紅雲級コンテナ船(艦船) スケール5
○概要
紅雲級コンテナ船は、星風藩国で建造された、中物理の貿易用コンテナ輸送船である。
主に共和国の経済流通のチェーンを支えることを目的として、経済性と信頼性に重きを置いており、戦闘能力や装甲などは無いが、コンテナの種類によってさまざまな貨物を一度にたくさん運べるという強みがある。
○制作経緯
星風藩国にとって海運は国家事業である。
具体的には、共和国の海運まわりで空白が発生する可能性があり、このニッチを埋めることを狙っていた。そうした経緯もあって、共和国内でも高い技術力を保持している紅葉国から技術供与を受けて造船技術を学ぶことになったものの、いきなり高物理は無理だろうということで、中物理まで技術力を下げたうえで基礎から学び、貿易のための輸送船が作られることになったわけである。なので、かなり普通のコンテナ船である。
○名前の由来
紅雲という名前は、造船など船に関する技術供与で紅葉国にお世話になったことと、雲のようにゆっくり安全に進んでいくという意味を込めて名付けられた。幸運(こううん)を運ぶという意味合いもある。
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○コンテナ船について
紅雲級はコンテナ船、すなわち共和国共通コンテナが運べることを主眼に置いた船である。
具体的には、船艙内にコンテナのためのスペースがあり、そこにセルガイドという垂直のガイドレールに沿ってコンテナを設置することで、動いたりしないよう固定しているという仕組みである。もちろん共和国輸送用コンテナと規格を合わせている。
○コンテナの種類の例
共和国輸送用コンテナ:
共和国の共通規格に沿った普通のコンテナ。ドライコンテナとも。
経済性の高い防錆対策の塗料を施されている他、コンテナのサイズと自重、最大総重量、最大積載重量、容積、コンテナの所有者や登録や追跡用のナンバーなどの文字列、所属国や所属組織の名前やマークなどが書かれている。
リーファーコンテナ:
冷蔵庫のような温度調節の機能が備わった共和国輸送用コンテナ。
肉や魚、果物や野菜など温度変化に弱い貨物を運べる。具体的には冷蔵ユニットが付いており、冷蔵庫と同じ冷媒ガスによる熱交換で内部の冷却を行う。これはコンテナ側面の装置から操作が可能で、+30℃から−20度まで設定できるので、冷凍して運ぶことも可能。
また、空気を入れないと傷む貨物のために調整用の空気孔も備え付けられている。装置は電源ケーブルで外部から電気を供給する以外に、リーファーコンテナ自体に発電機が備え付けられているタイプもある。通常の共和国輸送用コンテナと比較すると、断熱材や冷却ユニットなどでスペースを使う分、運べる容量が少し小さくなっている。また、冷却ユニットや電源供給部分の維持やメンテナンスなども含めると、運搬コストが少し大きいというデメリットもある。
液体タンクコンテナ:
水や燃料などを運ぶタンクをコンテナのフレームで囲ったもの。丸みがある円筒状タンクを横倒しにしてフレームで四方を囲ったような外見。見た目あまりコンテナっぽくないが、無駄が少ない構造なのでコストなどは安価。タンク内部はステンレス製。上部や側面に液体の注入口と排出口が備え付けられており、ここからドラム缶やタンクローリーなどに液体の移し替えることが可能。
他にも安全弁や空気弁、メンテナンス用のマンホール、タンク上部に登るための梯子、加温設備を利用するための蒸気孔などもある。なお、液体の温度を維持したい時のために、リーファーコンテナで使われている断熱材や冷却ユニットが備え付けられたタイプもある。ミルクタンクコンテナなどがそれである。
その他のコンテナの例:
長尺物の貨物を運ぶために上部の開閉が可能ならオープントップコンテナ。
通常のコンテナのサイズではカバーできない貨物のために上部や側面の壁もないフラットラックコンテナ。
滅多に使われないが動物輸送用に工夫されたペンコンテナ。
……その他、規格さえ合えば需要などで新しいコンテナが出てきても対応できると思われる。
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○コンテナ船の設備や装備など
バルバスバウ:
船首に備え付けられた球状の突起。このバルバスバウによって船首より先に発生させた波が、船が作る造波抵抗を打ち消す形となって、船の速度や燃料の効率などを向上させることが出来る。
フィンスタビライザー:
船底両舷に備え付けられたヒレ(フィン)のような横揺れ減衰装置。船が航行する際に前方から来る相対水流に対して、フィンの角度(迎角)を調整することで揚力を発生させて、横揺れを減衰させる。
サイドスラスター:
船を横方向に移動させるための推進装置。具体的には船体下部の左右に貫通するトンネルを作り、そこにプロペラを取り付けたもの。船の細かな移動や位置の調整のために使われる。
アンチローリングタンク(減揺タンク):
液体の入ったU字型のタンク。船の揺れを察知して自動的に弁を開閉して、タンク内の液体を流動制御することで、揺れに対して水の重さで反対のモーメントを発生させて、揺れを減衰させる効果がある。
スロットアレイアンテナ(航海用):
横長の棒が回転しているような見た目の航海用のレーダーアンテナ。切れ込み(スロット)からマイクロ波を発射して何かにぶつかって戻って来るまでの時間から対象までの距離を測る。船の上部などに設置してアンテナ自体を回転させることで360度をスキャン出来る。
ソナー:
音波を発してその反射を捉えることで、水中の深さや距離や物体などの位置を探知する技術。艦船の進路の水面下にある目では見えない障害物(例えば大部分が水面下に隠れている巨大な氷山など)や移動体などを事前に察知することが出来る。音波を自ら発して反射を捉えるものをアクティブソナー、音や反射を捉えるのみのものをパッシブソナーと呼ぶ。
2ストローク低速ディーゼルエンジン(大型船舶用):
重油で動く船舶用のディーゼルエンジン。経済性を求める関係上、吸気と排気を同時に行う2ストロークで低回転かつ高出力を求めた設計がなされている。
ファンネル(煙突):
船尾にある大きな煙突。所属国や所属組織のマークなどが入ることが多く、これをファンネルマークと呼ぶ。
ゲートラダー:
スクリュープロペラが生んだ推進力を進みたい方向に調整するための舵板(ラダー)で、スクリュープロペラを左右で囲む2つで1つの門のような構造になっているもの。左右の舵板がそれぞれ独立して稼働するため、推進力を幅広く活用できる。
従来の舵板はスクリュープロペラの後方に設置されるが、その影響でどうしても抵抗が発生してしまう。
そこで舵板を左右2つに割った門のような形にしてそれぞれ動かすことで、舵板の位置をプロペラの隣にして抵抗を消したり、左右の門の位置をそれぞれ調整することで推進力の幅広い利用が可能になった。これにより操縦性能の向上や燃費低減の効果が発生するわけ。また、サイドスラスターを併用すればさらに操作性能や旋回性能も向上が見込まれる。
航海灯:
船同士の衝突防止などを目的として、日没から日の出までの夜間航行中に点灯が義務付けられている灯火のことである。船の中心線にある白色のマスト灯や、左舷と右舷に赤色と緑色に光る舷灯などで構成されている。これによって夜でも、その船がどちらを向いているか分かるというわけだ。
船橋や居住区や食堂など:
中物理ながら紅葉国のノウハウや技術が用いられており、本場に比べればまだまだだが、なるべく船のスペースを無駄にせず、揺れを抑えて居住性を向上させている。
4機の大きなデッキクレーンがあるバージョン:
紅雲級コンテナ船には、コンテナの積み卸しのための4機の大きなデッキクレーンが、縦に並んで設置されているバージョンがある。
こちらは共和国で港湾のクレーン設備が充実できない藩国を想定したものである。ただしデッキクレーン設置分による船体バランスや復原性による安全性を模索した結果、コンテナの積載量などに影響が出てしまっている。一応このデッキクレーンは設計上、紅雲級コンテナ船から取り外せる仕様となっているので、将来的に共和国の港湾設備が充実すれば、クレーンのない普通のコンテナ船のバージョンに切り替えられるだろう。
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○非常時の対策
消火システムについて:
船内には、あちこちに火災警報器と、よくある手持ち式の消火器や、車輪の付いた大容量の移動式消火器、消化ポンプや消化ホース、スプリンクラーなどが各所に設置されている。また、船艙や機関室などには炭酸ガスによる固定式の消火装置が重点的に設置してある。海上で火災が発生した場合、自力で対処できなければほぼ燃えるしかないため、消火設備には気を遣っている。
浸水への対策:
船の浸水対策として、各所に浸水警報装置や、水密扉や防水板、排水装置などが設置されている。
排水装置は手動式から船橋などから遠隔操作が可能なものもある。他にも船体の応急処置用の材料を積んでいる。
船尾から自由落下する救命艇:
船尾から投下するタイプの救命艇。船の側面に救命艇を設置すると、船の傾く方向によっては使用できなくなる。また、船に速度がある場合、救命艇を下ろすと水が入って転覆する危険性がある。そこで船尾から投下する形の救命艇が作られた。なお、内部には非常用の食糧や飲料水、医療キットや発煙信号などがあり、6ノットほどで移動することも出来る。
ただし、設置が船尾に限定される関係上、多くの乗員がいる客船などでは定員分の数を揃えられないというデメリットがある。
船尾から投下する関係で素早く脱出できるが、高所から落下、着水して少し潜水する過程ではそれなりの衝撃があるため、地味に怖い。乗員は船の落下方向に対して背中を向けてシートベルトをして座ることで、人体への衝撃を和らげる。