
 今なくして未来にあるもの これより生まれ 我を引き継ぐ
 聖なるかな 聖なるかな それは偉大なる 最強の力
 その涙は闇を払う金の翼”

”すべてをなくしたときにうまれでる
 それは無より生じるどこにでもある贈り物
 聖なるかな 聖なるかな それは偉大なる 最強の力
 時が来たりて喜びをつづる 我は父母なり
 全ての理を越えて我は未来に魔法をかける
 聖なるかな 聖なるかな それは偉大なる 最強の力






 “その心は闇を払う銀の剣 絶望と悲しみの海から生まれでて
 戦友達の作った血の池で 涙で編んだ鎖を引き
 悲しみで鍛えられた剣鈴を振るう
 どこかのだれかの未来のために 地に希望を 天に夢を取り戻そう
 われは そう 戦いを終らせるために来た“

“絶望と悲しみの戦場から、それは生まれ出る
 地に希望を、天に夢を取り戻すため生まれ出る
 闇をはらう銀の剣を持つ少年 どこにでもいるただの少年
 それは子供のころに聞いた話、誰もが笑うおとぎ話
 でも私は笑わない 私は信じられる あなたの横顔を見ているから
 はるかなる未来への階段を駆け上がる あなたの瞳を知っている“

“陰謀と血の色の宮殿から それは舞い下りる
 子に明日を 人に愛を取り戻すため舞い下りる
 闇をはらう金の翼を持つ少女 どこにでもいるただの女
 それは子供のころに信じた夢 誰もが笑う夢の話
 でも私は笑わない 私は信じられる あなたの言葉を覚えている
 はるかなる未来への生命をかき抱く あなたの鼓動を知っている“

“今なら私は信じれる 二人の作る未来が見える
 二人の差し出す手を取って 私は再び生まれ来る
 幾千万の私達で、あの運命に打ち勝とう“
 はるかなる未来への階段を駆け上がる 私は今一人じゃない”




− 広がる絶望の彼方から 我を呼ぶ声がする−
−待ち焦がれた死の声じゃない 生きろと言う声だった−

−覚えていた 覚えていた 貴方の声を−
−覚えている 覚えている 貴方の貌を−
−闇は退く−

−永劫の暗闇の終わりには 貴方が信じる国がある−
−今また愛する 私は愛す 貴方の夢を−
−闇は退く−

−貴方に似た人がいた 悲しくない僕がいた−
−ひとみを閉じれば 今はもう 貴方の笑顔が蘇る−
−貴方のところへいくしばし 武運をすこし この腕に−




「お前にひとつ詩を教えてやる」

「絶望は地を覆い 死は癒えぬ爪あとを残す
 命は苦しむために生まれ 死ぬために育てられる
 運命を定める剣は 苦しみを要求する
 夜明けが来るその前に きっと我々は死ぬだろう

「悲しい詩だね」
「そうでもない。これは希望の詩だ」
「どこに希望があるの?」

「詩の続きはこうだ。
 だから忘れないで 春の日を忘れないで 白い花の野を あの暖かな日のことを
 暖かい時を心に描けるのなら そこには希望があるのだ
 たとえ今が絶望の荒野で 明日死んでもな」




”絶望は地を覆い、死は癒えぬ爪あとを残す”
”運命を定める剣は、苦しむ未来しか我らにみせない”
”夜明けが来るその前に、きっと我々は死ぬだろう”
”それでも我々は生きるのだ。我らのためではなく”
”それでも我々は生きるのだ。我らのためではなく”
”明日に夜明けを呼ぶために”




”長い夜が 昼を分けるのは”
”人の心が二つあるため”
”夏の終わりに秋が来るのは”
”冬の終わりに春が来るため”
”巡り 再び 繋がる 回る”
”全てを無くしたときに生まれ出る”
”その剣の名は豪華絢爛”

”人の心が二つあるのは”
”闇を抜けて光かがやく”
”恋の終わりに愛が来るのは”
”次の季節に生を生むため”
”巡り 再び 繋がる 回る”
”全てを無くしてまた手にいれる”
”その剣の名は春の女神の”

加納正顕:
「長い夜が 昼を分けるのは」
「男と女が二つあるため」
「夏の終わりに秋が来るのは」
「冬の終わりに春が来るため」
「巡り 再び 繋がる 回る」
「全てを無くしたときに生まれ出る」
「その剣の名は豪華絢爛」

”長い夜が 昼を分けるのは”
”人の心が二つあるため”
”夏の終わりに秋が来るのは”
”冬の終わりに春が来るため”
”巡り 再び 繋がる 回る”
”全てを無くしたときに生まれ出る”
”その門の名は日常回帰”







 ドラゴンのはなし

 それはおおきなドラゴンでした。
 なんねんもとしをかさねたトカゲだけがたどりつく、おおきなおおきなドラゴンでした。

 それははじめ、ただのトカゲでした。
 それはちいさな、よわいトカゲでした。

 でも、そらをとばなければならないから、そらをとびました。
 でも、ひをふかなければならないから、ひをふきました。
 だれよりもつよくならなければならないから、つよくなりました。

 トカゲにはゆめがあったのです。
 それはよるをまもること。

 トカゲはよるおそくまでおきれません。だからトカゲはトカゲをやめようとがんばりました。
 くるひもくるひも。くるひもくるひも。

 トカゲはいつまでたってもトカゲさと、だれかがいいました。
 でもトカゲにはゆめがあったのです。こわれもせず、ふうかもせず、めをつぶればいろあざやかによみがえる、そういうゆめが。

 そして、いちおくねんがすぎて、におくねんがすぎて、さんおくねんがすぎて、よんおくねんがすぎて。ごおくねんがすぎたころ。
 だれもトカゲをトカゲとよぶものはいなくなりました。トカゲはながいながいくるひのはてによくりゅうとよばれるドラゴンになったのです。

 ゆめは、こわれませんでした。




 いぬかみさまのおはなし

 おおむかし、ひとがまだ、そらをみあげるしかなかったころ。
 さむさにふるえてやりをにぎっていたそのころ。

 ひとはおおかみやらいおんのえさでした。
 ひとはきのみやくさをたべていました。
 まわりはたべるか、たべられるかだったのです。

 それはさびしいとひとりのわかものが、おもいました。
 よのなかはひろい。たべたりたべられたりしない、いきもののつながりがどこかにあるにちがいない。

 わかものはななつのさばくをこえてみっつのやまをこえ、はちばんめのたいりくをこえ、セントラルのうみをわたり、
 ちのはてまでたびをして、 たべたりたべられたりしないものをさがしました。

 ちのはてでじゅうがいいました。
 どんなところにいってもかわらないよ。こきょうにおかえり。

 わかものはかなしいこころでこきょうにかえります。

 こきょうではあいかわらずたべるかたべられるか。
 わかものはばかだと、いわれていました。

 ばかといわれるのがいやでいやで、わかものはひとり、やまでくらしはじめました。
 それからなんねんかたち、わかものはおなかをすかせているおおかみをみつけました。
 それはわかものをたべようとずっとおいかけていたこわいこわいおおかみでした。

 わかものはいいました。
 どうしたんだい? ぼくをたべようとするものよ。

 おおかみはいいました。
 おまえのかちだ。おれをたべろ。

 わかものはながくながくかんがえたあと、じぶんはばかではないとおもいました。
 そうしてもっていたたべものをこわいこわいおおかみにわけてあげました。

 たべるかたべられるかではなく、いっしょにたべることをえらんだのです。

 おおかみはありがとうといいました。このきもちをなんとなづけよう。
 わかものはそれはかんがえていなかったと、いいました。

 こうしてひとに、はじめてのともだちができました。
 それはともだちというなまえができるまえのこと。

 おおかみはひとをたべるさだめをうらぎり、なまえをかえて、いぬとなのるようになりました。
 それからなんねんもたちましたが、いまもひとは、はじめてのともだちとともだちです。

 どこにいても、いつにあっても、とおくまでいかないでも、
 こころがそうおもうのなら、そこにはなにかがあるのです。なまえもない、なにかが。

 これはそういうおはなしです。

 おわり。




 きへいのおはなし エヅ・タカヒロ

 むかしむかし そのむかし ひとはたいようとともだちで ほしぼしのこえをきくことができました。
 つきのささやきも あさつゆのこえもきくことができました。

 しかしひとはしあわせになることにこだわりすぎ たいようのこえをきくのをやめました
 ほしぼしにせをむけ つきのめぐみもわすれました。

 じぶんのへやにとじこもり じぶんたちのともしたあかりこそが すべてだとおもったのです。

 ここはあかるい ここはあたたかい。
 ぼくのへやには なんでもある。
 そとにでるひつようも ない。

 まどのそとでは たいようはかげり ほしぼしはおち つきはうかばず
 はなはかれ あさつゆがなくても ひとは それを たにんごとだといいました。

 ひとりのひとのこが それはおかしいといいました。
 じぶんだけがよければ それでいいのかと。

 うすくらくても いいじゃないか。
 さむくても いいじゃないか。
 ひとり あたたかい それよりも。

 ひとりの ひとのこの こころには まどがあり そのまどは いつもあいていました。
 それを はじといいます。

 ひとりのひとのこは はじをもっていました。
 ひとりのひとのこは ひとであることをはじて きへいになり
 じぶんのへやをすてて そとにでます。

 たいようと ほしぼしと また ともだちになるために。

 ひとよりも きへいがえらいときは たまにあります。
 それは きへいがはじを しるからでしょう。

 これは そういうおはなしです。




 とりかみさまのおはなし

 その昔、エチオピアに未来を見通す瞳を持った女がおりました。
 その見るところはことごとく真実となり、それゆえに恐れられ、一人遠ざけられておりました。

 空を飛ぶ鳥たちはこれを哀れみ、伝令としてエチオピアの瞳の住まいに立ち寄ると日々の話を伝えるようにしました。
 渡り鳥はこうして生まれました。

 エチオピアの瞳は鳥たちの来訪を喜び、心配事を語ります。
 それは彼女が垣間見た、まだ生まれてもいない、一人の子の未来でした。

 鳥たちはいいました。
「心清い人よ。僕達は心震えました。僕の琴弓ならば、あるいは貴方をこの牢から出すことも出来ましょう。
 だがそれは、貴方の美しさを汚すもの。僕達は貴方のためではなく、貴方の思いのために力をつくしましょう」

 鳥は世界中に散らばり、世界中の名前を持つものに助力を要請しました。
 それは誰も見たことのことのない子を助ける要請です。
 これには人も木々も動物達も空も海も風も山も協力し、一年の四分の一をそれぞれ、一羽のペンギンに預け、
 固めてこねて冬の宝珠にして、来たる戦いのために貯めることにしました。
 そして千年の冬を越えて蓄えられたその力は、ただ一人のために。

 ただ一人の心に闇を払う銀の剣を出現させるために使われるでしょう。

 それが賢いことなのかどうなのか私には分かりません。
 ただ私は思うのです。賢いと言うものに、いかほどの誇る価値があるのかを。

 <アルガナ勲章を渡すとき、大統領から口伝で伝えられる物語>
 <1999年4月16日>




 その昔、人もネコリスも空を見上げていました。

 それは、空に浮かぶ柱があったからです。人もネコリスも、あの綺麗な柱のおかげで下を見ずに、生きていくことが出来ました。
 空に浮かぶ柱は、いくつもの世界が、姉妹である世界を呼ぶ声が、目に見える形になったものです。
 世界と世界は、ずっと昔からそうやって呼び合い、手を伸ばし、結ばれ、あるいは一つになったり分かれたりしていました。

 世界の数を、七つといいます。私たちのいる世界は五番目の世界。
 全ての世界は天に駆け上がる螺旋の姿をしていて、七つの螺旋があつまって、そうして一つの歌を歌っていました。
 
 でも人はとても愚かがすぎて、空を見上げることをやめました。
 空に手が届かないから、だから見ることもやめたのです。好きなことに蓋をして、なぜかそれで幸せになろうとしていました。

 ネコリスは言いました。
 それは違うよ。好きなことに近づかない限り幸せになることはけしてない。

 人は言いました。
 でも僕の手は届きそうもない。手が届かないのなら、最初から手を伸ばさないほうがいい。好きになったのが、間違いだったんだ。

 ネコリスは人の言葉に悲しくなると、自分達だけで空に浮かぶ柱を追いかけていきました。
 ネコリスが今も風を運ぶのは、そのせいだそうです。ネコリスは努力に努力を重ね、ついには風に乗る術を覚えたのだそうです。

 人には、友達がいなくなりました。

 私はこう思います。
 もしも、人がもう一度空を見上げたら、手が届かないとしても手を伸ばしたら、そうしたら。
 少なくとも友達だけでも残ったのではないのかと。

 あるいは、人はネコリスのように風に乗り、好きなところに飛んで行けたのではないかと。




 その昔、人もネコリスも空を見上げていました。

 それは、空に浮かぶ柱があったからです。人もネコリスも、あの綺麗な柱のおかげで下を見ずに、生きていくことが出来ました。
 空に浮かぶ柱は、いくつもの世界が、姉妹である世界を呼ぶ声が、目に見える形になったものです。
 世界と世界は、ずっと昔からそうやって呼び合い、手を伸ばし、結ばれ、あるいは一つになったり分かれたりしていました。

 世界の数を、七つといいます。私たちのいる世界は五番目の世界。
 全ての世界は天に駆け上がる螺旋の姿をしていて、七つの螺旋があつまって、そうして一つの歌を歌っていました。
 
 でも人はとても愚かがすぎて、空を見上げることをやめました。
 空に手が届かないから、だから見ることもやめたのです。好きなことに蓋をして、なぜかそれで幸せになろうとしていました。

 それではいけないと、グレートワイズマンが言いました。
 
グレートワイズマンは、夜明けを呼ぶ船から二人の戦士を送り出し、この地に根付かせ、花を咲かせました。

 いつか、人がまた上を見ようとしたその時に、
 天を覆う、ほのぐらいなにもかもを、打ち砕くことが出来るようにと。




 誰も空を見上げない時代には、空に穴が開く時がある。
 古い伝説は言う。なぜならそう、空だって自分を見て欲しいと思う時があるからだ。
 自分を見てもらうために、とりあえず世直しからはじめるのだと。




「君の星空の話は、面白い」
「別に……」
「ああ、いや。それで、また話を聞かせてくれたらなって。ほら、今日も星がよく見える」

「天には時の光を編んだ大河があって、物事を二つに割っているの」

「え?」
「話、聞きたいんじゃなかったの?」
「えー、あ、あ、ああ。天の川か。ごめん」

「大河は一つ。分け隔たれたものが二つ。方位は四つ。世界は八つ。銃は十六。絶技は三十二。最初から最後まで、六十四。
 最初の言葉は
乾。最後の言葉は坤。だから、最初から最後までを乾坤と言い、
 最初から最後までの全部を賭けてサイコロを振るのが、
乾坤一擲。 つまり、大勝負」

「なんだい、それ」
「空のことを知りたかったんでしょ?」
「ん。ああ、確かに」
「あの空の川。時の光を編んだ大河のこちら側に、私達は住んでるの」
「こっちって、こっちか?」
「ううん。こっち」
「あー、こっちだな」
「違う。こっち」
「あ……あー、ごめん。……んー
難しい」

「そんなに難しくない。こちらは理。つまり、人間が理解できる範囲。そして、あっちが不思議。つまり、人間が理解できない範囲」

「へえー。空が2つに分かれているのか」
「うん……。理の側から見た光の大河を、理の側の大河と言うの」
「じゃあ、向こうからこっちを見たら、不思議の側の大河と言うの?」
「そう。不思議の側に渡って振り返れば、不思議の側の大河から、故郷を見ることになるわ」
「不思議の側か……」
「ここは、理の側の大河のほとり。だから、01ネコリス達が姿を見せているの」
「01ネコリス……?」
「01ネコリス。風の精霊についてくる、小さな動物。風に乗って旅をする、拍手をする友達。
 あなたが立派なら、あれもまた、拍手をするわ。人の幸せは、01ネコリスの拍手に包まれて死ぬことよ」




・テンダイスブログ NOTボーナス(3) Aの魔法陣Ver3
 http://blog.tendice.jp/200512/article_139.html

 天には時の光を編んだ大河があり、物事を二つに割っている。
 即ち不思議の側と理(ことわり)の側である。

 古来、大河は、それぞれの岸辺から、理の側の大河と不思議の側の大河という名前で呼ばれている。

 猫も人も、その大河の、ことわりの側の岸辺に住む生き物である。
 不思議の側には猫も人もいない。居ないことになっている。
 そこに住むのは、猫や人の形をしても猫や人ではなく、別の生き物ということになっている。これを妖精と言う。

 妖精の中でもっとも有名なものを英雄妖精と言う。通常は妖精を廃して英雄族と呼んだ。
 英雄妖精は妖精の中でも特別で、時折不思議の側の大河を渡り、理の側の大河のほとりを荒らす悪しき妖精と戦うことで知られている。

 古い古い伝説に従えば、英雄妖精はもとは理の側の生き物だったという話だ。
 だから不思議の側に行ったその後も、理の側を懐かしみ、それを守るのだと言う。


 不思議の側に渡った猫を、紅葉という。銀の毛と縞の痩せた猫だ。
 古来何十もの仔をなして、その仔がまた大きな大きな猫に育つものだから、既にして理の側の大河を渡ろうとしていた猫だった。

 この猫は仔猫の時、においに釣られたか魚屋に迷い込んだところを、魚屋の主人が見かけて往生し、
良く魚を飼いに来る猫屋敷の主人に、鯖一本とともに託したという。
 魚屋の主人は鯖一本の損をしたが、良心を守った。
 まったく魚屋であっても守るべきは鯖ではないという、これはそういう話である。

 猫屋敷の主人、その博学な事から知恵者と号される。
 知恵者、その猫に紅葉と名をつける。草木から名前を借り受けてつけたのは、その猫が赤にまつわるなにかを持っていたからではなく、
命が細くて秋までもたないと見立てたからである。

 もう忘れられた頃の昔から、危ない時を見越してその時に盛んな名前を借り受けて災いを避けるという術があったのである。

 既にして魔術の時代はとうの昔に終わっていたが、知恵者はそれでも、名前の魔術を行使したのであった。
 そののち、看病をすることにした。日々を過ごすことにしたのである。

 魔術が効いたとは誰も思わないが、紅葉は、秋を越えて成猫となった。
 以降10年、良く命を長くし、理の側の大河を渡った後、名前を返した。

 猫屋敷の主人、これまでの年月をもって草木の紅葉に深く謝し、新しい紅葉の苗木11本を神仏に奉納し、
もってまたいつかの助力をお願い申し上げた。


 以降。猫屋敷の主人、時折猫の形をした英雄妖精を見るという。

/*/

 元斉一郎は眼鏡を取るとゆったりとして豪奢な刺繍が入った県令の官服に着替え、
禊をし、長い髪をきちんと編んで、冠をかぶり、執務の後の読書を楽しんでいた。

 姿勢を正し、書見台に本を置いて本を読んでいたのである。
 書見台とは本を立てて読むための道具である。時折、膝の上においた手を上げてはページをめくった。

 見入る。そしてまた、ページをめくる。

 いまどき流行らない、4畳半の子供部屋のことである。寝台は今、立ててあった。

 その傍にはべるのは斉一郎の股肱の臣、名前を坂東陸という。
 歳は十、少々尖り気味の耳と金髪が見事な、大日本帝国臣民森林妖精族美少女だが今は便宜上の都合でGパンにトレーナーを着、
 その上からにゃんにゃんエプロンをつけていた。 髪は耳を隠すように左右にわけてリボンで結わえてある。

 さらに目を移せば、足をきちんと揃えた5、6の猫がいた。
 彼岸も押し迫ったので、挨拶をしにきた猫たちであった。今期の勇者徴募官の役目を果たし、故郷へ帰るのである。
 元斉一郎は彼ら勇敢な勇者徴募官達の働きをねぎらい、小皿に海獣の乳を盛って、賜った。

 そのうちの一匹、銀の毛と縞の痩せた猫が懐かしそうに本を読んでいる。
 元斉一郎は本をめくる手を休めると、猫に口を開いた。
「猫よ、そこの本にある魔術師をご存知か」

 銀の毛と縞の痩せた猫は深々と頭を下げた。大きくうなずく元斉一郎。
「僕もいずれもこのような方を配下に迎えたいものだ」

 それは本心と言うよりも、優しい心遣いというものであった。日40円の俸禄の元斉一郎に人を雇う財などない。
 それでも猫は心遣いに頭を下げてこれを謝し、涙を落とした。